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同居9年別居44年後離婚でも年金按分割合を0.5とした高裁決定紹介

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令和 2年 7月15日(水):初稿
○抗告人と相手方は,昭和49年に婚姻後約9年間同居した後別居し,婚姻から約44年後に離婚したとの事実関係の下,原審令和元年5月9日大津家裁高島出張所審判は,婚姻期間に比して同居期間が短く,年金の保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような特別の事情があるとして,按分割合を0.35としました。

○これに対し、夫婦の扶助義務は別居した場合も基本的に異ならず,老後のための所得保障についても同等に形成されるべきであり,本件では,上記特別の事情があるとはいえないとして,按分割合を0.5とすべきとして原審判を変更した令和元年8月21日大阪高裁決定(判時2443号○頁)全文を紹介します。

○財産分与は、別居時の財産を基準として定め、別居後取得した財産は、財産分与の対象にならないのが原則です。年金分割も、年金積立額についての財産分与の一つ考えれば原審の判断の方が妥当と思います。しかし、年金分割に関しては、夫婦間の扶養義務の履行と考えるべきと抗告審は考えているようです。原審の判断理由の方が興味深いのですが、現時点では判例データベースには掲載されていません。

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主   文
1 原審判を次のとおり変更する。
2 抗告人と相手方との間の別紙1記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定める。
3 手続費用は,第1,2審を通じ,各自の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣

 主文と同旨

第2 事案の概要
1 事案の要旨

 本件は,平成30年7月2日に相手方と離婚した抗告人が,別紙記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合(以下「本件按分割合」という。)を0.5と定めることを求める事案である。
 原審は,令和元年5月9日,本件按分割合を0.35と定める旨の審判をしたところ,抗告人が,これを不服として,即時抗告をした。

2 抗告理由
 別紙2「抗告状」の「抗告の理由」に記載のとおり。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,本件按分割合を0.5と定めるのが相当であると判断する。
 その理由は,以下のとおり原審判を補正し,後記2で抗告理由に対する判断を付加するほかは,原審判「理由」中の「第2 当裁判所の判断」の1及び2のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原審判2頁11行目末尾を改行の上,次のとおり加える。
「(6) 抗告人と相手方の離婚成立日,第1号改定者及び第2号改定者の別,対象期間及び按分割合の範囲等は,別紙1のとおりである。」
 (2) 原審判2頁22行目冒頭から3頁7行目末尾までを次のとおり改める。
「 そこで,上記特別の事情の有無について検討すると,前記認定のとおり,抗告人と相手方の婚姻期間44年間中,同居期間は9年間程度にすぎないものの,夫婦は互いに扶助義務を負っているのであり(民法752条),このことは,夫婦が別居した場合においても基本的に異なるものではなく,老後のための所得保障についても,夫婦の一方又は双方の収入によって,同等に形成されるべきものである。この点に,一件記録によっても,抗告人と相手方が別居するに至ったことや別居期間が長期間に及んだことについて,抗告人に主たる責任があるとまでは認められないことなどを併せ考慮すれば,別居期間が上記のとおり長期間に及んでいることをしん酌しても,上記特別の事情があるということはできない。

 そうすると,対象期間中の保険料納付に対する抗告人と相手方の寄与の程度は,同等とみるべきであるから,本件按分割合を0.5と定めることとする。


2 抗告理由に対する判断は,上記のとおり原審判を補正,引用して判断したとおりであり,本件抗告には理由がある。

3 以上の次第で,上記判断と異なる原審判を主文のとおり変更することとする。
 よって,主文のとおり決定する。
 大阪高等裁判所第10民事部 (裁判長裁判官 志田原信三 裁判官 濱谷由紀 裁判官 中村昭子)
以上:1,657文字

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