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不貞行為第三者に故意過失無しとして慰謝料請求を棄却した地裁判決紹介

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令和 7年10月20日(月):初稿
○原告が、原告の元夫被告Bが婚姻中の令和4年2月に、被告Bと被告Cが不貞行為をしたとして、精神的苦痛を被ったころによる慰謝料300万円の請求を被告らに対して求めて提訴しました。被告B・Cは、令和4年2月の不貞行為を否認して争いました。

○事実関係は以下の通りです。
・原告と被告Bは、令和3年4月頃知り合い交際し、令和4年1月11日婚姻
・被告Bと被告Cは、令和4年2月26・27日一緒に旅行し不貞行為
・被告Bは令和4年3月原告に離婚申出、同年5月2日離婚
・原告は令和4年○月出産
・被告Bと被告Cは令和4年6月結婚

○この事案について、被告らが不貞行為をした事実は認め、原告と被告Bとの婚姻関係は法的に保護されるものとして被告Bには慰謝料120万円の支払を認めるも、被告Cは、原告と被告Bの婚姻関係を知らず、不貞行為に故意又は過失のいずれも認めることができないとして請求を棄却した令和6年6月19日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

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主   文
1 被告Bは、原告に対し、120万円及びこれに対する令和5年5月18日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告の被告Bに対するその余の請求及び被告Cに対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、原告に生じた費用の5分の1と被告Bに生じた費用の5分の2を被告Bの負担とし、原告及び被告Bに生じたその余の費用並びに被告Cに生じた費用を原告の負担とする。
4 この判決は、1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告らは、原告に対し、連帯して、300万円及びこれに対する令和5年5月18日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は、原告が、原告の夫であった被告Bと被告Cが不貞行為をしたことにより、精神的苦痛を被ったとして、被告らに対し、共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料300万円及びこれに対する不法行為以後の日である訴状送達日の翌日(被告Cについて令和5年5月3日、被告Bについて同月18日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

2 前提事実(証拠等の掲記がない事実は争いがない。)
(1)原告と被告Bは、令和4年1月11日に婚姻したが、同年5月2日に離婚した。
(2)被告らは、令和4年2月26日、二人で、東京からaまで新幹線等を利用して移動し、a駅前において二人で腕を組み、身体を寄せ合って写真撮影を行った(以下、このとき撮影した被告ら両名の写真を「本件写真」という。甲2)。そして、被告らは、同月27日、同一の新幹線に乗車して、東京へ戻った。(以下、被告らによる両日の東京・a間の移動を「本件a旅行」という。)
(3)被告らは、令和4年6月10日に婚姻した。
(4)原告は、令和4年○月○○日、長女を出生した(甲1)。

3 争点及び当事者の主張

     (中略)

第3 当裁判所の判断
 当裁判所は,被告らが不貞行為をし、原告と被告Bとの婚姻関係は法的に保護されるものであり、被告らの不貞行為による損害額は120万円と認めるべきであるが、被告Cには故意又は過失のいずれも認めることができないことから、原告の被告Bに対する請求は同金額の限度で理由があって一部認容すべきであり、原告の被告Cに対する請求は理由がないから全部棄却すべきものと判断する。その理由は以下のとおりである。

1 認定事実
 前記前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 
(1)原告と被告Bとの関係
ア 原告と被告Bは、令和3年4月頃、共通の知人が開催する異業種交流会で知合い、LINEの交換をしたのであるが、1週間後には、肉体関係を持つに至り、程なくして交際するようになった。その後、原告と被告Bは、二人で食事に行ったり、お互いの家を行き来したり、泊りがけの旅行に行ったりした。また、原告と被告Bはその後も複数回肉体関係を持っているが、いずれも避妊具をつけていなかった。
 なお、被告Bは、原告と上記のような関係となった以降も、原告以外の複数の女性とも肉体関係を持ち、旅行に行くなどしていた。
(以上につき、甲3、原告本人、被告B本人)

イ 被告Bは、令和3年11月下旬又は同年12月頃、原告に対し、結婚しようなどと伝えた。その後、原告と被告Bは、αにある手作りの指輪を作るお店で結婚指輪を作り、βで新居を探していたときには一緒に内覧にも行った。被告Bは実家住まいであったため、原告が被告Bの家に遊びに行ったときに被告Bの両親とともに食事をすることもあった。また、被告Bは、令和3年の年末頃、原告の実家に挨拶に行った。(甲3、原告本人、被告B本人)

ウ 原告は、令和3年12月24日頃、自身が妊娠していることを知り、被告Bに対して、妊娠の事実を伝えた(甲3、原告本人)。

エ 原告と被告Bは、令和4年1月11日に婚姻した。その際、原告の妊娠悪阻がひどかったことから、被告Bが一人で、区役所に婚姻届を提出した。また、原告は、妊娠悪阻のため、同月末ないし同年2月上旬頃から同年3月1日頃までの間、原告の実家に帰省していた。(前記前提事実(1)、甲3、原告本人)

