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医師との再婚を理由に養育費減額請求を認めた家裁審判紹介

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令和 5年12月25日(月):初稿
○年収1080万円の元夫が、元妻と離婚の際、元妻が親権者として養育する長女に対する養育料として毎月15万円を長女が22歳に達するまで支払うとの合意をしていたところ、元妻が精神科医と再婚したことで、元夫は元妻に対し、養育料の減額請求をしました。

○元妻が子連れで再婚し、再婚相手と子が養子縁組をした場合、その子の第一次的養育義務者は養親になり、実親の養育義務は第二次的義務者に後退して原則として養育義務を免れるます。そのため元夫に養育料を継続して支払わせるために再婚しても養子縁組をしない例も多くあります。しかし、本件では、「相手方夫は相手方と再婚した後も長女と養子縁組をしていないものの、これに準ずる状態にあるとするのが相当」として、事情変更による養育費減額を認めました。

○問題は養育費減額の審判において、元妻の再婚相手精神科医が、直近の収入資料の提出を拒否し、その収入が確定出来ないことでした。この場合、元妻の夫が精神科の開業医であることことから、申立人の元夫に比べて相当に高額な収入を得ていると考えられ、長女を事実上扶養して事実上養子縁組し、長女への生活費等の給付が十分にされていると考えられるとして、精神科医総収入から208万円程度(相手方夫が扶養義務を負うとした場合の子の生活費を参考にした金額。1567万円×48%×62÷(100+62+62)≒208万円(1万円以下四捨五入。))を相手方元妻の総収入に加算して申立人が負担すべき養育費額を月額15万円から9万円に変更した令和4年5月13日宇都宮家裁審判(家庭の法と裁判46号88頁、判時2572号○頁)全文を紹介します。

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主   文
1 申立人と相手方間の平成30年12月10日付合意書の第2条第1項を、令和3年10月以降分につき、次のとおり変更する。
 「申立人(申立人と相手方間の平成30年12月10日付合意書乙。以下「申立人」という。)は、相手方(同合意書甲。以下「相手方」という。)に対し、当事者間の長女A(平成25年○月○日生。同合意書丙。)の養育費として、令和3年10月から同人が満22歳に達した後最初に到来する3月まで、1か月9万円を、毎月末日限り、相手方指定の口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は申立人の負担とする。」
2 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 申立ての趣旨

 申立人・相手方間の平成30年12月10日付け合意書第2条1項により、申立人が相手方に支払うべきものとされた長女の養育費(月額15万円)につき、相当額へ減額するとの審判を求める。

第2 当裁判所の判断
1 認定事実

 本件記録によれば、次の事実を認めることができる。
(1) 申立人(昭和55年○月○日生)と相手方(昭和58年○月○日生)は、婚姻中に長女(平成25年○月○日生)をもうけたが、平成30年12月17日、長女の親権者を相手方と定めて協議離婚した。以降相手方が未成年者を監護養育している。なお、申立人は相手方と婚姻する前にも婚姻しており、平成18年○月○日生まれの子がいる(親権者母)。

(2) 申立人と相手方は、上記協議離婚に先立ち、平成30年12月10日、月2回、3時間程度、直接の面会交流をすることなどのほか、以下の内容を含む合意書を交わした(以下「本件合意」という。)
   記
 長女の養育費について、申立人が相手方に対し、平成31年1月から長女が満22歳に達する日の属する年の翌年の3月まで、月額15万円を、毎月末日限り支払う。

(3) 相手方は、令和2年12月27日にB(精神科医。以下「相手方夫」という。)と婚姻し、令和3年○月○日に長男をもうけた。相手方夫と長女は養子縁組をしていないが、相手方夫は、相手方及び長女と同居し、事実上長女を扶養している。

(4) 申立人の令和3年の給与収入は1080万円であった。
 相手方の令和2年の給与収入は221万4000円であったが、長男出産に伴い、育児休暇を取得し、令和3年○月○日から遅くとも令和4年○月○日まで、月当たり17万7141円の育児休業給付金を受給した。
 相手方夫は、‥‥内で令和2年○月○日に精神科・神経科・心療内科を診療科目とするクリニックを開院し、同年の市県民税税所得証明書によると、給与収入は881万8276円、営業等所得は-480万1653円であった。なお、相手方は、第2回審判期日において、令和2年の確定申告書を含め、相手方夫の収入資料を上記証明書以外提出しない意思を示した。

(5) 申立人と長女との面会交流は、相手方が再婚する直前の令和2年12月23日を最後に途絶え、申立人は、相手方が本件合意に反して長女との面会交流を実施しないとして、令和3年3月31日に面会交流調停(宇都宮家庭裁判所令和3年(家イ)第215号)を申し立て、その後、同年10月11日、直接面会交流をさせなければならない旨の審判が出され(同令和3年(家)第279号)、後日確定した。

