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元夫の元妻に対する不貞慰謝料請求20万円を認めた地裁判決紹介

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令和 5年 7月12日(水):初稿
○原告元夫が、被告元妻に対し、被告が原告との婚姻期間中に不貞行為に及んだとして、
〔1〕不貞行為に基づく損害(慰謝料200万円)、
〔2〕被告が原告との婚姻期間中に複数回性病を患ったにもかかわらずこれを隠匿した不作為による不法行為に基づく損害(性病検査費用3万0800円)、及び
〔3〕被告が原告に扶養控除枠を超過したことを申告しなかった不作為による不法行為に基づく損害(原告が納付した追徴課税相当2万2500円)
の合計205万3300円の支払を求めました。

○これに対し、被告元妻が尖圭コンジローマにり患した経路は性交渉であると推認され、原告元夫が被告に感染させた事実がない以上、被告に性交渉を伴う不貞行為があったことが推認されるなどとして、慰謝料20万円を認容し、また請求〔2〕を3万0800円全部認容し、原告は、被告が、原告の扶養に入っている以上、被告自身の収入が扶養控除枠を超えた場合、原告にその旨申告すべき義務があると主張したが、追徴課税は、原告が本来納めるべき税金であり、被告が原告の配偶者であることをもって、扶養家族に対して申告すべき法的義務があるとまでいえず、原告の主張は採用できないとして、追徴課税相当2万2500円の請求を棄却した令和4年3月24日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○判決では、被告元妻が性病に罹患し、原告元夫から移されたもので無い以上、被告元妻は、元夫以外の男性と不貞行為をした事実が認定されるとして、その慰謝料金額を20万円としました。随分と強引な認定との印象も受けますが、金額が20万円でおそらく裁判費用にも満たないと少額で、元妻に対するお仕置きとしてはやむを得ないのでしょう。それにしても、東京地裁には、様々な事案が提訴されるものだと実感します。

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主   文
1 被告は,原告に対し,23万0800円を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求

 被告は,原告に対し,205万3300円を支払え。

第2 事案の概要等
1 事案の概要

 本件は,原告が,被告に対し,被告が原告との婚姻期間中に不貞行為に及んだとして,同不貞行為に基づく損害(慰謝料200万円),被告が原告との婚姻期間中に複数回性病を患ったにもかかわらずこれを隠匿した不作為による不法行為に基づく損害(性病検査費用3万0800円)及び被告が原告に扶養控除枠を超過したことを申告しなかった不作為による不法行為に基づく損害(原告が納付した追徴課税2万2500円相当)の支払いを求める事案である。

2 前提事実(当事者間に争いのない事実,明らかに争わない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,以下,書証を摘示する場合には,枝番を含むものは特記しない限り枝番を含むものとして表示する。)
(1)原告と被告は,平成26年2月22日に婚姻し,平成30年7月9日に協議離婚した。原告と被告の間には子がいない。

(2)被告は,平成27年2月6日,高森レディースクリニック産婦人科で,「フロリード膣坐薬」及び「フロリードDクリーム」を処方された(甲1の1)。
 これらは,主に,カンジダという真菌(カビ)が女性の膣,外陰部に感染,症状を起こす感染症であるカンジダ症の治療を目的に処方される医薬品である。(甲1の1,甲2の2)

(3)被告は,平成30年6月15日,寺内医院内科で,「ベセルナクリーム」及び「マイコスポールクリーム」を処方された。
 これらは,主に,性器や肛門周辺にニワトリのトサカ(カリフラワー状)もしくは乳頭のようなイボが生じる尖圭コンジローマの治療を目的に処方される医薬品である。(甲1の2,甲2の1)

3 争点及び当事者の主張
(1)不貞行為の有無及び損害

【原告の主張】
 被告は,原告との婚姻期間中,不貞行為に及んだ。
 被告が不貞行為に及んだことは,以下の事実から推認される。
 婚姻期間中である平成27年2月6日,性行為を主たる感染経路とする尖圭コンジローマを患ったこと,平成30年6月15日には,性交渉等を原因とするカンジタ症を患った。
 被告は,「17Live」という動画配信アプリで視聴者と会話していたが,婚姻期間中に交際相手がいたことを伺わせる発言をしていた。
 被告は,原告との間の婚姻期間中,無断外泊を繰り返していた。
 原告は,被告の不貞行為によって,被告との間の婚姻関係の破綻につき甚大な精神的苦痛を被った。原告が被った精神的苦痛を慰藉するには200万円を下ることはない。