オ 被告Bは、前記アのとおり、原告との交際以降も他の複数の女性と肉体関係を持つなどしていたが、原告との婚姻後は、自身の仕事が多忙であったこともあり、他の女性と肉体関係を持たなくなった(被告B本人)。

カ 原告は、令和4年3月3日頃、被告Bとベッドで寝ていたのであるが、その際、被告Bの携帯電話を確認したところ、本件写真を発見した。そこで、原告は、被告Bに対して、同写真に関する追及をした。(甲3、原告本人、被告B本人)

キ 被告Bは、令和4年3月中旬頃、原告に対して、離婚したいと告げた。その後、原告と被告Bは、同年5月2日に離婚した。(前記前提事実(1)、甲3、原告本人)

ク 原告は、令和4年○月○○日、被告Bとの間の長女を出生した(前記前提事実(4)、原告本人。なお、被告Bは、同長女について真に自分の子か疑問である旨の供述をするが、被告B以外の子供であることがうかがわれる証拠は何ら存しない上、被告Bが現時点においても特段の法的手続をとっていないことをも踏まえると、上記供述は採用できない。)。

(2)被告らの関係
ア 被告らは、令和3年12月28日頃、共通の知人を含めた少人数の忘年会で知り合い、参加したメンバー同士でLINEの交換をした。被告らは、同忘年会後も、本件a旅行までの間に、何度か、複数名で集まっていた。なお、被告らが初めて出会った際には、被告Cは既に以前交際していた男性と別れていた。(被告B本人、被告C本人)

イ 被告らは、令和4年2月26日、b駅で待ち合わせて、二人でaまで移動し、a駅前において二人で腕を組み、身体を寄せ合って本件写真を撮影した。また、被告らは、aにおいて、少なくとも、一緒にcを訪れ、昼食を共にした。その後、被告らは、翌日である同月27日、同じ新幹線に乗車して、東京へ戻った。(本件a旅行。前記前提事実(2)、被告B本人、被告C本人)

ウ 被告Bは、令和4年5月頃、被告Cと電話をしていた際、被告Cに対して、結婚してほしいと伝えた。これに対し、被告Cは、自分が離婚したいと言ったときにすぐに認めてくれるのであればいい旨の返答をした。(被告B本人、被告C本人)

エ 被告らは、令和4年6月10日、婚姻した(前記前提事実(3))。

2 争点1(被告らが不貞行為をしたか)について
(1)検討
 前記認定事実によれば、被告らは、二人で待ち合わせて東京からaまで共に出掛け、目当ての神社を訪れるとともに食事も共にしている上、二人で腕を組み身体を寄せ合っての写真撮影まで行っている(前記認定事実(2)イ)のであって、これらの事実からすると、被告らは、単なる男女の友人関係を超えた親密な男女の関係にあったとみるのが自然かつ合理的である。

 また、被告Bは、原告との婚姻後、他の女性と肉体関係を持つのを止めた中、原告が実家に帰省している間に被告Cとの本件a旅行に出掛け、原告から本件写真に関する追及を受けると、原告に対して、離婚したい旨を告げ、原告との離婚成立から1か月経たないうちに被告Cに対してプロポーズをしている(前記前提事実(2)、前記認定事実(1)エないしキ、(2)ウ)ところ、これらの事実からは、被告Bが、原告との婚姻中から被告Cに対して特に好意を寄せており、被告Cと婚姻したいとの思いが原告との離婚を決意する一因となっていたことが優に推認されるところである。

 そして、被告Cは、被告Bと二人でaを訪れ、その後婚姻にまで至っていること(前記認定事実(2)イ、エ)に照らし、被告Bに対して少なからぬ好意は持っていたと認めることができる上、当時、他に交際している男性はいない状態であった(前記認定事実(2)ア)。これらに加えて、被告Cは、当時、被告Bが婚姻していることを知らなかったことがうかがわれること(後記4参照)をも踏まえると、被告Cにとって、被告Bと不貞関係を持つことへの支障は特段存しなかったということができる。
 以上によれば、被告らが、本件a旅行の際を含め、不貞行為をした事実を認めることができる。

(2)被告らの主張等について
 被告らは、原告と被告Bの婚姻中には交際しておらず、不貞行為はなかった、本件a旅行についても宿泊先は別であったなどと主張し、被告らの各本人尋問においてもそれぞれ同主張に沿う供述をする。
 しかし、仮に本件a旅行の際に宿泊先が別であったとしても、上記(1)で認定、説示したとおり被告らが親密な男女の関係にあり、不貞行為をした事実自体は認めることができるのであって、宿泊先の点は上記(1)の認定を左右しない。また、その余の点については、上記(1)で認定、説示したところに照らして採用できない。

