令和 3年 3月 5日(金):初稿 |
○私が弁護士になった41年前は家事事件の規定法律は家事審判法でしたが、家事審判法は司法試験科目にはなく殆ど不勉強のままでした。家事紛争に関する法律はさらに(旧)人事訴訟法もありましたが、これも司法試験科目になく殆ど不勉強でした。(旧)人事訴訟法については、平成15年に廃止され、新たな人事訴訟法が制定され、家事審判法も平成23年に家事事件手続法の制定により、平成25年から廃止されました。 ○弁護士を41年やってきましたが、取扱事件は圧倒的に地方裁判所管轄の民事訴訟事件が多く、家庭裁判所管轄の家事事件は、殆どが調停で解決し、離婚事件については、(旧)人事訴訟法時代は調停不調により民事事件として地裁に離婚訴訟を提起していましたので、家裁での事件は殆どが調停止まりで家裁での審判事件までに及んだ事件は数えるほどでした。 ○そのため廃止された家事審判法での審判手続については殆ど勉強する機会がありませんでした。しかし、新人事訴訟法・家事事件手続法の制定で、家事事件については、調停から含めてこの2つの法律によって規定されますのでシッカリ勉強することが必要です。法務省民事局作成家事事件手続法概要テキスト資料です。 ********************************************* 見直しの観点 家庭をめぐる紛争を扱う訴訟手続については,平成15年に人事訴訟法が制定され,現代化が図られたところであるので, 同様に家庭をめぐる紛争を扱う非訟手続について規律する家事審判法(昭和22年制定)についても,非訟事件手続法の現代化のための改正と併せて,当事者の手続保障を図るための制度を拡充するなど現代的社会に適合した内容とする。施行期日は平成25年1月1日 法律の要点 ○当事者等の手続保障を図るための制度の拡充 既存の参加制度では, 参加人の権限等が不明確→参加制度の見直しにより,参加人の権限等を明確にし,利害を有する者が手続主体として主張立証することが可能に(第41条,第42条) 記録の閲覧等をすることができる場合が不明確→当事者が記録を閲覧等することができない場合を明確にすることで,記録の閲覧等が容易に(第47条) 主張・立証の期限や審判がされる日が不明確→一定の事件については,予め,主張・立証の期限及び審判の日を定めることで,当事者の予測可能性を確保(第71条,第72条) ○手続を利用しやすくするための制度の創設 遠隔地に居住している者が裁判所に出頭する場合の負担大→電話会議・テレビ会議システムの導入により手続の利用が容易に(第54条) 調停を成立させる方法が限られている→高等裁判所における調停制度(第274条),電話会議システム等を利用した調停制度(第258条)を創設するなど調停を成立させる方法を多様に ○そのほか,管轄(第4条-第9条等)・代理(第22条-第27条等)・不服申立て(第85条-第102条等)等の手続の基本に関する規定を整備 家事事件手続法のあらましQ&A Qどのようなことを定めた法律なのですか。 A家事事件手続法とは,家事事件の手続について定めた法律です。 ここで,家事事件について簡単に説明しておきましょう。家事事件とは,夫婦間の紛争や成年後見など家庭に関する事件のことをいい,大きく分けると,家事審判に関する事件と家事調停に関する事件とに分かれます。家事審判というのは,裁判官が様々な資料に基づいて判断し決定する手続です。一方,家事調停というのは,裁判官1人と調停委員2人以上で構成される調停委員会が,当事者双方から言い分を十分に聴きながら,合意による円満な解決を目指す手続です。 Qどうして,家事事件手続法が制定されたのですか。 Aこれまで家事事件の手続については家事審判法という法律が定めていたのですが,この法律は,昭和22年に制定された後,60年以上の間,大きな改正がされていませんでした。しかし,この間,我が国の家族をめぐる状況や国民の法意識は大きく変化し,当事者等が手続に主体的に関わるための機会を保障することが重要となってきましたから,家事事件の手続についても,法律の内容を見直し,国民に利用しやすく,現代社会に適合した内容とする必要があったのです。 Qどのような点が見直されたのですか。 Aポイントは主に次の3つです。 ①当事者等の手続保障を図るための制度を充実させたこと ②家事事件の手続を,国民にとって,より利用しやすいものとしたこと ③手続の基本的事項を整備したこと 新しくできた制度 Q家事事件手続法で,新しくできた制度があれば教えてください。 A代表的なものをいくつかご紹介します。 申立書の写しの送付 まず,相手方のある事件では,家庭裁判所は原則として,申立書の写しを事件の相手方に送付しなければならないこととされました。申立書の写しを受け取った相手方が,申立ての内容をよく把握した上で,自分の言い分を考えたり,証拠資料を準備したりすることができるようにするためです。 記録の閲覧謄写 また,家事審判事件では,当事者から請求があった場合には,事件の記録の閲覧謄写(記録を見たりコピーしたりすること)を原則として許可することとされました。事件に関係する人のプライバシー等に配慮する必要がありますので,閲覧謄写が許可されない場合もありますが,それらの例外も法律に明確に規定されています。 審判の結果により影響を受ける者の手続保障 さらに,事件の当事者以外の「審判の結果により影響を受ける者」のうち一定の者について,その陳述を聴かなければならない場合を明記するなど,手続保障に関する規定を充実させました。特に,子どもが影響を受ける事件では,子どもの意思を把握するように努め,これを考慮しなければならないとされました。 Q電話やテレビを利用した手続も可能になったと聞いたのですが。 A当事者が遠隔地に居住しているとき等には,当事者の意見を聴いた上で,電話会議システム又はテレビ会議システムを利用して手続を行うことができるようになりました。これによって,当事者の出頭の負担を軽減することができますね。 ただし,これらのシステムを利用して,離婚や離縁の調停を成立させることはできません。離婚や離縁は重大な身分関係の変更ですから,調停が成立する日には,裁判所に出頭していただく必要があるのです。 おわりに Q家事審判や家事調停の手続について,もっと詳しく知りたいときに,問い合わせができる窓口などはありますか。 A全国の家庭裁判所では,家事手続案内を行っています。家事事件の申立てをお考えになっている方は,お近くの家庭裁判所にお立ち寄りください。 また,裁判所ウェブサイトにも,手続の説明や申立書の書式などが掲載されていますので,ご覧ください。 以上:2,767文字
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