【被告の主張】
 被告が不貞行為に及んでいたことは否認する。
 原告と被告の主たる離婚原因は,原告から性格の不一致と結婚観の違いといわれており,原告が勝手に離婚届を提出した。原告が早期の離婚を望んでいたことは,その後すぐに同僚の女性と婚姻届けを提出していることから,明らかである。

(2)性病を患ったことを申告しなかった不作為による不法行為の成否
【原告の主張】
 被告は,当時配偶者であった原告に対し,誠意をもって自身が性病にり患していることを告げ,その対策をとるべきであったにもかかわらず,これを隠匿するとともに,漫然と婚姻生活を継続した。
 被告の不作為による不法行為で,原告は性病検査を行い,その費用として3万0800円を負担せざるを得なかった。

【被告の主張】
 被告は,原告に対し,病気になったことを告げていた。

(3)扶養控除枠を超過したことを申告しなかった不作為による不法行為の成否
【原告の主張】
 被告は、原告との婚姻期間中,原告の扶養に入っていたが,平成28年度,被告の所得が扶養控除の要件を満たさないこととなったため,原告は2万2000円の追徴課税を受けた。
 上記追徴課税は,被告が原告に対し,自身の所得が扶養控除枠を超過したことを原告に申告していれば容易に回避できたのにこれを怠ったことによるものであり,不作為による不法行為といえる。 

【被告の主張】
 争う。
 追徴課税は,税法違反による罰金ではなく,原告がもともと払うべき税金額を払ったに過ぎないから,原告の損害とはいえない。

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)

 尖圭コンジローマの感染経路は,一般に,性交渉によるとされているところ(甲11から13),被告が陳述書(乙1)において言及するスーパー銭湯等の施設で利用客が感染することは,衛生管理上考え難く,被告が現に利用した施設の衛生管理が不十分であり他にり患した者が存在する等,被告の供述以外に施設での感染をうかがわせる証拠はない。

 よって,被告が尖圭コンジローマにり患した経路は性交渉であると推認され,原告が被告に感染させた事実がない以上,被告に性交渉を伴う不貞行為があったことが推認される。

 他方で,被告が原告に無断で外泊を繰り返していた,あるいは交際相手がいたことは,被告に関するSNSの投稿(甲3から8)のみから直ちに認定することはできない。本件で推認された不貞行為が原告と被告の婚姻関係の破綻の原因であるかは,本件で提出されている証拠のみからは,必ずしも明らかでなく,原告と被告の婚姻期間等本件で表れている諸事情を考慮すると,原告が被告の不貞行為により被った精神的苦痛は,20万円の限度で相当と認める


2 争点(2)
 被告は,カンジダ症や尖圭コンジローマを患っていた当時(前提事実(2)及び(3)),原告と婚姻関係にあり,原告との性交渉も想定されることから,原告に対し,これらにり患した事実を告げて,原告の感染を防止する信義則上の義務があったといえる。
 被告は,原告に対し,性病に感染したことを告げていた旨主張する。しかし,原告が,令和元年10月に検査を行っていること(甲9(枝番含む。))から,原告が被告と婚姻中,感染予防策を講じないまま性交渉を持ったことが推認され,他方で被告が原告に感染していた性病を告げていたことを裏付ける証拠の提出がないことから,被告の主張は採用できない。

 よって,被告は,原告に対し,上記不作為による不法行為に基づき,原告が負担を余儀なくされた検査費用相当の3万0800円(甲9)の損害賠償義務を負う。

3 争点(3)
 原告は,被告が,原告の扶養に入っている以上,被告自身の収入が扶養控除枠を超えた場合,原告にその旨申告すべき義務があると主張する。
 しかし,追徴課税は,原告が本来納めるべき税金であることは被告が指摘するとおりであるし,被告が原告の配偶者であることをもって,扶養家族に対して申告すべき法的義務があるとまでいえず,原告の主張は採用できない。

第4 結論
 以上によれば,原告の請求は,主文の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部 裁判官 吉田祈代

以上:3,711文字

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