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約10年間不貞行為と子出産について慰謝料200万円を認めた地裁判決紹介

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令和 6年12月 5日(木):初稿
○原告妻が、被告夫Bとその不貞行為相手方Cに対し、平成10年頃から平成19年まで不貞行為を継続し、その間、平成19年9月、CはBの子Dを出産した事実を、原告が令和3年7月に至って知るところとなり、これにより原告と夫被告Bとの夫婦関係に大きな悪影響を及ぼしたとして被告B・Cに対し500万円の慰謝料請求をしました。

○これに対し慰謝料200万円の支払を命じた令和5年8月23日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。慰謝料として200万円の多額を認めていますが、不貞期間が長期に及んだこと、その間子供をもうけてBは毎月7万円の養育料を支払続けていたことなどが考慮されました。

○原告がB・C間の不貞及び子の出産の事実を知ったのは令和3年7月でD出産時から14年程経過していますが、原告が本件不貞行為を認識したのが15年程の年月が経過した後であることから、要保護性は相当低いなどとの主張をするが、本件不貞行為の発覚後、ほどなく別居に至ったという経過に照らして、本件不貞行為自体が相当以前のことであることが要保護性を減殺するものとはいえず、同主張に係る事実は、慰謝料額算定における考慮事情とはならないとしています。

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主   文
1 被告Bは、原告に対し、200万円及びこれに対する令和4年2月17日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし、200万円及びこれに対する同年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で被告Cと連帯して)を支払え。
2 被告Cは、原告に対し、被告Bと連帯して、200万円及びこれに対する令和4年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、原告に生じた費用の10分の2と被告Bに生じた費用の5分の2を被告Bの負担とし、原告に生じた費用の10分の2と被告Cに生じた費用の5分の2を被告Cの負担として、原告、被告B及び被告Cに生じたその余の費用を原告の負担とする。
5 この判決は、1項及び2項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告らは、原告に対し、連帯して、500万円及びこれに対する訴状送達日(被告Bについて令和4年2月17日、被告Cについて同年3月2日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等
1 本件事案の概要

 本件は、原告が、被告らが平成10年頃から平成19年初旬まで不貞行為を継続し、原告に秘して被告らの間の子までもうけ、原告と被告Bとの間の夫婦関係に大きな悪影響を及ぼしたとして、被告らに対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料500万円及びこれに対する不法行為以後の日である訴状送達日(被告Bについて令和4年2月17日、被告Cについて同年3月2日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は争いがない。)
(1)原告と被告Bは、昭和63年7月20日に婚姻し、平成3年7月23日に長男をもうけた(甲1)。

(2)原告と被告Bは、被告Bの転勤に伴って、以下のとおり住所地を変更した(甲2、10)。
ア 平成7年から平成17年まで
 愛知県稲沢市
イ 平成17年から平成22年まで
 岡山県岡山市
 ただし、被告Bは、上記期間中、単身赴任をして東京にも生活拠点を持っていた。
ウ 平成22年から現在まで
 東京都武蔵野市

(3)被告Cは、平成3年9月に被告Bが勤務する会社(以下「本件会社」という。)に入社し、愛知県内の複数の勤務地を経て、平成15年に同社の名古屋店に配属となり、被告Bと同一建物内で勤務していた。
 このころ、被告Bは同社の中部エリア全体の責任者であり、被告Cは同社名古屋店のレディース部門の主任であった。(以上につき、丙1)

(4)被告らは、遅くとも平成17年7月頃から平成19年初旬までの間、原告に秘して交際し、複数回にわたって不貞行為(以下「本件不貞行為」という。)に及んだ(「平成17年7月頃」という点について、乙9、丙1。なお、本件不貞行為の始期については、後記のとおり当事者間に争いがある。)。

(5)被告Cは、平成19年9月9日、被告Bとの間の長男D(以下「D」という。)を愛知県豊橋市で出産した。そして、被告Bは、平成21年12月21日、Dを認知した。

(6)原告は、令和3年7月、実母の死去に伴う相続手続のために戸籍謄本を取得したところ、被告Bが、被告Cとの間でDをもうけ認知していたことを知り、被告Bを問いただした結果、本件不貞行為の事実を知った。

