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電話や手紙等による間接交流による面会交流を認めた家裁審判紹介

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令和 3年11月29日(月):初稿
○申立人夫からの未成年者らとの面接交流の申立てに対し、直接の交流は相当でなく、電話や手紙等による間接交流の実施を重ね、未成年者らの不安や葛藤を低減していくことが相当であるとされた令和2年9月18日奈良家裁審判(判時2495号88頁)を紹介します。

○別居後、相手方妻は、居所を明らかにせず、申立人父と未成年者らは一切面会交流をしておらず、特に長女は、もう申立人の話もしたくないし、聞きたくもないとして、拒否の態度をとっていると相手方妻は主張しています。

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主   文
1 相手方は、申立人に対し、本件審判が確定した日の属する月の翌月から令和4年3月まで、別紙面会交流実施要領のとおり、第391号事件未成年者及び第392号事件未成年者と面会交流させなければならない。
2 手続費用は各自の負担とする。

理   由

         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 一件記録によれば、次の事実が認められる。
(1)申立人(昭和52年×月×日生)と相手方(昭和53年×月×日生)は、平成20年3月×日に婚姻し、平成21年×月×日に長女を、平成23年×月×日に二女をそれぞれもうけたが、後記のとおり、令和元年8月22日、未成年者らの親権者をいずれも母である相手方と定め、調停離婚した。

(2)相手方は、平成29年7月10日、未成年者らを連れて、相手方と別居した。相手方は、同日以降、未成年者らと3人で生活し、離婚後も引き続き、未成年者らを監護養育している。

(3)相手方は、奈良家庭裁判所に対し、平成30年8月1日、申立人に婚姻費用の分担金の支払を求め、婚姻費用分担調停(同裁判所同年(家イ)第433号)と、申立人との離婚を求め、夫婦関係調整調停(同裁判所同年(家イ)第434号)をそれぞれ申し立て、上記各調停事件は、同月27日、併合された。

 申立人は、同裁判所に対し、平成30年2月11日、相手方との円満調整を求め、夫婦関係調整(円満)調停を申し立てたが(同裁判所同年(家イ)第54号)、同年10月30日、同調停を取り下げ、その後、同裁判所に対し、同年12月12日、相手方との離婚を求め、訴訟を提起したが(同裁判所(家ホ)第60号)、同事件は、令和元年4月18日、調停に付され(同裁判所同年(家イ)第304号)、同年8月22日、相手方が申し立てた上記各調停事件と併合された。
 上記併合された各調停事件につき、同日、未成年者らの親権者を母である相手方と定めて、調停離婚する旨など定める調停が成立し、上記併合された各調停事件は終了し、上記訴訟事件は当然終了した。

(4)申立人は、奈良家庭裁判所に対し、平成30年2月11日、当時妻であった相手方に申立人と未成年者らとを面会交流させることを求め、面会交流調停を申し立てたが(同裁判所同年(家イ)第52号、同第53号。以下「本件調停」という。)、同調停は、令和元年8月22日、不成立となり、本件審判手続に移行した。

(5)別居後の面会交流の状況
ア 申立人と相手方とが別居した後、相手方は、申立人に対し、相手方と未成年者らの住居所など、その所在先を開示したことはなく、申立人と未成年者らが直接の面会交流をしたことは一切ない。

イ 相手方は、申立人に対し、平成29年11月、同年12月及び平成30年1月の3回、未成年者らの手紙を送付したが、同年2月以降、申立人が、両当事者の各手続代理人弁護士を介し、未成年者らに対し、申立人の手紙の送付をしているが、相手方や未成年者らが、申立人に対し、未成年者らの手紙を送付したことはない。

ウ 申立人と未成年者らとは、未成年者らが相手方手続代理人の弁護士事務所を訪問し、同事務所で、同手続代理人の立会の下、平成30年8月、平成31年3月及び令和元年8月の3回、1人当たり10分程度、音声のみのスカイプ電話による面会交流をしたが、同年9月以降、実施されていない。

エ 本件審判手続において、当庁家庭裁判所調査官に命じた試行的面会交流は、未成年者らが実施当日に来庁を拒否したために実施されていない。

(6)申立人は、同居中、未成年者らに対して暴力は振るっていないと主張している。しかし、申立人は、未成年者らが、入浴しない、早く寝ない、朝起きない、学校に行かないなどの場面で、何度言ってもいうことを聞かないときや、長女が二女の目の周辺を叩くなど危険な行為をしたときに、未成年者らを叱るに際して、その太腿辺りを叩くことは認めており、それ以外の場所を叩いたり、蹴ったりしたことはないと述べている。

