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財産分与における妻の寄与割合を3割と認定した高裁決定紹介

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令和 6年10月 3日(木):初稿
○「元妻が元夫に対して申し立てた年金分割請求を認めた高裁決定紹介」で紹介した令和4年10月20日東京高裁決定(判タ1515号57頁、判時2598号29頁)によると年金分割での妻2分の1の割合を修正する対象期間における保険料納付に対する夫婦の寄与の程度を同等と見るべきでないとする特段の事情は、相当厳しく、例外は殆どないと思われます。

○これに対し、財産分与における妻2分の1の割合を修正する事情としては、夫の特殊才覚による高額収入、別居時財産の中の特有財産割合等判断が困難な場合、一方の多額な浪費、婚姻中同居していない期間の長さ等により修正される例があり、年金分割よりは修正要素は柔軟で緩いと思われます。

○財産の形成に夫の資格の活用および勤務実態が大きく寄与していると認められる場合には、夫の寄与割合を高く判断し、財産形成についての妻の寄与割合は3割と認定した平成12年3月8日大阪高裁決定(判時1744号91頁)関連部分を紹介します。

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主   文
一 原判決を次のとおり変更する。
控訴人と被控訴人とを離婚する。
被控訴人は、控訴人に対し、4363万5023円及びうち1713万5023円に対する平成7年4月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
控訴人のその余の請求を棄却する。
二 訴訟費用は第1、2審を通じこれを3分し、その1を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。

事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判

一 控訴人
1 原判決を次のとおり変更する。
 控訴人と被控訴人とを離婚する。
 被控訴人は、控訴人に対し、8000万円及びうち2500万円に対する平成7年4月4日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 被控訴人の離婚請求を棄却する。
2 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

二 被控訴人
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

第二 事案の要旨
 控訴人と被控訴人は夫婦であるが、被控訴人は、両名間の婚姻関係は破綻しているとして民法770条1項五号に基づき控訴人に対し、離婚を求めた(本訴請求)。
 控訴人は、両名間の婚姻関係は破綻しているとして右条項により離婚を求め、かつ離婚慰謝料500万円、財産分与5000万円及び被控訴人の控訴人に対する平成7年4月4日の暴行により被った損害2500万円以上合計8000万円とこのうち2500万円に対する不法行為の日である右同日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(反訴請求)。

第三 争点及び争点に関する当事者の主張(以下、反訴と特定しない限り本訴、反訴共通)

     (中略)

第四 争点に対する判断
一 争点一について


     (中略)

四 争点四について
1 事実認定


     (中略)

2 判断
 前記認定事実によると、控訴人と被控訴人は、約24年間の共同生活期間中に、被控訴人名義の不動産、退職金、ゴルフ会員権等の資産を形成したが、本件別居時の被控訴人の右各財産は、次のとおりとなる。

(一)不動産            約5000万円
 平成10年9月ころの右不動産の価格は6920万円であること、右当時の住宅ローン残額は約1367万円であったこと、不動産価格は、近年下落傾向にあり本件別居時よりも現在の方が低価格となっていることは公知の事実であること、別居時以降も被控訴人が右ローンを支払っておりこの点につき控訴人の寄与は認められないこと、平成9年の右不動産の固定資産税評価額は、5137万7265円であること、以上の諸事実を勘案し、分与の対象とすべき右不動産の価格は5000万円と評価するのが相当である。

(二)退職金            約2550万円
 被控訴人がCC株式会社に昭和44年10月1日から29・7年勤務し、別居後約3151万円の退職金を得たこと、右勤務期間中の控訴人と被控訴人の同居期間は、昭和46年4月7日から平成7年4月4日までの約24年間であることからすれば、分与の対象とすべき退職金は約2550万円と評価するのが相当である。

(三)ゴルフ会員権           約50万円
 前記ゴルフ会員権の実情からすれば、その価格は約50万円と評価するのが相当である。

(四)以上合計           約7600万円
 そして、右財産の形成は、被控訴人が、一級海技士の資格をもち、1年に6か月ないし11か月の海上勤務をするなど海上勤務が多かったことから多額の収入を得られたことが大きく寄与しており、他方控訴人は主として家庭にあり、留守を守って1人で家事、育児をしたものであり、これらの点に本件に現れた一切の事情を勘案すると、被控訴人から控訴人に対し、財産分与として形成財産の約3割に当たる2300万円の支払を命ずるのが相当である。

 控訴人は、被控訴人の有する右資格をもってその寄与度を高く評価するのは相当でないと主張するが、資格を取得したのは被控訴人の努力によるものというべきであり、右資格を活用した結果及び海上での不自由な生活に耐えたうえでの高収入であれば、被控訴人の寄与割合を高く判断することが相当であるというべきである。

 なお、被控訴人は、平成8年6月以前に多額の婚姻費用を支払っており、また、被控訴人の留守中、控訴人が被控訴人の留守宅に居住したとの利益を得ているから、これらを精算すると婚姻費用が過払となり、したがって控訴人は被控訴人に対し過払分413万円を支払うべきであると主張する。

しかし、被控訴人は本件訴訟において財産上の支払を求める訴訟を提起していないから、右主張は失当であり、仮に右主張を財産分与において斟酌されるべき事情の主張と解するとしても、前記婚姻費用審判の対象とされた婚姻費用支払期間は平成8年7月からであり、それ以前の婚姻費用については対象とされなかったのであるから、その後になされた前記審判による婚姻費用月額を超えて平成8年6月分まで婚姻費用が支払われていたからといって、右超過額が不当利得とはならない。

また、控訴人が被控訴人の留守宅に居住したとの点については、右事実が真実であったとしても、控訴人は、未だ婚姻中であるから、夫婦間の扶助義務からして右留守宅に無償で居住することは許されるというべきであり、右居住により得た利益を不当利得ということはできない。以上から被控訴人の前記過払の主張は、採用することができない。

五 結論
 以上検討したところによれば、控訴人と被控訴人の各離婚請求は、いずれも理由があるからこれを認容し、控訴人の本件暴行にかかる損害賠償請求は、1713万5023円及び本件暴行時である平成7年4月4日から支払済みまで民法所定年五分の遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、控訴人の本件離婚に伴う慰謝料請求は、350万円の支払を求める限度で理由があるからいずれも右各限度でこれを認容し、その余はいずれも理由がないから棄却すべく、控訴人の財産分与の申立ては、2300万円の分与を求める限度でこれを認容すべきである(以上合計は4363万5023円となる。)。よって、右結論と一部異なる原判決は相当でないから原判決を右認定のとおり変更することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 武田多喜子 裁判官 正木きよみ 礒尾正)
以上:3,039文字

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