(7)被告Bは、令和3年8月17日頃、原告と共に住んでいた自宅を出て、以降、原告と被告Bは別居している(日付の点について、甲6)。

(8)被告Bの代理人弁護士は、令和3年11月22日付けで、原告の代理人弁護士に対し、離婚及び離婚協議に関する受任通知を送付した(甲6)。

第3 本件の争点

     (中略)

第5 当裁判所の判断
1 争点1(婚姻関係破綻の有無)について

(1)本件不貞行為当時に原告と被告Bとの間の婚姻関係が破綻していたかについて、被告Bは、前記第4の1【被告B】(1)ないし(5)に記載のとおりの主張をし(以下、各番号に対応して「被告Bの主張(1)」ないし「被告Bの主張(5)」と言う。)、その陳述書(乙9)及び本人尋問において、同主張に沿う供述をする。また、被告Cも、原告による不貞の点について被告Bの主張(3)と同旨の主張をし、その陳述書(丙1)において同主張に沿う供述をする。
 しかし、被告らの上記主張及び供述は、いずれも採用することができない。その理由は、以下のとおりである。

(2)前記前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、〔1〕原告と被告Bとは、平成20年頃に被告Bが東京に単身赴任するまでの間、夫婦で同居をし、その後、遅くとも平成26年頃からは再び東京で同居生活をしていたこと(前記前提事実(2)、甲10、乙9、被告B本人)、〔2〕平成14年6月には伊勢神宮に(甲11、原告本人、被告B本人)、平成17年7月頃には広島の厳島神社に(甲10、12、原告本人、被告B本人)、いずれも夫婦で旅行に行っていること及び、〔3〕被告Bの上記単身赴任は、両名の長男が、岡山県内の高校に通学していたために、原告と長男が岡山県内で生活を続けることとしたことによるものであるところ(乙9)、被告Bとしては、平成22年4月に長男が愛知県の自動車専門学校に進学し、寮生活をすることに伴って、原告が当然東京で被告Bと同居することになるものと考えていたこと(被告B本人)、がそれぞれ認められる。

 以上の各事実によれば、遅くとも本件不貞行為が始まった平成17年7月頃の時点(前記前提事実(4))において、原告と被告Bとの婚姻関係が破綻していたとは到底認めることができない。また、上記〔3〕の事実からは、被告Bの主観としても、平成22年4月時点で原告との婚姻関係が破綻しているものと考えていなかったことが認められるところである。なお、原告が平成22年当時、岡山県内で仕事をしていたこと(当事者間に争いがない)に照らすと、平成22年4月時点で、原告が岡山県から被告Bが居住する東京都に生活拠点を移さなかったことをもって、原告と被告Bとの間の婚姻関係が破綻していたことをうかがわせる事情とみることはできない。

(3)被告Bの主張(1)について
 被告Bの主張(1)を認めるに足りる的確な証拠はなく、原告自身が、その本人尋問において供述する、「小さなけんか」、「亀裂が入るほどのけんかはない」、「気を遣っているっていうのはお互い様」という限度で認められるにとどまるところ、夫婦間に原告が供述するようなけんかが存在したことであったり、お互い相手に気を遣わせていたりすることをもって、夫婦において信頼関係が一切存在しない状態が継続していたことをうかがわせる事情とみることはできない。

(4)被告Bの主張(2)について
 原告が平成6年頃に妊娠した被告Bとの間の第二子について中絶した事実については当事者間に争いがない。しかし、当該中絶手術は、最終的に被告Bも同意の上で行われた(当事者間に争いがない)ものであって、その後の夫婦関係に関する前記(2)に認定、説示したところも踏まえると、夫婦において信頼関係が一切存在しない状態が継続していたことをうかがわせる事情とみることはできない。

(5)被告Bの主張(3)及び被告Cの主張について
 この点に関し、被告Bは、その陳述書(乙9)及び本人尋問において、原告が自宅の固定電話で、誰か男性と交際していることを前提とした会話をしていた旨の供述をするが、いかに深夜といえども、電話の相手方の声及び話す内容が鮮明に聞こえるとはにわかには考え難く、同供述を採用することはできない。

