平成19年 5月12日(土):初稿 |
○「事務員がヤクザに監禁された事件4」の続きです。 昭和○年12月20日、イカ釣り漁船第二B丸の冷凍イカの競売代金3000万円が、午後1時に小切手で交付されることになりましたが、午前10時D執行官に呼び出されて、3000万円受領したら内200万円を買受人E水産に返還することを指示されました。S事務員は、一応承諾しましたが、依頼者がホントに返還してくれるか不安を感じました。 ○その後、依頼者のA社専務と債務者B社社長、ヤクザの親分らと一緒に一旦ホテルに戻り、午後1時の競売代金交付を待っていました。ところが午後12時30分にD執行官からホテルのS事務員に驚くべき電話が入りました。電話の内容は、B社債権者の1人でイカ釣り漁船第二B丸の所有権を代物弁済として譲渡されていたF社がイカ釣り漁船第二B丸の冷凍イカは自己所有であるとして、第3者異議の訴えを提起して、合わせて執行停止の仮処分決定を取り、執行官に執行停止を申し入れてきたとのことでした。 ○D執行官は、執行停止仮処分決定が出た以上、競売代金は交付できない、あとは、F社とA社の代理人弁護士同士で話しをつけて、和解をしてF社に執行停止仮処分申立を取り下げて貰うようにとS事務員に指示しましたが、このような事案に相当慣れているような感じでした。 ○競売代金交付直前に競売手続がF社によって止められ、S事務員は驚愕して仙台の事務所に電話してボス弁に報告しましたが、この電話の遣り取りを聞いていたヤクザの親分が怒り出しました。お前の事務所がモタモタしているからこんな事になった、この落とし前をどうつけてくれる、お前の身柄は預かったと言って、子分を2人つけ、S事務員は、ホテルの一室にホントに監禁状態となってしまいました。 ○F社から執行停止仮処分決定と取られ、ボス弁は速やかにF社代理人G弁護士に電話連絡を入れて、話し合いの余地がないかどうかを打診したところ、G弁護士は望むところであるとの回答でした。と言うのはB社は他にも多額の債務を抱えて倒産寸前の状態であり、破産手続を取られたら、お互いにこれまでの債権回収の努力が水泡に帰するからです。 ○ヤクザに監禁されたS事務員は、ホテルの部屋からボス弁に電話し、厳しい状況になっていることを報告すると、ボス弁は、いよいよの時は警察に訴えるが、兎に角、何とかホテルを出るように指示をしました。S事務員は、ホテル1階レストランでヤクザの子分2名と一緒に夕食を取った後、レストラン脇のトイレの大きな窓から逃げ出すことに成功し、20日の夜は苫室市郊外の温泉旅館に偽名を使って宿泊しました。 以上:1,075文字
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