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不貞行為者ということだけで親権者になれないことはないはず2

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令和 5年 7月27日(木):初稿
○「不貞行為者ということだけで親権者になれないことはないはず」を続けます。原告母が、原告父に対し、長男6歳の親権者を母としての離婚を求めて提訴し、被告父が親権者と定められた珍しい事案として、平成24年12月20日東京家裁立川支部判決(ウエストロー・ジャパン)関連部分を紹介します。

○被告父は、原告母が不貞行為を繰り返し、行動は規範意識に欠けることを親権者として相応しくないことの理由としています。しかし、判決は、原告の監護態勢についても,大きな問題点はないものの,上記に加え,長男は出生時から現在の居住地で生活しており,現在の安定した生活環境を変えることは長男の福祉にとって望ましいものではないことに鑑みれば,本件離婚に伴い,父である被告を親権者とするのが相当であるとしました。

○原告母の監護態勢に大きな問題点はないとしながら、被告父を親権者と指定した決定的理由は、現在の父との安定した生活環境でした。原告母が、不貞行為を繰り返したことを問題点とはしていません。不貞行為そのものは親権者の判断に影響しないことがうかがえます。

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主   文
1 原告と被告とを離婚する。
2 原告と被告との間の長男A(平成18年○月○日生)の親権者を被告と定める。
3 原告は,被告に対し,本判決確定の日から,上記子が満20歳に達する日の属する月まで,1か月当たり2万5000円を毎月末日限り支払え。
4 原告は,被告に対し,70万0011円を支払え。
5 原告及び被告のその余の請求を棄却する。
6 原告の養育費の申立てを却下する。
7 原告の財産分与の申立てを却下する。
8 訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを3分し,その2を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

(本訴)
1 主文第1項同旨
2 原告と被告との間の長男A(平成18年○月○日生。以下「長男」という。)の親権者を原告と定める。

         (中略)

(反訴)
1 主文第1ないし第3項同旨

         (中略)

第2 事案の概要

(1) 前提事実(甲1,3及び乙20により認められる。)
ア 原告(昭和48年○月○日生)と被告(昭和45年○月○日生)は,平成18年2月8日に婚姻の届出をした夫婦であり,原告と被告との間には,同年○月○日,長男が出生した。

イ 原告が当庁に申し立てた夫婦関係調整調停申立事件(平成23年(家イ)第1030号)及び被告が当庁に申し立てた夫婦関係調整調停申立事件(同第997号)は,平成23年6月7日,調停不成立により終了した。

(2) 本件本訴は,原告が,夫である被告に対し,原告と被告の婚姻関係は,被告が原告に暴言や暴力を加えるなどし,自宅から強制的に追い出したことなどにより,破綻しており,婚姻を継続し難い重大な事由があるとして(民法770条1項5号),未成年者である長男の親権者を原告と定めて離婚すること,長男の養育費,慰謝料,及び財産分与金の各支払を求めた事案である。

 本件反訴は,被告が,妻である原告に対し,原告と被告の婚姻関係は,原告の不貞行為により破綻しているとして(同項1号),未成年者である長男の親権者を被告と定めて離婚すること,長男の養育費,慰謝料,及び財産分与金の各支払を求めた事案である。

3 当事者の主張の要旨
(1) 離婚及び慰謝料請求について


         (中略)

(2) 親権者の指定について
(原告)
 長男は,幼く,母親からの愛情を受けることが不可欠である。原告は,平成23年3月31日まで,長男を養育しており,被告は,養育に携わることはほとんどなかった。被告は,同日,一方的かつ暴力的な方法により,長男の身柄を奪っており,また,規範意識が欠如しているため,長男の養育には不適切である。したがって,長男の親権者としては,原告が指定されるべきである。

(被告)
 原告は,平成22年ころから,家事をほとんど行わず,長男の保育園の送迎も被告又は被告の母親に任せきりであった。原告は,Bとの不貞行為を繰り返しており,原告の行動は規範意識に欠ける。他方,被告は,自ら会社を経営しており,比較的自由に時間を使うこと,同一敷地内に住む被告の母からの援助を受けることができ,長男は,被告の下で問題なく生活している。したがって,長男の親権者としては,被告が指定されるべきである。