 また、被告Bは、その本人尋問において、令和3年の夏に長男に対して本件不貞行為について謝罪した際、長男が、原告も他の男性と好きなようにやっていた旨を話してくれたなどと供述するが、長男は、その自筆の陳述書(甲8)において、「私も言ってはいない」、「絵空事を主張する父の精神を疑う」などと記載しているのであって、被告Bの同供述は信用できない。
 そして、他に、被告らのこの点に関する主張を認めるに足りる証拠はない。

(6)被告Bの主張(4)及び(5)について
 これらは、いずれも本件不貞行為後の事情であり、本件不貞行為時に婚姻関係が破綻していたか否かの判断を左右しない。

(7)小括
 以上より、原告と被告Bとの間の婚姻関係が、本件不貞行為当時、既に破綻していた事実を認めることはできない。

2 争点2(慰謝料額)について
(1)本件不貞行為の始期について

 原告は、本件不貞行為が平成10年頃から行われていた旨の主張をするが、同主張を認めるに足りる証拠はない。なお、原告は、被告Bが、本件不貞行為が原告に発覚した際、「長いんだ」と説明した旨の主張及び供述をするが、同主張及び供述を支える証拠は存しない。

 他方、被告らは、本件不貞行為は、被告Bが岡山県内に転勤した平成17年3月頃より後である同年夏頃に開始した旨の主張及び供述をする。この点,被告らの間の肉体関係自体は、他に的確な証拠がない以上、被告らが自認する平成17年夏ごろに開始したという限度で認めることができるものの、被告Cの広島出張の帰りに仕事と関係なく被告Bのいる岡山県に立ち寄るという状況(丙1、被告B本人)及び被告Bが立ち寄るように伝える相手は被告C以外にいなかったこと(被告B本人)に照らすと、被告らは、平成17年3月頃の被告Bの岡山県内への転勤以前の段階で、仕事上の関係を超えた親密な関係にあったとみるのが自然かつ合理的である。

 以上より、被告らによる本件不貞行為は、肉体関係を持ったという意味では、平成17年夏頃と認められるものの、平成17年3月頃の時点で、上司と部下の関係を超えた親密な関係にあったと認められる。

(2)検討
ア 以上を前提に検討すると、本件不貞行為は遅くとも平成17年3月頃から親密な関係であった被告らが同年夏頃に肉体関係を持ち、平成19年初旬頃までの間、2年程度継続していた(前記(1))こと、被告Cが平成19年9月に被告Bとの間の子であるDを出産し、被告BはDの認知までしていること(前記前提事実(5))、及び被告Bは、原告が偶然知るに至るまで、本件不貞行為やDの存在をひた隠しにしており(前記前提事実(6))、被告Cに対して現在に至るまで月額7万円もの養育費の支払を続けていたこと(甲14、丙2、被告B本人)が認められることに加えて、原告と被告Bとは、被告Bの単身赴任期間を除いて、同居していた(前記1(2)〔1〕)にもかかわらず、原告においてDの存在及び被告Bによる認知の事実を知るや、1か月程度で別居に至っており(前記前提事実(6)、(7))、本件不貞行為及びその結果生まれたDの存在が原告と被告Bとの夫婦関係に大きな影響を与えたものと推認されること、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、本件不貞行為による慰謝料額は200万円と認めるのが相当である。

イ 被告Bは、前記第4の2【被告B】(3)のとおり、原告と被告Bとの間の婚姻関係は、原告が平成11年頃から不貞行為に及んでいたことなどにより相当程度悪化していた旨の主張をするが、原告が不貞行為に及んだと認めることができないことは、前記1(5)に認定、説示したとおりであって、同主張を採用することはできない。

ウ 被告Cは、前記第4の2【被告C】(3)のとおり、原告が本件不貞行為を認識したのが15年程の年月が経過した後であることから、要保護性は相当低いなどとの主張をするが、本件不貞行為の発覚後、ほどなく別居に至ったという経過に照らして、本件不貞行為自体が相当以前のことであることが要保護性を減殺するものとはいえず、同主張に係る事実は、慰謝料額算定における考慮事情とはならない

3 結論
 以上より、原告の被告らに対する本件請求は、主文1項及び2項の範囲で理由があるからその限度で認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
 なお、被告B申立ての仮執行免脱宣言については、相当でないからこれを付さないこととする。
東京地方裁判所民事第26部
裁判官 安部利幸
以上:5,579文字

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