 申立人は、同居中の平成29年5月13日、相手方とけんかをした際、二女が誕生日にもらったコップを台所のシンクに投げつけて割ったことがある。

(7)相手方は、左メニエール病にり患するほか、婚姻中に夫である申立人からの暴言暴力があったとして、申立人に対して極度の恐怖心を抱いており、うつ病、心的外傷後ストレス障害の診断を受け、耳鼻科と心療内科に通院し、投薬治療を受けている。相手方は、申立人に関わることや一連の裁判手続を行うことに大きく負担を感じており、本件調停手続期日や調査期日の後に寝込むこともある。

(8)長女の状況
ア 長女は、平成21年×月×日生まれであり、小学5年生である。後記のとおり、自閉スペクトラム症等の診断を受けていることから、月2回、スクールカウンセラーの面談を受けるほか、発達障害の支援センターに派遣される児童精神科医の診察を受けているが、服薬はしていない。

イ 長女は、幼少時から養育に手がかかり、別居前から、ちょっとしたことで大泣きしてパニックになったり、二女に対して暴力を振るうことがあった。長女は、平成29年11月頃に自閉スペクトラム症と診断され、様々な環境の変化、予測と異なる展開、長女の思いや行動に対する否定的な関わりは、その特性のため、適応が難しく、大きなストレスとなる可能性があり、十分な配慮が必要であるとされた(同年12月27日付け診断書)。

その後、長女は、同居中の申立人の言動等が恐怖体験となって蓄積し、影響が続いているとして、自閉スペクトラム症のほかに、心的外傷後ストレス障害、被虐待児症候群、恐怖症性不安障害、社会不安障害、不登校(令和元年6月3日付け診断書、同年10月28日付け診断書、令和2年3月28日付け診断書)と診断され、さらに、これらに加えて、複雑性心的外傷後ストレス障害(令和2年6月27日付け診断書)と診断されている。

ウ 当庁家庭裁判所調査官が、本件調停手続において、長女と面接した結果は、大要、次のとおりである(平成30年12月13日受命分〔平成31年2月18日付け調査報告書〕)。
 申立人の同居中の言動について、長女は、夜に水を飲もうとリビングに行ったところ、申立人から、早く寝ないとして、足を蹴られたり、頬を拳で叩かれたことがあると述べ、また、申立人と相手方がけんかをした際、申立人が二女が誕生日にもらった食器を床に叩きつけて割るのを見て、家から逃げたいと思ったことがあると述べた。

 申立人や申立人との面会交流について、長女は、申立人とはちょっとずつ仲良くなりたいとし、電話で話すくらいならできるが、相手方が申立人と会いたくないと言っており、長女も会いたくはないと述べた。また、申立人の顔を見るのは怖く、声を聞くのが限界であり、テレビ電話も拒んだ、プレゼントを直接送られてくるのは無理と述べた。

エ 当庁家庭裁判所調査官が、本件審判手続において、長女と面接した結果は、大要、次のとおりである(令和元年10月9日受命分〔令和2年3月9日付け調査報告書〕)。
 申立人の同居中の言動について、長女は、暑くて眠れずリビングに行ったら、申立人から早く寝なさいと言われ、頬やお腹を叩かれたり、蹴られたりし、しんどい日も学校に行けと言われストレスだったと述べた。長女は、申立人が、同居の最後の頃からイライラして、本当に怖くなり、今は、誰もかれも怖くなり、初対面の人に見られる視線が怒っているように感じると述べた。

 申立人や申立人との面会交流について、長女は、申立人に恐怖心を抱いており、申立人に対して今は本心を言えないが、いつかなんでも言えるような関係になりたいと述べ、電話で話す際には、お互い遠慮があると述べた。なお、申立人に対する恐怖心については、相手方の方が大きいと思うと述べた。

長女は、申立人と直接の面会交流につき、申立人が会いたいというのに会えないのは申し訳ない気持ちになるが、申立人の顔を見るのが怖く、直接会うことはしんどいと述べ、直接会うように決められても、当日行けなくなることや、その度に申立人にすまなく思ったり、申立人が怒るかもしれないことが心配であると述べた。また、電話や手紙のやりとりについては、電話をいつでもかけてこられたり、申立人から聞かれたことに全部答えなければならなくなったり、会いたいと言われることは困ると述べ、他方、プレゼントをもらうことはうれしいと述べた。

