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妻の不貞相手同居未成年者監護を不適切として夫を監護者とした高裁決定紹介

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令和 7年10月21日(火):初稿
○ 別居中の夫婦間において、主たる監護者である妻が未成年者らを連れて夫と別居したが、妻に不貞行為があり、妻の監護下における未成年者らと不貞相手との関係のさせ方等に不適切な点があることが考慮され、夫が監護者に指定した令和7年3月4日東京高裁決定(判タ1535号174頁)関連部分を紹介します。

○妻Aは令和5年10月頃からマッチングアプリで知り合った不貞相手Cと交際を開始し、令和6年1月不貞行為が夫Bに発覚し離婚協議をするようになり、同年2月に妻Aが長男・長女を連れて実家に戻って別居し、同年6月末に長男・長女を連れて実家を出て、不貞相手Cと同居して4人で生活し現在に至っています。

○不貞相手Cも妻とは別居し離婚協議中で、妻と離婚した後にA女と結婚し、A女は、Cと結婚したらA・B間の未成年者とCとの養子縁組ができればと考えているが、具体的な話しはしていない状況です。B女の未成年者の監護体制は母方祖父母の監護補助を受ける予定で問題はないところ、父Bも監護者に指定されたら自営業者である父方祖父や,父方曾祖母の監護補助を受ける予定で監護体制に問題はないと認定されています。

○決定は、B女が不貞相手Cと同居し、未成年者らを不貞相手Cと日常的に接する状態に置き,未成年者らと父Bとの面会交流が実施されていない状態で,未成年者らが不貞相手Cを「パパ」と呼ぶことを容認している監護状況は,未成年者らと父Bとの正常な父子関係の維持,形成を妨げる不適切なものであるから,これを継続させることは,未成年者らの福祉に反するものというほかないとしました。未成年者はA・B間の子であり、極めて妥当な決定と思います。

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主   文
1 本件抗告を棄却する。
2 抗告費用は抗告人の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨

1 原審判を取り消す。
2 相手方の本件申立てをいずれも却下する。

第2 抗告の理由
 抗告の理由は,別紙「抗告理由書」に記載のとおりである。

第3 当裁判所の判断(略語は,特に断りのない限り,原審判の例による。)
1 当裁判所も,未成年者らの監護者をいずれも相手方と定めるとともに,抗告人に対して未成年者らを相手方に引き渡すよう命じるのが相当であると判断するものであり,その理由は,以下のとおりである。

2 認定事実
 本件記録及び手続の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

     (中略)

(5)別居に至る経緯,別居後に生じた事情等
ア 抗告人は,令和5年10月頃から,マッチングアプリで知り合った不貞相手(本件相手。なお,本件相手も既婚者である。)との交際を開始し,当初は,週に1回程度,夜間に外出して本件相手と会っていたが(土日には朝に帰宅したこともある。),同月後半には,本件相手が同居時自宅を訪れる,あるいは,抗告人が未成年者らを連れて本件相手と外出するようになり,これに伴い,未成年者らが本件相手と接するようになった。また,抗告人が,夜間,未成年者らを連れて,本件相手を同人の自宅まで送ったこともあった。

 なお,抗告人は,本件相手との交際のため,相手方が帰宅する直前に未成年者らを自宅に放置して外出することもあった(ただし,相手方も同様に抗告人の不在中に未成年者らを自宅に放置して外出したこともあった。)。(本件報告書7ないし9頁)。

イ 上記アの抗告人の本件相手との不貞行為が相手方に発覚し,当事者双方は,令和6年1月13日頃以降,離婚に関する協議をするようになった。(本件報告書7ないし9頁)

ウ 抗告人は,令和6年2月14日,未成年者らを連れて相手方と別居し,抗告人の実家にて生活するようになった。
 そして,抗告人は,同年1月に上記(4)イの保育園を辞めていたところ,同年2月,○○(現勤務園)に就職した。(乙1,本件報告書10頁)

エ 相手方は,令和6年3月4日,横浜家庭裁判所横須賀支部に対し,未成年者らの監護者指定及び抗告人から相手方への未成年者らの引渡しを求める本件審判の申立てをするとともに,同審判前の保全処分の申立てをした。

オ 抗告人は,令和6年4月,長女を現勤務園に転園させ,長男を○○保育園に入園させた。(本件報告書10,11頁)

カ 抗告人は,令和6年6月末頃,未成年者らを連れて抗告人の実家を出て,横須賀市内の現住居に転居し,本件相手との同居生活を開始した。(本件報告書11頁)

キ 相手方は,令和6年10月15日,父方祖父宅である△△市内の現住所に転居した。(甲40,44)

ク 抗告人と相手方との別居後,未成年者らと相手方との面会交流は実施されていない。(本件報告書11頁)

(6)抗告人の監護状況,未成年者らの生活状況等
ア 抗告人は,現在,未成年者ら及び本件相手と同居して生活している。
 抗告人に健康上の問題はない。住居は1LDKであるところ,きちんと整頓されており,衛生上の問題は特にみられない。また,抗告人は,令和6年4月から現勤務園の正職員となり,勤務時間は午前8時から午後5時までであって,手取りの月収は約19万円である。(本件報告書11,16,21頁)

