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被告宅への宿泊事実を認めながら不貞行為を否認した地裁判決紹介

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令和 6年11月19日(火):初稿
○「不貞行為第三者慰謝料80万円・150万円の2件地裁判決紹介」の続きで、フィリピン国籍を有する妻が、夫Cとの不貞行為を理由に慰謝料300万円の支払を求める訴えを提起し、これを棄却した令和5年8月15日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。宿泊事実を認めながら不貞行為を否認して慰謝料請求を棄却した判例は「ホテルへ行ったが一線は越えていないとの言い訳が通用した判例紹介」、「多数回ラブホテルに滞在するも不貞行為を否認した地裁判決紹介」等でも紹介しています。

○事案は、被告は原告の夫Cの元妻で、被告とCは、遅くとも令和2年11月21日から翌22日にわたり、被告の居住するアパート内において不貞行為に及び、その後も不貞関係を継続したとして慰謝料300万円に調査費用等合計約367万円の支払を請求し、被告はCが被告アパートに宿泊した事実は認めるも不貞行為は一切ないと主張したものです。

○判決は、Cと被告は元夫婦であり、長女の親という関係にあることからすれば、男女関係になくとも、同宿することは十分考えられ、その内容に特段不自然・不合理な点はないとして、原告の請求を全て棄却しました。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、367万0302円及びこれに対する令和2年11月22日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,C(以下「C」という。)の妻である原告が,被告がCと不貞行為を行ったと主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,367万0302円及びこれに対する不法行為の日である令和2年11月22日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(後掲各証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認定できる。)
(1)原告は、フィリピン共和国の国籍を有し、日本国において永住者の在留資格に基づき在留する者である。(甲1)

(2)被告は、昭和63年、Cと婚姻したが、平成6年3月3日、調停離婚した。当該調停離婚において、長女D(以下「長女」という。)の親権者は被告と定められ、Cは、長女の養育費として、平成6年3月から同人が満20歳に達する月まで月額6万円を支払うこと、Cは、被告に対し、解決金として600万円の支払義務を負い、これを平成6年3月から平成16年2月まで、毎月末日限り5万円を支払うことなどが定められた。しかしながら、Cは、被告に対し、長女の養育費や解決金をほとんど支払うことができなかった。(乙1、2、4、弁論の全趣旨)

(3)原告は、平成9年6月5日、Cと婚姻した。原告とCは、平成8年○○月○○日に長男を、平成12年○月○○日に二男をもうけた。(甲3)

(4)被告とCは、離婚後、ほとんど連絡をとっていなかった。被告は、令和2年頃、引越しをしなければならない事情があったが、金銭的に困窮しており困っていたところ、新聞で偶然Cの名前を見たのをきっかけに、Cに連絡をとり、引越しの件について相談した。Cは、被告の相談に応じ、被告が住むためのアパートを自身の名義で借り、その家賃を負担したりしたほか、金銭を交付するなど、経済的な支援を行った。Cの実家は、長野県安曇野市にあり、Cが実家に帰る際は、被告のアパートで飲食したり、泊まったりすることがある。(甲5、乙2、4、弁論の全趣旨)

(5)原告は、令和2年4月、自宅を出てCと別居を開始した。(甲19、乙2、弁論の全趣旨)

2 争点
(1)不貞行為の有無
(2)損害額

3 争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(不貞行為の有無)について
(原告の主張)
 被告とCは、遅くとも令和2年11月21日から翌22日にわたり、被告の居住するアパート内において不貞行為に及び、その後も不貞関係を継続した。被告は、原告とCが婚姻関係にあることを知っていたから、故意がある。

(被告の主張)
 Cが、被告の自宅に泊まったことはあるが、被告とCは、元夫婦であり、長女の両親という関係にはあるが、不貞関係は一切ない。

(2)争点(2)(損害額)について
(原告の主張)
ア 慰謝料 300万円
イ 治療費等 2万6108円
ウ 調査費用 31万0530円
エ 弁護士費用 33万3664円
オ 計 367万0302円

(被告の主張)
 争う。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(不貞行為の有無)について
 原告は、被告とCは、遅くとも令和2年11月21日から翌22日まで不貞行為に及び、その後も不貞関係を継続した旨主張する。
 証拠(甲7、9の1~9の5、10、20~24の2、乙2、4)及び弁論の全趣旨によれば、被告とCは、令和2年11月21日、被告のアパートに泊まり、翌22日、一緒にスーパーマーケットに出かけるなどしたこと、Cは、その後も複数回、被告のアパートに赴いたことなどが認められる。

しかしながら、被告とCは、肉体関係や恋愛関係にあったことを明確に否定する陳述をしており,同宿をした事情等について、Cは、長野県安曇野市の実家に母を訪ねる際に、それまでは、母が、自身の食事や寝床の準備で気を遣うことやコロナ禍において県外ナンバーの車を実家に停めることを気にすることから、実家から離れたところに車中泊することがあったが、その話を聞いた被告から、被告のアパートで食事と宿泊をするように言ってもらえたから、それ以降、被告のアパートに宿泊させてもらうことがあった旨陳述し、被告も、Cから、実家の母に会う際に、コロナが蔓延し始めてからは、実家に県外ナンバーの車を長時間停めておくこともはばかられ、車中泊をしていることを聞き、引越しの件でCに恩義も感じていたことやCと長女との関係も良くなっていたことから、被告のアパートにCを泊めるようになり、その際は食事も出していた旨陳述している(乙2、4)。

Cと被告の陳述は、概ね一致しているほか、Cと被告は元夫婦であり、長女の親という関係にあることからすれば、男女関係になくとも、同宿することは十分考えられ、その内容に特段不自然・不合理な点はない。

また、前記前提事実のとおり、Cは、被告に対し、金銭を交付したり、被告のアパートを自分名義で借り、家賃を立替えて支払うなど、経済的援助をしていたことが認められるが、この点について、Cは、被告との離婚時に合意した養育費や解決金をほとんど支払えておらず、被告から連絡を受け、長女とも連絡をとるようになったことをきっかけに、これまで被告と長女に何もしてやれなかったことを悔い、なるべく力になりたいと思った旨陳述しているところ(乙2)、前述したとおり、Cと被告は元夫婦であり、長女の親という関係にあることに照らせば、Cの上記行動は、離婚した妻や子への義務を果たせてこなかった者として、あながち不自然・不合理であるともいえない。

そうすると、原告の指摘する上記各事実等をもってしても、被告とCが不貞関係又はこれに準ずる交際関係にあったとは認められず、他に、これを認めるに足りる証拠もない。


2 結論
 以上によれば、その余について検討するまでもなく、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。 
東京地方裁判所民事第37部 裁判官 味元厚二郎

以上:3,037文字

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