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脊髄小脳変成症の妻について婚姻破綻を認めて離婚認容した地裁判決紹介

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令和 2年 6月21日(日):初稿
○「婚姻破綻が認定されて離婚請求が認められる要件復習1」の続きで、裁判例の紹介です。

○被告妻が国の特定疾患である病気(脊髄小脳変成症)に罹患しており、その結果身体の平衡が保てず、真っ直ぐ歩けない、階段を上手に降りられない、物を正しく運べず物を持てないなどの症状を呈し、さらに言語障害や視覚障害などもあって、家事労働を行うことは困難であり、夫婦として暮らしていくことはできないから、両者間の婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、原告夫からの離婚請求を認容した平成2年4月23日津地裁四日市支部判決(判時1398号76頁)全文を紹介します。

○妻の脊髄小脳変成症という特定疾患である病気を考慮すると、妻が離婚を強く拒否しているのに、離婚を認めるのは気の毒な気もしますが、扶養的財産分与等お金の問題として解決したいところです。一審地裁(家裁)が離婚を認めても控訴審の高裁がこれを取り消す例が多く、本件も平成3年5月30日名古屋高裁は、折角、一審地裁が認めた離婚認容判決を取り消しており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
一 原告と被告を離婚する。
二 原被告間の長男一郎(昭和50年9月19日生)と長女春子(昭和53年11月30日生)の親権者を原告と指定する。
三 訴訟費用は被告の負担とする。

事   実
第一 当事者の求めた裁判

一 請求の趣旨
主文同旨

二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二 当事者の主張
一 請求原因

1 原告と被告は、昭和47年12月5日に婚姻の届出をした夫婦であり、原被告間には長男一郎と長女春子の二人の子供がいる。

2 原告は、被告との結婚後、喫茶店「CC」を開業し、被告もこの手伝いをしてきたが、
被告は、朝起きるのが遅く、炊事や掃除等家事仕事をほとんどしないので、原告が注意をすると、被告はふてくされて部屋に閉じこもり、よけいに何もしない始末であった。

3 昭和50年には長男が、昭和53年には長女が誕生したので、原告は、被告の態度が少しは変わるのではないかと期待したが、被告は、あいかわらず朝起きるのが遅く、朝食を作らない日が多かった。

4 また、昭和56年には、長男が小学校へ入学することもあって、被告は原告に、居宅の増築をしてほしい、増築してもらったら、朝も早く起きるし、食事の用意や掃除洗濯などの家事仕事をきちんとするといったので、原告は、居宅の増築工事をしたが、被告の生活態度は変わらず、小学校へ入った子供の朝食の準備もしなければ、見送りもしないという日が度々あった。

5 さらに、被告は、子供に学校の用事を頼まれて、その時はよい返事をしておきながら、当日になると、そんな話は聞いていなかったといって子供との約束を平気で破り、子供に当たり散らすので、子供らは被告の顔色をうかがいながらの生活が続いた。
 このため、原告は、被告との離婚を何度となく考えたが、子供らのことを考えて我慢を続けてきた。

6 ところが、被告は、昭和60年ころから、異常な話し方や動作をすることが目立ち出し、それが徐々にひどくなっていくので、原告は、被告の両親らとも相談して、昭和62年2月に、被告を病院へ連れていって診察してもらうことになったが、被告はこれを頑強に拒否した。
 このため、原告は被告を、3日ほどかけて説得し、DF市民病院へ連れていって診察させたところ、被告は脊髄小脳変成症(以下では「本症」という。)と診断された。
 よって、原告は、民法770条1項五号により被告との離婚を求めるとともに、二名の子の親権者を原告と指定するよう求める。

二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実のうち、喫茶店を開業した点は認め、その余は否認する。
3 同3の事実は否認する。
4 同4の事実は否認する。
5 同5の事実は否認する。
6 同6の事実のうち、被告の病名は認め、その余は否認する。

第三 証拠(省略)

理   由
一 請求原因1の事実は、本件記録上明らかである。

二 請求原因2ないし5の各事実のうち、被告の言動については、原告はこれに沿う供述をするが、被告のこれと反対趣旨の供述に照らしてたやすく措信できず、他にこれを認めるに足る証拠はない。

三 本症について
1 (証拠省略)によれば、以下の事実が認められる。
(一) 被告は、昭和59年ころ、階段を登る際にうまく登れないと感じたことがあり、その後、原被告が経営していた喫茶店で客にコーヒーを出す際、手が震えるということがあった。
 そのため、昭和62年3月ころ、DF市民病院で診察を受けたところ、本症に罹患している旨診断され、同月から同病院に入院した。

(二) 原告は、被告の入院後、昭和62年6月初めころまで被告を見舞い、毎月8000円ないし1万円の入院雑費を渡したが、その後は見舞いに行っていない。
 なお、本症は、国の特定疾患に指定されているため、治療費の個人負担はない。

(三) 本症の原因については、ウイルス説、染色体異常説などが唱えられてはいるが、現在のところ判然とせず、また、その治療も対症療法が主となっている。
 本症は、脊髄や小脳の神経に変成を来たすもので、その結果、身体の平衡が保てず、真っ直ぐ歩けない、階段を上手に降りられない、物を正しく運べない、物を持てないなどの症状を呈し、さらに、言語障害、視覚障害なども呈するものである。

(四) 被告は、DF市民病院に入院後、脊髄や小脳の変成を防ぐ薬剤の注射や脳の代謝、循環をよくする薬の投与を受け、機能回復訓練を受けるなどしたが、現在のところ、真っ直ぐ歩けない、階段は手すりにつかまらなければ昇降できないなどの平衡感覚の障害が顕著にあり、言語障害も若干認められるという状態である。
 被告の現在の状態では、家族の協力の下で日常生活を行うことは決して不可能ではないが、家事労働を行うことは困難である。

(五) 原被告間の2人の子は,原告が養育している。

2 右事実によれば、今後、原被告が夫婦として暮らして行くことは困難であると認められ、したがって、原被告間の婚姻を継続し難い重大な事由があるものといわざるをえない。

 なるほど、妻が難病に罹患した場合に、夫が献身的に妻の介護にあたり、夫婦のきずなを保ち続けるという事例もあることは公知の事実であるが、このような行為は美談として称賛されるものではあっても法的にこれを強制することまではできず、また、原告は、昭和62年6月初めに見舞った後は、被告の見舞いにも行かず、入院雑費も負担しておらず、これが夫婦の関係を疎遠なものにした一因ではあるが、これが婚姻関係の破綻の主たる原因であるともいえない。


 そうすると、原告の離婚請求は理由がある。
 また、原被告間の2名の子については、原告が監護するほかないので、原告を親権者と定める。

四 よって、原告の離婚請求は理由があるから認容し、2名の子の親権者を原告と定め、訴訟費用の負担につき民訴法89条を適用して、主文のとおり判決する。


以上:2,920文字

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