令和 3年 6月 4日(金):初稿 |
○債権者(おそらく父)と債務者(おそらく母)とは、婚姻して未成年者をもうけたが、その後別居し、債権者父が未成年者との面会交流を求める調停を申し立て、審判手続に移行したのち、名古屋高等裁判所において面会交流要領を定めたうえで確定しました。 ○しかし、債権者父が、本件要領に基づく面会交流ができていないとして、債権者を、未成年者と面会交流させなければならない旨、また、債務者が、本決定が確定した日以降、前項の義務を履行しないときは、債務者は、債権者に対し、不履行1回につき10万円を支払うことを求めました。 ○これに対し、本件における抗告審変更により変更された原審面会交流要領において、面会方法等は具体的に定められているものの、各回の開始時間などは特定されておらず、債務者がすべき給付の内容の特定に欠けているというべきであり、間接強制によりその履行を強制することができないとして、本件申立てを却下した令和2年1月9日名古屋家裁決定(判タ1482号94頁)を紹介します。 ○給付内容の特定が欠けるという面会交流要領の中身を知りたいのですが、省略されていて不明です。この決定は、抗告審名古屋高裁でも維持されていますが、名古屋高裁の決定内容を見ると未成年者が債権者との面会交流を拒否しているようです。 ********************************************* 主 文 1 本件申立てを却下する。 2 手続費用は申立人の負担とする。 理 由 第1 申立ての趣旨 1 債務者は,債権者と債務者間の名古屋高等裁判所平成28年(ラ)第224号面会交流審判に対する即時抗告事件(原審・名古屋家庭裁判所平成28年(家)第685号)において,平成28年10月26日に決定された執行力ある決定正本に基づき,本決定が確定した日の属する月から,別紙1「面会交流要領」のとおり,債権者を,未成年者と面会交流させなければならない。 2 債務者が,本決定が確定した日以降,前項の義務を履行しないときは,債務者は,債権者に対し,不履行1回につき10万円を支払え。 第2 当裁判所の判断 1 本件記録によれば,以下の事実を認めることができる。 (1)債権者と債務者とは、平成15年11月1日に婚姻し,未成年者をもうけたが,その後別居した。 (2)債権者は,名古屋家庭裁判所に未成年者との面会交流を求める調停を申し立て,同調停は不成立となり審判手続に移行した。名古屋家庭裁判所は,平成28年6月3日,債権者と未成年者の面会交流について別紙2「面会交流要領」(ただし,「申立人」とあるのは「債権者」と,「相手方」とあるのは「債務者」と読み替える。以下「原審面会交流要領」という。)のとおりとする審判をした(平成28年(家)第685号)。債権者は,これを不服として,名古屋高等裁判所に抗告した。 (3)名古屋高等裁判所は,平成28年10月26日,名古屋家庭裁判所の審判を,別紙3「原審判別紙1「面会交流要領」の変更箇所について」(ただし,「相手方」とあるのは「債務者」と読み替える。以下「抗告審変更」という。)のとおり一部変更する決定をし,同決定は債務者に対し同日送達され,確定した。 (4)債権者は,平成30年7月29日以降,名古屋高等裁判所の決定に基づく未成年者との面会交流ができていないとして,本件申立てをした。 2 給付を命ずる審判及びこれに対する抗告審の決定(以下「審判等」という。)は,執行力のある債務名義と同一の効力を有するところ(家事事件手続法75条,93条),別居親と未成年者との間の面会交流について定めた審判等で,同居親の作為又は不作為の給付を内容とするものも,性質上,間接強制をすることができる。しかし,当該審判等が,同居親がすべき給付の特定に欠ける場合には,間接強制をすることはできないというべきである。 3 抗告審変更により変更された原審面会交流要領(その内容は,別紙1と同一であると認められる。)は,面会交流の日,各回の面会交流時間,未成年者の引渡しの方法等は具体的に定められているものの,各回の開始時間,すなわち,債務者が未成年者を債権者に引渡す具体的な時間は特定されていないから,債務者がすべき給付の内容の特定に欠けるといえる。したがって,間接強制により,その履行を強制することができない。 債権者が指摘する最高裁判所決定(平成25年3月28日最高裁判所第1小法廷決定。平成24年(許)第41号間接強制決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件)は,本件と事案を異にする。 よって,主文のとおり決定する。 別紙 1 面会交流要領〈省略〉 2 面会交流要領〈省略〉 3 原審判別紙1「面会交流要領」の変更箇所について〈省略〉 以上:1,954文字
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