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子連れのホテル同宿について不貞行為を否認した地裁判決紹介

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令和 6年 5月15日(水):初稿
○原告が、被告が原告の夫Cと不貞行為に及んだ旨主張して、被告に対し、慰謝料300万円及び調査費用68万5000円並びに遅延損害金の支払を求めました。

○これに対し、原告が主張する事実は、いずれも、被告が、原告夫とともに仕事をする中で親しくなったために、原告夫には友好的な態度を取り、逆に原告夫と離婚や本件マンションからの退去等を巡って敵対していた原告には敵対的な態度を取っていたという理由から説明できる事情であり、上記の各事情から、被告が原告夫と不貞関係にあったことまでを推認することはできないとして、不貞行為を否認して、原告の請求を棄却した令和4年11月29日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○原告は、被告と原告夫Cが、令和2年1月、原告長男10歳と被告二女9歳を連れて、千葉のホテルで一泊し、原告長男10歳の、「夜食事が終わった後、部屋に被告二女と二人だけにさせられ、原告夫と被告が二人だけで2時間ほどどこかに行って帰ってこなかった。」との陳述から不貞行為を推測していますが、判決はそれだけでは不貞行為を認定できないとしています。

○争いのない前提事実によると、原告は、夫Cとは別居するも、離婚はしていないようです。原告は夫Cに対し如何なる行動をとっているのか気になるところです。

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主   文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、368万5000円及びこれに対する令和4年3月25日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は、原告が、被告が原告の夫と不貞行為に及んだ旨主張して、被告に対し、慰謝料300万円及び調査費用68万5000円(合計368万5000円)並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である令和4年3月25日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1)原告(昭和52年○○月○○日生)及びC(昭和17年○月○日生。以下「原告夫」という。)は、平成21年2月23日に婚姻した夫婦であり、二人の間には同年○月○日生まれの長男(以下「原告長男」という。)がいる(甲1)。

 原告夫は、宝飾品の製作等を行う株式会社C&COMPANY(以下「原告夫会社」という。)の代表取締役を務めており(甲4)、原告は、原告夫会社が製作した宝飾品の販売等を行っていた株式会社青曜(以下「原告会社」という。)の代表取締役を務めている(甲2)。

(2)被告は、昭和45年○○月○○日生まれの女性であり、被告には、亡夫との間の子である長女(平成13年○月○○日生。以下「被告長女」という。)、長男(平成16年○月○○日生)及び二女(平成22年○月○○日生。以下「被告二女」という。)がいる。

 また、被告は、宝飾品の販売等を行う会社の業務執行社員を務めており(甲5)、令和元年頃からは原告夫会社と仕事上の関わりがあり、原告夫とともに原告夫会社の事務所において仕事をすることがある(甲10の1・2、弁論の全趣旨。なお、原告は、被告は原告夫会社に雇用されている旨主張し、被告は、自身は原告夫会社から業務委託を受けているに過ぎない旨主張している。)。

(3)原告は、平成28年3月25日から、原告夫及び原告長男とともに,原告夫会社が賃借する原告の肩書住所地のマンション(以下「本件マンション」という。)で暮らしていたが、原告夫は、令和3年1月頃、原告夫会社の事務所の近くに新たな住居を賃借し、同所で生活するようになった(甲7、弁論の全趣旨)。

 そして、原告夫会社は、同年6月21日付けで、原告会社に対し、原告と原告長男は本件マンションから同年8月31日までに退去されたい旨や、原告は原告夫との離婚に応じる意思があるか回答されたい旨等が記載された通知書を送付した(甲9)。 

3 争点及びこれに関する当事者の主張


     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)原告夫と被告は、令和2年1月、原告長男(※平成21年生まれ、当時10歳)及び被告二女(※平成22年生まれ、当時9歳)とともに、4人で旅行に行き、千葉のホテルに一泊したことがあった。

(2)被告は、同年3月26日、子らとともに、原告夫会社の事務所の近くに引っ越した(甲6)。

(3)原告夫は、令和3年1月頃、原告夫会社の事務所の近くに新たな住居を賃借し、同所で生活するようになった。
 また、原告夫会社は、同年6月21日付けで、原告会社に対し、〔1〕原告夫会社の経営状況が悪いことや、原告夫が本件マンションから転居したことで原告が本件マンションに居住できる根拠がなくなったことから、原告と原告長男は本件マンションから同年8月31日までに退去されたい旨、〔2〕原告会社の原告夫会社に対する未払金が多額に上っていることから今後は原告会社に対して商品を納品することはできない旨、〔3〕原告は原告夫との離婚に応じる意思があるか回答されたい旨等が記載された通知書を送付した(甲9)。

(4)原告は、同年7月1日以降、原告夫会社の事務所にボイスレコーダーを設置し、被告と原告夫の会話の内容を録音した(本件では、その一部が証拠として提出されている(甲10の1・2)。)。

(5)原告から依頼を受けた調査会社は、同年7月30日から同年8月30日までの期間中の5日間、原告夫の行動調査(尾行・張り込み)を行った(甲12。なお、その調査結果については本件では証拠として提出されていない。)。

2 被告と原告夫との不貞行為の有無について
(1)原告は、被告が原告夫と令和2年1月に千葉のホテルに一泊した際に肉体関係を持ち、その後も不貞関係を継続している旨主張する。
 しかし、そもそも、被告が原告夫と令和2年1月に千葉のホテルに一泊した際に肉体関係を持ったとの事実を認めるに足りる証拠はない。