(6) 申立人は、令和3年10月29日、長女の養育費を相当額に減額することを求めて調停を申し立てたが(宇都宮家庭裁判所令和3年(家イ)第839号)、令和4年1月12日に調停に代わる審判がされたが、相手方が同月24日に異議を申し立て、同日本件審判手続に移行した。

2 事情変更の有無等について
(1) 本件は、本件合意において合意した養育費につき、申立人が、①相手方との間に前記面会交流調停が係属中、相手方の父から、養育費はいらないから長女と会うことを諦めるようになどと求められ、実際に申立人が令和3年2月から面会交流拒絶に対抗して養育費の支払を停止したにもかかわらず、相手方からは連絡が一切ない以上、相手方は養育費を請求する意思がないこと、②長女を事実上扶養している相手方夫が社会通念上高収入を得ていると推認されることを理由として減額を求めたものであるところ、当事者間において合意された内容を尊重すべきであるが、これを一切変更することが許されないと解するのは相当ではなく、合意の当時に前提とされていなかった事情が後に生じ、従前の合意の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至った場合には、事情の変更があったものとして、従前の合意の内容を変更することができるものというべきである。

(2) これを本件についてみると、①の申立人の主張する事実を認めるに足りる資料はないが、②後述のように、相手方夫は相手方と再婚した後も長女と養子縁組をしていないものの、これに準ずる状態にあるとするのが相当であるところ、このような状態は本件合意時に前提とされておらず、これによって本件合意の内容が実情に適合せず相当性を欠くに至ったといえるから、相手方夫と長女が養子縁組に準ずる状態であることは事情の変更に当たるとするのが相当である。
 したがって、本件記録に現れた事情に照らし、令和3年10月分以降の養育費につき、その額を変更するのが相当である。

3 養育費額について
(1) 申立人が支払うべき未成年者の養育費額を算定するに当たっては、義務者及び権利者の各基礎収入の額(総収入から税法等に基づく標準的な割合による公租公課並びに統計資料に基づいて推計された標準的な割合による職業費及び特別経費を控除して推計した額)を定め、そのうえで、義務者である申立人が、扶養義務を負う者のほか未成年者と同居していると仮定すれば、未成年者のために充てられたはずの生活費の額を、生活保護基準及び教育費に関する統計から導き出される標準的な生活費指数によって算出し、これを、権利者と義務者の基礎収入の割合で按分して、義務者が分担すべき養育費を算定するいわゆる標準算定方式(司法研究報告書第70輯第2号養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究参照)に基づいて検討するのが相当である。

(2)
ア 前記1(4)で認定したとおり、申立人の令和3年の給与収入は1080万円であり、これを総収入と認めるのが相当である。

イ 相手方は令和3年○月○日に長男を出産したことに伴って、育児休業を取得し、月額17万7141円の育児休業給付金の支給を受けていること、育児休業給付金の取得には職業費(300万円未満約18%)がかからないことに鑑み、相手方の育児休業給付金は、給与収入に換算して約260万円の給与収入相当といえる。

 前記前提事実によると、令和2年の相手方夫の給与収入は881万8276円、営業等所得は-480万1653円であると認められるが、この詳細は相手方が確定申告書等の提出を拒否することから不明であるものの、営業等所得が大幅にマイナスであるのは同年にクリニックを開院したことによる一時的な収入の低下によるものと考えられる。

そして、相手方が令和3年以降の相手方夫の収入について資料の提出も拒否するため、相手方が精神科の開業医であることに鑑み、相手方の総収入は少なくとも1567万円の営業所得(算定表の上限の金額)を得ていると推認するのが相当といえる。これを前提にすると、相手方夫は、絶対的にも、申立人に比して相対的にも相当に高額な収入を得ていると考えられ、このような相手方夫が長女を事実上扶養して事実上養子縁組している状態であること、長女への生活費等の給付が十分にされていると考えられることに鑑み、相手方夫の上記総収入から208万円程度(相手方夫が扶養義務を負うとした場合の子の生活費を参考にした金額。1567万円×48%×62÷(100+62+62)≒208万円(1万円以下四捨五入。))を相手方の総収入に加算するのが相当である。

ウ そこで、上記標準算定方式による標準算定表の表1〔養育費・子1人表(子0~14歳)〕に当てはめると、申立人が負担すべき養育費額は、月額8万円~10万円程度と算定される。
 以上を踏まえ、本件に現れた一切の事情を総合考慮すると、申立人が長女の養育費として支払うべき額は、月額9万円と定めるのが相当である。

4 結論
 よって、本件合意に基づく養育費を、令和3年10月から9万円と変更することとし、主文のとおり審判する。
 宇都宮家庭裁判所 (裁判官 鬼丸のぞみ)
以上:4,170文字

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