イ 未成年者らについても,健康状態や,生活上の問題はみられず,抗告人との関係にも特に問題はみられない。また,令和6年4月以降,長女は現勤務園に,長男も保育園に通っているが,通園時の状況についても特段の問題は指摘されていない。
 ただし,抗告人は,本件調査官に対し,未成年者らが本件相手をパパと呼ぶことがあるが,未成年者らが自ら言うことなので,否定はしていないと説明している。(本件報告書20ないし24,26ないし28頁)

ウ 抗告人は,未成年者らを現状のまま監護する予定であり,主として抗告人が実際の監護をしつつ,必要に応じて会社員である母方祖父や,母方祖母の監護補助を受ける予定である。なお,母方祖父母は,令和6年3月に横須賀市内で転居しており,現在の住居は,抗告人の現住所から車で20分ないし30分程度の距離にある。
 抗告人は,抗告人が監護者に指定された場合には,相手方と未成年者らとの宿泊を含めた面会交流につき柔軟に応じる意向を示している。

 また,本件相手はその配偶者と別居し,現在離婚協議中であるところ,抗告人は,抗告人及び本件相手がいずれも離婚した後に,本件相手と婚姻する意向である。その場合には,未成年者らと本件相手が養子縁組できればと考えているが,その点に関して本件相手と具体的な話合いはしていない。(乙1,本件報告書16ないし19頁)。

(7)相手方の監護態勢,監護方針等
ア 相手方は,現在,父方祖父と同居している。相手方の住居は,戸建ての2世帯住宅であって,1階が父方曾祖母の,2階が相手方及び父方祖父の居住スペースとなっているが,きちんと整頓されており,衛生上の問題などもみられない。相手方の心身の状態に問題はない。

 相手方の勤務先及び勤務状況は上記(2)イのとおりであるが,相手方は,未成年者らの監護者に指定された場合には,日勤のみに変更する予定であり,その点に関する勤務先の了解を得ている。また,相手方は,勤務先に車で通勤しており,現在の通勤時間は40分ないし50分程度である。相手方の手取り月収は約30万円である。(甲1,40,43,44,乙8,本件報告書12,13頁)

イ 本件調査官による調査の一環として,令和6年8月26日,相手方(及び抗告人)と未成年者らの交流場面の観察が実施された。相手方と未成年者らとの面会交流は別居以降一度も実施されていなかったが,長女は,目を見開いてしばらく相手方をじっと見つめた後,相手方を「パパ」と呼んですぐに走り寄って抱き着き,長男も不安がる様子はなく,約35分間の交流の間,特段の問題点はみられず,未成年者ら特に長女は相手方に馴染んでいる状況であった。(本件報告書2,29ないし34頁)。

ウ 相手方は,自身が未成年者らの監護養育を行い,必要があれば自営業者である父方祖父や,父方曾祖母の監護補助を受ける予定としている。
 また,相手方は,長男については,父方祖父宅から徒歩10分程度の圏内にある複数の保育園のいずれか,そうでないとしても車で送迎可能な保育園に通園させる予定であり,令和7年4月以降,小学1年生となる長女についても,徒歩10分程度の圏内にある小学校に通学させる予定としている。
 相手方は,相手方が監護者に指定された場合には,抗告人と未成年者らとの面会交流につき,未成年者らの生活に支障が生じない範囲で,柔軟に応じる意向を示している。(甲40,41,本件報告書12~15頁)。

3 検討
(1)民法766条1項は「父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者,(中略)その他の子の監護について必要な事項は,その協議で定める。この場合においては,子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と規定するところ,父母が離婚に至らないとしても,別居により共同での親権行使が円滑に行えなくなった場合には,離婚の場合と同様に,子の監護について必要な事項を定める必要があるから,そのような場合にも上記規定が類推適用され,「子の利益を最も優先して」その監護者を指定すべきものと解される。

 そして,監護者の指定の判断に当たっては,
〔1〕従前の監護状況(子が従前どのように監護養育されてきたか。),
〔2〕監護態勢(子が今後どのような監護養育を受けられるか。),
〔3〕子との関係性(子が親とどのような関係を築いているか。),
〔4〕他方の親と子との関係に対する姿勢(子が親から他方の親との関係を維持するために必要な配慮を受けられるか)
等の事情を総合して検討すべきである(司法研究報告書第72輯第1号「子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究」参照)。

(2)これを本件についてみるに,まず,〔1〕の従前の監護状況に関しては,相手方と抗告人との同居中,相手方も未成年者らの監護を分担していた部分はあるものの,主として未成年者らを監護していたのは抗告人であるといえる(上記2(3),(4))。しかしながら,抗告人は,本件相手と不貞関係になった後は,未成年者らが居住する同居時自宅に本件相手が立ち入ることを容認し,あるいは,未成年者らを連れて本件相手と外出するなどし,未成年者らをして抗告人が配偶者である相手方以外の男性と親密に交際している状況に直面させたほか,本件相手をその自宅に送るため,夜間であるにもかかわらず,未成年者らを同行させるなどしていたのであって(上記2(5)ア),そのような抗告人による監護は未成年者らの福祉に反する不適切なものというべきである。