         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 前記前提事実,証拠(甲2,4ないし10,14,21,22,28,29,乙1ないし15,19,21ないし28,39,53,55ないし81,84ないし86(枝番のあるものについては,枝番を含む。以下同様),原告及び被告各本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
(1) 原告と被告は,原告がキャバクラで働いていたときに,被告が客として通ったことから知り合い,交際を始め,原告の妊娠を機に平成18年2月8日に婚姻の届出をし,原告と被告との間には,同年○月○日,長男が出生した。

         (中略)

3 親権者の指定について
(1) 前記認定事実,証拠(甲9,10,14,乙25ないし30,33ないし39,53,82ないし87),当庁家庭裁判所調査官の調査の結果及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 長男は,原告と被告が別居するまでは,原告に主として監護養育されていたが,別居後は,被告により監護養育されている。被告及び長男は,前記のとおり有限会社b名義の建物の3階部分に居住し,2階は被告の父母が居住しており,2階と3階は外階段でつながり,長男は被告の父母宅に自由に行き来している。被告は,内装工事等を業とする有限会社aの代表取締役であり,同会社の事務所及び作業所は上記建物の1階にある。同社は,多くはないが,利益を上げており,被告は,金銭的に窮する状況にはない。被告は,長男の日常的な世話を主に行い,被告の母には,食事を作ってもらったり,保育園の送り迎えをしてもらったりするなどして,育児の協力を得ている。

イ 長男は,6歳であり,心身の発育に問題はない。平成20年4月から保育園に通っており,以前には他の園児や指導員とトラブルになったことはあったが,平成23年4月以降は,協調性が出てきて,情緒的に安定している。被告は,長男に愛情を持って接し,子の発達に見合った関わりや働き掛けをしており,長男も被告に対し親和的な感情を抱き,被告と離れると不安がるなど被告の存在に安心感を抱いている。

ウ 原告は,被告との別居後,原告の父と同居して実家に居住しており,平成24年4月から,原告の母の夫(原告の父と母は離婚している。)の経営する株式会社dで働いている。原告の父は,年金収入により生活し,現在も原告の分の食事を作るなどしており,長男の育児への協力を得ることは可能である。

(2) 以上のことからすれば,別居以前に長男を主に監護養育してきたのは原告であるが,別居後は被告が被告の母の援助を得ながら長男を監護養育していること,長男の心身の発育に問題はないこと,長男は,被告に対し親和的な感情を抱き,被告の存在に安心感を抱いていること,被告は,長男に愛情を持って接し,子の発達に見合った関わりや働き掛けをしていることが認められ,現在の長男の監護状況は長男の福祉にかなったものといえる。

 原告は,平成23年3月31日に被告が長男の身柄を奪ったなどと主張するが,同日の経緯には前記1(5)のとおりであって,その原因は,原告が長男と同じ保育園に通う同学年の子の父であるBと肉体関係を持ったことによるものであり,原告が長男と別居するに至った主な責任は原告にあるといわざるを得ない。

また,原告は,被告の原告名義のカードを利用した不正キャッシング行為,麻雀行為,面会交流に対する消極的態度等を指摘して,親権者としてふさわしくないと主張する。

しかし,原告が提出する証拠(甲12,13,18,19,21)のみで,被告が原告名義のカードを不正に利用したとは認められず,他に同事実を認めるに足りる証拠はない。麻雀行為については,甲11によれば,その頻度や時間帯に鑑み監護者として相当ではないとしても,被告が被告の母の協力を得て,長男を監護養育していることは前記(1)アのとおりであり,現時点で,長男の監護に支障を来していると認めるに足りる事情はない。

面会交流については,甲9によれば,以前に被告が原告と長男の面会に積極的な態度ではなかったとはいえるが,平成24年2月から,原告と長男の面会交流が行われており(乙52,被告本人12頁,弁論の全趣旨),現時点において,被告が原告と長男の面会交流を妨げているとの事情も認められない。

 他方,原告の監護態勢についても,大きな問題点はないものの,上記に加え,長男は出生時から現在の居住地で生活しており,現在の安定した生活環境を変えることは長男の福祉にとって望ましいものではないことに鑑みれば,本件離婚に伴い,父である被告を親権者とするのが相当である。

         (後略)
以上:3,746文字

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