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別居父から同居母への子の面会交流申立に直交流を認めた高裁決定紹介

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令和 2年 8月26日(水):初稿
○「別居父から同居母への子の面会交流申立に間接交流のみ認めた家裁審判紹介」の続きで、その抗告審令和元年11月8日大阪高裁決定(判時2447号○頁)全文を紹介します。

○原審令和元年7月19日神戸家裁審判(ウエストロージャパン)では、同居親母は別居親父に不信感を募らせ、主治医から,心身の不調を来す原因となる父との接触を避けることが望ましいと診断されたことなどから直接交流は認められませんでした。

○大阪高裁は、長女は,抗告人父に会いたいと思う一方,相手方母の心中を慮って会うことを躊躇するという忠誠葛藤に陥っており,この状態が続けば,長女に過度の精神的負担を強いることになり、抗告人父と未成年者らの直接交流を速やかに再開することが未成年者らの福祉に適うと認めるのが相当であるとして、直接交流を認めました。

○原審は、母の父に対する不信感と、長女の母を思う心情を考慮して、直接交流は認めませんでしたが、抗告審は、長女の心情をより踏み込んで、この状態が続けば長女に過度の精神的負担を強いることになり、母の心情より子の福祉を優先して直接交流を認めています。別紙面会交流実施要領掲載が省略されているのが残念です。

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主   文
1 原審判を次のとおり変更する。
2 当事者間の神戸家庭裁判所平成27年(家イ)第259号夫婦関係調整調停事件について平成27年9月4日に成立した調停の調停条項中,抗告人と未成年者らの面会交流に関する調停条項5項を次のとおり変更する。
3 相手方は,抗告人に対し,本決定が確定した日の属する月の翌月以降,別紙面会交流実施要領記載の要領により,未成年者と面会交流させよ。
4 手続費用は,原審及び当審とも各自の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

 別紙即時抗告申立書,抗告理由書及び第1主張書面(各写し)のとおり

第2 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原審判を上記のとおり変更するのが相当であると判断する。その理由は,次のとおり補正するほかは,原審判の理由説示のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原審判3頁13行目の「方法」の次に「等の具体的な内容」を,21行目の「E」の次に「へ」をそれぞれ加え,同行の「親族」を「弟」と,4頁2行目から3行目にかけての「その約1週間後」を「同月21日」とそれぞれ改め,6行目の「日常生活において」の次に「,部屋の隅で泣いたり,」を加え,同行の「起きたりして,」を「起きたりするなど精神的に不安定な状態になり,その影響もあってか,」と改め,7行目末尾に「未成年者らは,このような相手方の様子を見て心配し,抗告人にその責任があると思うようになった。」を加える。

(2) 同5頁12行目から6頁8行目の「(イ)」まで,同頁15行目から7頁7行目まで,15行目の「(ア)」,22行目から末行までをそれぞれ削除する。

(3) 同8頁5行目末尾に改行して次のとおり加え,6行目の「審問期日」を「審判期日」と訂正する。
「 抗告人は,当審において,次のとおりの要領で抗告人と未成年者らの面会交流を実施すべきであると主張する(以下「抗告人主張実施要領」という。)。
ア 面会交流の頻度,日時,時間
 月1回 毎月第3土曜日の午前10時から午後5時まで

イ 未成年者らの受渡場所
 F中央改札口付近

ウ 未成年者らの受渡方法
(ア) 相手方は,上記アの面会交流開始時に,上記イの場所において,抗告人に対し,未成年者らを引き渡す。
(イ) 抗告人は,上記アの面会交流終了時に,上記イの場所において,相手方に対し,未成年者らを引き渡す。

エ 代替日
 未成年者らの病気等,やむを得ない事情により上記アの面会交流を実施できない場合は,翌月の第1土曜日の午前10時から午後5時に実施する。

オ 学校行事への参列
 相手方は,抗告人が未成年者らの入学式,卒業式,運動会,学芸会,学習発表会,文化祭等の学校行事に参列することを妨げてはならない。」

(4) 同9頁12行目の「はあるが,特に,」を「があり,抗告人と会いたいと望んでいるものの,」と改め,16行目から10頁6行目までを次のとおり改める。
「(3) 抗告人と未成年者らの従前の父子関係は良好であり,平成30年6月末ころまでは,宿泊はもとより2回にわたり家族で一緒にG旅行に出掛けるなど,本件実施要領に捉われずに柔軟かつ円滑に抗告人と未成年者らの直接交流が行われていたのである。その際,抗告人が未成年者らに対して不適切な言動に及んだことも窺われない。そして,未成年者らは,現在も抗告人を慕い,直接交流の再開を望んでいる。このような事情を考慮すると,直接交流を禁止すべき事由は見当たらない。長女は,抗告人に会いたいと思う一方,相手方の心中を慮って会うことを躊躇するという忠誠葛藤に陥っており,この状態が続けば,長女に過度の精神的負担を強いることになる。したがって,抗告人と未成年者らの直接交流を速やかに再開することが未成年者らの福祉に適うと認めるのが相当である。

 相手方は,心身の不調を理由に間接交流に止めるべきであると主張する。しかし,相手方は,同年9月には復職できるまでに回復しているのであるから,直接交流に応じることによって健康状態が悪化し,未成年者らの監護に支障を来たしたり,未成年者らに不安を与えたりする状態に至るとは考えられない。また,相手方は,抗告人との接触を避けることが望ましいと診断されているが,未成年者らの年齢(9歳,6歳)や発達状況からすると,当事者のいずれかの目が届く範囲の短距離であれば,受渡場所まで未成年者らだけで歩いて行くことは可能であるから,相手方と抗告人が直接対面することなく未成年者らの受渡しができないわけではない。したがって,相手方の心身の不調は,直接交流を禁止,制限すべき事由にはならない。相手方の主張は採用できない。

(4) もっとも,相手方の抗告人に対する感情的反発が強い現状では,当事者間で事前に面会交流の内容を協議することは困難であるから,本件実施要領を変更し,面会交流の内容を具体的に定める必要がある。その内容としては,抗告人主張実施要領に特段不適切な点もみられないので,概ねこれに従い,別紙面会交流実施要領のとおり定めるのが相当である。ただし,学校行事への参列については,従前の実績が明らかでなく,未成年者らの意向も確認されていないので,現段階で実施要領に盛り込むのは相当ではない。

2 よって,上記判断に抵触する限度で原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。
 大阪高等裁判所第9民事部 (裁判長裁判官 松田亨 裁判官 上田日出子 裁判官 惣脇美奈子)

 〈以下省略〉
以上:2,773文字

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