オ 相手方は、長女の直近の状況について、次のとおり、陳述している。
 長女は、令和2年8月18日現在、日常的に外出することや対人に対する不安感が強く、不登校となり、外出が全くできないので、必要な通院や買い物ができない状態であるが、自宅では、好きなことを好きなタイミングで取組み、機嫌よくゆったりした生活をしている。

 長女は、相手方に対し、申立人との面会交流について、何もしたくない、電話もできない、電話するのだって1回1回怖く、1回だけかと思っていたが、ちがうじゃないか、電話を断ったら申立人が怒るし、申立人といつか会ってもいいというのは大人になってからの話だと言い、もう申立人の話もしたくないし、聞きたくもないとして、拒否の態度をとっている。

(9)二女の状況
ア 二女は、平成23年×月×日生まれであり、小学3年生である。

イ 二女には、格別の発達特性は見当たらない。


         (中略)

オ 相手方は、二女の直近の状況について、申立人との面会交流について、面会の話をするのも嫌がるのでできない状態であると陳述している。

2 上記1の事実に基づき、申立人と未成年者らとの面会交流の時期、方法などにつき検討する。
(1)上記1に認められる未成年者らの状況やきょうだい間の関係性に照らすと、申立人と未成年者らの面会交流の時期、方法などにつき定めるに当たっては、未成年者らで同じ内容の実施要領を定めるのが相当であり、さらに、長女が令和4年3月には小学校を卒業し、翌4月には中学校に進学することにより、その生活状況や環境が大きく変化することが見込まれることに照らすと、申立人と未成年者らとの面会交流につき、当面、同年3月までの実施要領を定めるのが相当である。

(2)直接の交流について
 上記1の事実によれば、長女は、同居中の申立人の言動に恐怖心を抱いていることや,直接の交流では、その場で申立人に叱責されたり、その末に暴力を振るわれるかもしれないとまでの不安を有していることが認められ、さらに、母である相手方が、離婚後も申立人に恐怖心を抱く姿を見て、ますます不安を強めており、長女の発達特性から、非常に強い恐怖心や不安感を抱くに至っていることが認められる。

そして、二女についても、直接の交流には拒否的であり、長女と一緒でなければ無理と述べているところであって、このような状況にある未成年者らについて、令和4年3月までの期間内に直接の交流の実施を開始するのは相当でなく、まずは、電話、手紙等による間接交流の実施を重ね、未成年者らの不安や葛藤を低減していくのが相当である。


(3)電話による交流について
 上記1の事実によれば、未成年者らの直近の心情は、申立人との電話での交流についても消極的であると認めざるを得ないものの、従前は電話による交流自体はできていたのであって、未成年者らは、同交流を通じて、申立人が同居中とは異なる対応をしていることを現に認識できていたのであるから、少なくとも音声のみの電話による交流は実施していくのが相当である。一方で、かような未成年者らの心情を考慮すると、その頻度については、毎月とするのは、未成年者らに負担が大きいといえ、別紙面会交流実施要領のとおり、年3回、春、夏、冬の各長期休みに1回ずつ実施することとし、時間については、1人当たり20分ずつとするのが相当である。

そして、これを実施するために、相手方は、電話による交流実施日の前月20日までに、開始時刻及び方法(申立人が架電する電話番号)を申立人に通知することとし、また、長女が体調不良等の事情により、交流できない場合であっても、二女のみの電話による交流はなされるよう配慮するのが相当である。 

(4)上記(2)及び(3)に対し、申立人は、月1回、1人当たり30分ずつの電話による交流を即時に開始し、翌月にはテレビ電話による交流とし、翌々月にはこれと共に直接の交流を開始すべきとするが、未成年者らの状況に照らし、直接交流の実施を目指して、拙速に実施方法を拡充させることは、音声のみの電話による交流すらも困難とすることが予測され、少なくとも当面の間、申立人の意向のとおりの頻度や方法による段階的な面会交流の実施を命じるのは相当とはいえない。