 原告は、ホテルに一緒に行った原告長男から、「夜食事が終わった後、部屋に被告二女と二人だけにさせられ、原告夫と被告が二人だけで2時間ほどどこかに行って帰ってこなかった。」と聞いた旨陳述するが(甲13)、原告長男が仮にそのようなことを述べていたとしても、当時の原告長男の年齢等に照らし、直ちにその供述に係る事実を認めてよいかには疑問がある上、その点を措き、仮に原告夫と被告が二人で外出した時間があったとしても、そのことから直ちに二人が不貞行為に及んでいたとまでは推認できず、原告の上記陳述によっても、被告と原告夫が上記旅行の際に肉体関係を持ったとの事実は認められない。

(2)また、原告は、被告と原告夫が不貞行為に及んでいたことは、
〔1〕被告が原告夫の代理人から原告と原告夫の離婚に関する話を聞かされていたこと、
〔2〕被告が原告夫会社の事務所を訪れた原告に対して「部外者は出ていくように」と言ったり、原告が原告夫会社を訪問することを防ぐ計画を立てていたりしたこと、
〔3〕被告が原告夫による本件マンションのトランクルームからの私物の搬出に関与していたこと、
〔4〕被告が原告夫と親密な会話をしたり(被告は原告夫に対して「結婚して。」などと言っていた。)、原告夫の携帯電話を見たりしていたこと、
〔5〕被告が原告夫をプライベートで遊びに誘っていたこと、
〔6〕被告が原告の突然の訪問を警戒し、原告夫と原告夫会社を出る時間をずらした上で別の場所で落ち合う計画を立てていたこと、
〔7〕被告が原告夫の足の傷の手当てを継続的に行っていたことなどからも推認できる旨主張する。

 確かに、証拠(甲10の1・2)及び弁論の全趣旨によれば、
〔1〕被告が原告夫やその代理人から原告と原告夫の離婚に関する話を聞かされていたこと(甲10の2・1頁〔以下、頁番号は書証下部に記載の頁数で示す。〕、5頁)、
〔2〕被告が原告が原告夫会社を訪問することを防ぐ方法を原告夫に提案していたこと(同2頁)、
〔3〕被告が原告夫による本件マンションのトランクルームからの私物の搬出に関与していたこと(同6頁ないし12頁)、
〔5〕被告が原告夫を食事等に誘っていたこと(同3頁、30頁、34頁)、〔7〕被告が原告夫の足の傷の手当てを継続的に行っていたこと(同37頁)
などの事実が認められる。

しかし、上記の事実は、いずれも、被告が、原告夫とともに仕事をする中で親しくなったために、原告夫には友好的な態度を取り、逆に原告夫と離婚や本件マンションからの退去等を巡って敵対していた原告には敵対的な態度を取っていたという理由から説明できる事情であり、上記の各事情から、被告が原告夫と不貞関係にあったことまでを推認することはできない。

 また、確かに、証拠(甲10の1・2)によれば、〔4〕被告と原告夫が、若いうちに出会っていたら一緒に個展を開けたかもしれないなどと話をしたり、仕事とは関係のない世間話をしたりして、親しく会話している場面があったと認められる(甲10の2・15頁、19頁ないし22頁、24頁、25頁、34頁、35頁、37頁ないし40頁)。

しかし、その会話の内容をみても、両者が男女関係にあったとまでは断じ難く、両者が不貞関係にあったとまでは認めるに足りない。さらに、原告は、被告が原告夫に対して「結婚して。」などと言っていた旨も主張するところ、確かに、上記証拠によれば、被告が原告夫と一緒にいる際にそのような発言をした事実が認められ(35頁)、かかる発言からは、被告が原告夫に好意を持っていたことがうかがわれるといえる。

しかし、前後の会話の流れからすると、被告の上記発言は唐突なものであり、その後もすぐに両者は別の話題に移っていること、他の機会にも被告が同様の発言をしていたと認めるに足りる証拠はないことなどからすると、被告の上記発言をもってしても、それによって直ちに被告と原告夫が不貞関係にあったとまで認めることはできない。

 さらに、証拠(甲10の1・2)によれば、確かに、〔6〕被告が原告の突然の訪問を警戒し、原告夫と原告夫会社を出る時間をずらした上で別の場所で落ち合う計画を立てていた事実が認められる(甲10の2・32頁、33頁、41頁)。

しかし、被告及び原告夫と原告が当時敵対的な関係にあったことがうかがわれることからすれば、不貞の有無にかかわらず、被告や原告夫が原告と三者で顔を合わせるような事態になることを避けようとしたとしても、それ自体は不自然とはいえない。また、被告と原告夫が、外で落ち合った後にどのような場所に行こうとしていたのかは証拠上明らかでなく、被告の主張するように、取引先等に行こうとしていただけである可能性も排斥することはできない(同時期に行われた調査会社による原告夫の行動調査(尾行・張り込み)によっても、原告夫と被告が不貞関係にあることを裏付けるような事情は把握できていない(認定事実(5)、弁論の全趣旨)。)。したがって、上記事実から、被告と原告夫が不貞関係にあったと認めることもできない。

 その他に、認定事実(2)及び(3)のとおり、被告が令和2年3月に原告夫会社の本店所在地の近くに転居し、原告夫もその後にその近くに転居した事実が認められるが、被告と原告夫が当時原告夫会社の事務所で一緒に仕事をすることが多かったことがうかがわれること(甲10の1・2、弁論の全趣旨)からすれば、仕事上便宜であるために両者が原告夫会社の事務所の近くに転居したものとも考えられ、上記事実から両者が不貞関係にあったと推認することもできない。

(3)以上のとおり、原告の指摘する事情を検討しても、被告と原告夫が不貞関係にあったと認めるには足りない。

3 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求には理由がない。


第4 結論
 以上によれば、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第6部 裁判官 菊地拓也
以上:4,994文字

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