 〔2〕の監護態勢については,当事者双方とも健康状態に問題はなく,収入や住居に関しても大きな優劣があるとは認められない(上記2(6)ア,(7)ア)。監護補助者に関しては,母方祖父母において,当事者双方の同居時,特に抗告人の勤務時に未成年者らを預かり(上記2(3)ウ,(4)イ),また,別居後の約4か月半も未成年者らと同居していたことから(上記2(5)ウ,カ),父方祖父及び父方曾祖母よりも監護補助の実績は多い(ただし,母方祖父母は,令和6年3月の転居により,抗告人の現住所に車で20分ないし30分程度の移動を要するようになっているのに対し(上記2(6)ウ),父方祖父及び父方曾祖母は相手方と同じ建物で生活しており(上記2(7)ア),今後の監護補助の観点では,父方祖父及び父方曾祖母の方が勝っている点もある。)。

他方で,抗告人の現在の監護状況に関してみると,抗告人は,相手方との別居の約4か月半後に本件相手と同居し(上記2(5)ウ,カ),未成年者らを本件相手と日常的に接する状態に置き,未成年者らと相手方との面会交流が実施されていない状態で,未成年者らが本件相手を「パパ」と呼ぶことを容認している(上記2(6)イ)というのであって,そのような監護状況は,未成年者らと相手方との正常な父子関係の維持,形成を妨げる不適切なものであるから,これを継続させることは,未成年者らの福祉に反するものというほかない。

なお,未成年者らは,現在,抗告人に監護されているものの,抗告人は,本件相手との不貞関係の発覚を契機として相手方と別居したものであり(上記2(5)イ,ウ),相手方は抗告人が未成年者らを連れて別居することを承諾していなかったのであるし(本件報告書10頁。なお,相手方は,未成年者らを連れて相手方の実家に転居し,抗告人と別居することを考えていたが,抗告人の反対にあって悩んでいた。),また,相手方が監護者に指定された場合には未成年者らに転居,転園等の負担が生じ得るが,他方で,抗告人は,別居後,既に未成年者らにつき転居の,長女につき幼稚園の転園の負担を生じさせているのであるから,その点を捨象し,相手方を監護者に指定した場合の転居等に伴う未成年者らの負担のみを考慮して,抗告人による現在の監護状況の継続を重視するのは相当ではない。

 〔3〕の子との関係性については,当事者双方ともに特に問題はなく(上記2(6)イ,(7)イ),〔4〕の他方の親との関係に対する姿勢についても,当事者双方とも面会交流には柔軟に応じる意向を示しているなど(上記2(6)ウ,(7)ウ),特段の優劣は認められない。

 以上の点を総合すると,当事者双方の同居時における未成年者らの主たる監護者は抗告人であったものの,抗告人が本件相手と不貞関係になってからの監護には不適切な点があり,現在の監護状況も,子の福祉に反する不適切なものであって,これを継続させることは相当ではないのに対し,相手方の監護態勢に特段の問題が認められないことからすると,未成年者らの監護者はいずれも相手方と指定するのが相当である。

(3)抗告人は,相手方の監護態勢に関して,相手方の勤務状態に鑑みると未成年者らの監護が十分にできないと考えられる旨主張するが,相手方は,監護者に指定された場合には勤務形態を日勤のみに変更することにつき勤務先の了解を得ており(上記2(7)ア),その場合には当事者双方の勤務時間に大きな差はないことになる。

 抗告人は,相手方が長男を通園させる予定としている保育園(上記2(7)ウ)については,入園待ちが発生しているから入園の可否は不透明であり,入園できない場合に相手方が育児休業等で対応できるかどうかも明らかではないなどとも主張する。しかしながら,相手方が現に未成年者らを監護していない以上,現実に保育園に入所できるかどうかなど,未成年者らの引渡しを受けた後の事情が具体的にならないことは当然であり,そのことをもって相手方の監護態勢を低く評価すべきものとはいえず,抗告人の上記主張は採用できない。

 抗告人は,抗告人が未成年者らの主たる監護者であり,相手方による監護は補助的なものであったこと,監護補助者の監護の実績にも差があること,現状,抗告人が未成年者らを監護しているところ,その監護の継続性を重視すべきことなどから,抗告人を監護者として指定すべきであるなどと主張するが,抗告人の指摘する事情を考慮したとしても相手方を監護者として指定すべきことは,上記(2)で説示したとおりであり,抗告人の上記主張も採用できない。

 抗告人のその余の主張についても,上記1ないし3(2)の認定判断を左右するに足りるものとは認められない。

(4)以上のとおりで,未成年者らの監護者をいずれも相手方と指定するのが相当であり,これに伴い,抗告人に対し未成年者らを相手方に引き渡すよう命じることとする。

4 よって,本件抗告は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 佐々木宗啓 裁判官 古谷健二郎 裁判官 森岡礼子)

別紙 抗告理由書〈省略)
以上:6,486文字

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