 他方、相手方は、音声のみの電話による交流の実施すら、現在は困難であるとするが、従前、行われた音声のみの電話による交流の際には、申立人が未成年者らを不安にさせる言動をした形跡はなく、電話により申立人と未成年者らとが直接会話することは、未成年者らにとっても、申立人の態度や様子を直接把握し、抽象的な不安を取り除く貴重な機会となり得るともいえる。

そうすると、その頻度を年3回の長期休みに限っていることにも照らし、相手方において、従前どおり、架電先として相手方手続代理人事務所の電話番号を通知するなどの配慮をして、未成年者らの状況や心情に応じて、同人らに丁寧に働きかけていくことが、相手方にも最低限期待されているといわざるを得ず、電話による交流の実施までも制限することは相当ではない。

(5)手紙や贈物等の送付について
 上記1の事実によれば、申立人からの手紙や贈物は、従前、未成年者らに交付され、未成年者らもこれを読んだり、受け取っているところ、今後も引き続き、申立人と未成年者らとは、手紙等をやり取りすることができ、相手方はこれに協力するのが相当である。そして、未成年者らにとっても送付の予測を可能とするため、手紙については、その頻度を2か月に1回とし、贈物については、その機会をクリスマス及び未成年者らの各誕生日とするのが相当であり、これを実施するために、相手方は、本審判確定の日から14日以内に手紙等の送付先を申立人に通知するのが相当である。

 さらに、相手方においては、今後、申立人から送付された手紙等を未成年者らに速やかに交付するだけでなく、未成年者らに対し、申立人に宛てた手紙を作成するよう促し、未成年者らが申立人に宛てた手紙を作成した際は、速やかに申立人に送付することが相当であって、上記各送付にかかる費用は、当事者双方の各自負担とするのが相当である。

(6)写真等の交付について
 上記(2)ないし(5)によれば、申立人と未成年者らの面会交流は、主には、年3回の電話、2か月に1回の手紙の送付等となるから、これを補うべく、相手方において、申立人に対し、毎月1回、毎月末日限り、未成年者らの写真各一葉を、毎年1回、毎年3月末日限り、未成年者らの通知表の写しをそれぞれ相手方の費用負担により送付するのが相当である。

(7)なお、未成年者らの状況や心情は、上記(2)、(3)、(5)及び(6)のとおりの面会交流を経るなどして、今後変わり得ることから、当事者双方が協議により合意したときは、別紙面会交流実施要領の各項の定めを変更することができることとし、さらに、令和4年4月以降の面会交流については、当事者間で誠実に協議することが相当である。

3 よって、主文のとおり審判する。
(裁判官 永谷幸恵)

別紙 面会交流実施要領
1 申立人は、次の内容で、未成年者らと年3回音声のみの電話による面会交流を行うことができる。
(1)春休み中 3月最後の日曜日(代替日は4月最初の日曜日)
   夏休み中 7月最後の日曜日(代替日は8月最初の日曜日)
   冬休み中 12月最後の日曜日(代替日は1月最初の日曜日)
(2)交流時間は、1人当たり20分とする。
(3)相手方は、電話による交流実施日の前月20日までに、開始時刻及び方法(申立人が架電する電話番号)を申立人に通知する。
(4)長女が体調不良等の事情により、交流できない際は、二女のみ交流する。

2 申立人は、次の内容で、未成年者らと手紙等をやり取りすることができ、相手方はこれに協力する。
(1)申立人は、相手方に対し、2か月に1回、未成年者ら各自に宛てた手紙を送付することができる。
(2)申立人は、クリスマス及び未成年者らの各誕生日に未成年者ら各自に宛てた贈物を送付することができる。
(3)相手方は、本審判確定の日から14日以内に手紙等の送付先を申立人に通知する。
(4)相手方は、未成年者らに対し、申立人から送付された手紙等を速やかに未成年者らに交付し、未成年者らが申立人に宛てた手紙を作成するよう促す。未成年者らが申立人に宛てた手紙を作成した際は、速やかに申立人に送付する。
(5)送付費用は、各自の負担とする。

3 相手方は、申立人に対し、毎月1回、毎月末日限り、未成年者らの写真各一葉を、毎年1回、毎年3月末日限り、未成年者らの通知表の写しをそれぞれ送付する。送付費用は相手方の負担とする。

4 当事者双方が協議により同意したときは、上記各項の定めを変更することができる。

5 当事者双方は、令和4年4月以降の面会交流について、当事者間で誠実に協議するものとする。
以上
以上:7,364文字

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