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複数の結果発生地がある場合の不法行為準拠法を判断した高裁判決紹介

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令和 2年 6月27日(土):初稿
○「ニューヨーク州のN.Y.Civil Rights ACT80a全文紹介」でニューヨーク州では「不貞行為により第三者が婚姻関係を侵害する不法行為(alienation of affection)を原因とする金銭的損害賠償請求権は廃止され,同州内で行われた当該行為を原因として州内及び州外で訴えを提起することが禁じられている」と説明していました。要するに日本国内では、彼方此方で、頻発し、弁護士収入の大きなタネになっているている不貞行為第三者責任追及訴訟は、ニューヨーク州では認められません。

○そのニューヨーク州で、日本人同士が不貞行為当事者となった事件で、日本人の妻が、夫の不貞行為相手方に損害賠償請求をしたところ、一審平成30年10月30日横浜地裁判決は、日本人妻としての権利侵害,婚姻共同生活平和維持の法的利益の侵害という結果発生地はニューヨーク州であり、準拠法は同州法となるので請求は認められないとしました。

○これに対し、不貞行為は日本帰国後も続いていたことを理由に日本法の適用を認めて損害賠償請求を認めた令和元年9月25日東京高裁判決(判タ1470号75頁)概要を紹介します。
事案概要は以下の通りです。

・妻であるXと夫であるY1は平成15年に婚姻、平成21年までに3人の子をもうけ、Y1は日本国内で公務員として勤務し,Xは専業主婦
・Y1は,約3年の予定で米国NY州に海外勤務となり,平成25年3月に家族全員でNY州に引っ越、
・平成25年10月頃にはY1の勤務先の同僚女性Y2(日本国籍・米国永住権あり)とY1との間の不貞関係がNY州で始まり,Y2は,Y1から,Y1の家族関係などを知らされた
・同年末にはY1がY2の住居で寝泊まりするのを常とするようになり,XはY1からY2がY1の子を懐妊したことを告げられ、平成26年9月にはY2がY1の子を出産
・平成27年にはXがY1を相手方としてNY州の裁判所に短期保護命令や養育費支払調停の申立
・Y1の米国勤務が平成27年12月に終了することが決まると,YらはYらの子と3人で日本で同居することを選択して日本国内での住居を確保
・Y1は,Xと子3名の日本国内での住居は確保せず,婚姻費用(生活費)の任意の送金も一切せず、Xと子3名は,Y1から悪意の遺棄を受けたような状態になり,帰国後は日本国内のXの実家に身を寄せた
・不貞行為の期間は,NY州が約2年3箇月,日本が約3年6箇月
・第1審判決は、第1審判決は,不法行為の準拠法を結果発生地法とし、複数の結果発生地がある場合については判断を示さず、XとY1との婚姻関係破綻の時期がNY州滞在中の平成27年8月であり,Xの妻としての権利侵害,婚姻共同生活平和維持の法的利益の侵害という結果発生地はNY州であるから,準拠法はNY州法であると判断し、Xの請求棄却


○Xが控訴し、控訴審令和元年9月25日東京高裁判決は、本件は,NY州と日本において行われた一連の一個の不法行為であり,複数の結果発生地がある場合であると判断し、複数の結果発生地がある場合における不法行為の準拠法は,最も重要な結果が発生した地の法であるし、日本法が適用されると判断しました。

○その上で,本件においては,
XとY1一家の夫婦共同生活は基本的には日本で営まれており米国勤務は一時的なものにすぎなかったこと,
不貞行為はNY州で終了せずに切れ目なく日本において継続されたこと,
Xと子ら3名はNY州では不十分ながらもY1から衣食住の提供を受けていたが,日本帰国時には悪意で遺棄されたも同然の扱いを受けたこと,
Y2は交際開始時にY1の家族関係や米国赴任の事情を知らされていたこと,
Y2も不貞行為をNY州で終了させずにY1及び子と同居して日本国内においても不貞行為を継続したこと,
XとY1の婚姻関係が不貞行為開始前に破綻していたことや離婚の約束があったことを認めるに足りる証拠はなく,Y2がY1の離婚の約束の説明を真に受けたことには過失があること
などの事情があり,不貞行為期間がNY州約2年3箇月,日本約3年6箇月であることなどを考慮して、Yらに330万円の支払を命じました。
以上:1,706文字

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