3 争点2(原告と被告Bとの婚姻関係が法的に保護されるか)について
(1)検討
 そもそも、原告と被告Bは、令和4年1月11日に、区役所に婚姻届を提出して正式に婚姻をしている(前記認定事実(1)エ)のであり、これに対して、婚姻の意図とは別な理由から婚姻届を提出したことをうかがわせる事情は証拠上見当たらない。

 また、被告Bは原告に対してプロポーズをしているし、原告と被告Bの二人で結婚指輪を作りに行き、新居の内覧もしている上、原告が被告Bの実家を訪れて両親と食事を共にし、被告Bが婚姻前の令和3年の年末頃に原告の実家に挨拶に行っている(以上につき、前記認定事実(1)イ)のであって、これらの事実によれば、原告と被告Bは、婚姻に向けて通常のカップルがとる行動を正にとっているということができる。

 以上のほか、原告と被告Bが、婚姻前、避妊具をつけずに複数回性交渉を行っており(前記認定事実(1)ア)、原告が妊娠することを許容していたと考えられること及び被告Bが原告との婚姻後、他の女性と肉体関係を持つことを控えていたこと(前記認定事実(1)オ)をも踏まえると、原告と被告Bとの婚姻関係について、一般的なそれと特段異なるところは見出し難く、したがって、当然に法的に保護されるものと認めることができる。

(2)被告らの主張等について
 被告らは、被告Bが原告に対し、一切の恋愛感情を抱いたこともなく、不特定多数いた、ただの身体だけの関係のうちの一人にすぎなかった、被告Bにおいて仕事やプライベートを自由にして良く、戸籍上だけ入籍する形で良いならば結婚するとの条件であったなどと主張し、被告らの各本人尋問においてもそれぞれ同主張に沿う供述をするが、前記(1)に認定、説示したところに照らし、同主張及び供述を採用することはできない。

4 争点3(被告Cに不貞行為についての故意又は過失があるか)について
(1)検討
 原告は、被告Cが、不貞行為の当時、被告Bから、自分には妻がいて子が生まれる予定であることを伝えられ、理解していた旨の主張をし、その陳述書(甲3)及び本人尋問において、同主張に沿う供述をする。
 しかし、上記供述を支える客観証拠は何ら存しないことから、上記主張及び供述をにわかには信用することができない上、仮に被告Bが原告に対して上記のとおり伝えていたのだとしても、現に被告Cが被告Bから上記事実を伝えられていたと認めるには足りない。

 かえって、被告Cは、その本人尋問において、原告の存在を、去年、すなわち令和5年5月2日に訴状が届いたときに知った、同訴状に驚いて被告Bとその母親に確認のためのLINEを送った、などと供述するところ、同供述は、具体的で迫真性に富み、本件訴訟の当初の主張段階から一貫している上、被告Cへの訴状送達日が同日である(当裁判所に顕著な事実)との客観的な事実とも整合していることに照らし、十分信用することができる。

 そして、以上のほか、被告Cが不貞行為について故意であったことを認めるに足りる証拠はなく、また、過失があったことをうかがわせる事情も存しない。
 よって、被告Cには、不貞行為についての故意も過失も認めることができない。


(2)被告Cに対する請求についての小括
 上記(1)によれば、原告の被告Cに対する本件請求は、争点4(原告の損害及び額)について判断するまでもなく、全部理由がない。

5 争点4(原告の損害及び額)について
 前記2(1)のとおり、被告Bは、原告との婚姻中から被告Cに対して特に好意を寄せており、被告Cと婚姻したいとの思いが原告との離婚を決意する一因となっていたことが認められるのであって、不貞行為による婚姻関係への影響は相当程度あったということができる。

 また、原告は、被告Bとの間の子を妊娠中に被告らによる不貞行為に及ばれた(前記認定事実(1)ク)のであって、この点でも精神的損害は大きなものといい得る。
 他方で、原告と被告Bとの婚姻期間は4か月程度(前記認定事実(1)エ、キ)と比較的短期間なものであった上、被告らによる不貞行為の回数及び頻度は必ずしも明らかにはなっていない。
 以上のほか、本件に現れた一切の事情を考慮すると、被告らの不貞行為による慰謝料額は120万円と認めるのが相当である。

第4 結論
 以上によれば、原告の被告らに対する請求は、被告Bに対する請求について主文1項掲記の範囲で理由があるからその限度で認容し、被告Bに対するその余の請求及び被告Cに対する請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第26部
裁判官 安部利幸
以上:6,028文字

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