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婚姻破綻が認定されて離婚請求が認められる要件復習1

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令和 2年 6月20日(土):初稿
○「婚姻破綻していないとして離婚請求を棄却した高裁決定紹介2」の続きで、「婚姻破綻」を理由とする離婚要件についての復習です。現在、離婚を請求する側の事件を複数扱っていますが、いずれも離婚を請求される側から激しい抵抗-頑として離婚に応じない-を受けて難航しているからです(^^;)。

○離婚請求における離婚要件は究極的には「婚姻破綻」と認定されることですが、「頑として離婚に応じない理由-男は未練感情・女は損得勘定が多いか?3」で、
「婚姻破綻」即ち「婚姻を継続し難い重大な事由」ありと認められるには、
①夫婦が婚姻継続の意思を実質的に失っており(主観面)、
②婚姻共同生活を回復することが不可能であると客観的に判断できるような状態(客観面)
と2つが要件として定義され、この①、②が揃うのに別居最少2年は待つべきとされ、短期間の別居では、まだ元に戻る可能性があるからと説明されています。
と説明していました。

○民法770条1項5項は,離婚原因として「婚姻を継続し難い重大な事由」を規定しており、これは,一般的には,婚姻関係が破綻し,婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない場合をいうものと説明されています。この「婚姻破綻」という言葉は、抽象的であいまいな概念ですから、婚姻関係が回復不能な程度に破綻しているか否かというのは、評価的部分を多く含みます。

○そのため「婚姻を継続し難い重大な事由」すなわち「婚姻破綻」は、難しく表現すると規範的構成要件と呼ばれ、実務上,その判断は大変難しく、その判断においては,婚姻関係が客観的に破綻しているか否かだけではなく,破綻についての原告及び被告の帰責性の有無及び程度等を含む様々な事情が総合的に考慮されます。

○そこで、婚姻関係が破綻しているか否かの判断基準についての、学説の復習です。
・「婚姻を継続し難い重大な事由」の中核部分については,婚姻関係が深刻に破綻し,婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない場合であると説明されています(我妻栄『親族法〔法律学全集〕』〔有斐閣,1961〕174頁など)。

・この婚姻関係破綻の有無については,経験則や社会通念に従って,客観的に判断すべきものとされ(太田武男『親族法概説』〔有斐閣,1990〕175頁など)、これは,離婚を求めている者(原告)の立場に置かれたならば,通常ならばだれしも離婚を求めることになろうと考えられる事情があることが必要であるということとされています。

・判断要素としては,婚姻中における両当事者の行為や態度,婚姻継続意思の有無,子の有無・状態,さらには双方の年齢,性格,健康状態,経歴,職業,資産状況など,当該婚姻関係にあらわれた一切の事情が考慮されます(島津一郎=松川正毅編『基本法コンメンタール親族〔第5版〕』〔日本評論社,2008〕107頁〔梶村太市〕など)。

・離婚を求めている者の離婚意思については,これがいかに強固であっても,それだけでは当然には,「婚姻を継続し難い重大な事由」があることにはならず,その有無を判断する際の一事情にすぎません。離婚意思の強固さだけで離婚が認められると,当事者はいつでも離婚請求が可能ということになり,裁判離婚制度を設けた意味がなくなるからと説明されています。

・一般的に離婚訴訟にまで至った夫婦については,それ自体,その婚姻関係が相当程度破綻しているというべきであり,また調停手続において円満調整が試みられていることから,離婚訴訟において,婚姻関係が破綻していないとか,婚姻関係が回復する可能性があると判断することについては慎重であるべきとする見解もあります(梶村・前掲108頁など)。

・相手方の意思については,積極的離婚意思がなかったとしても,原告に対する意地・反感などといった感情や,経済的安定を維持したいということで離婚せず,かといって同居する意思もないときには,相手方には真摯に婚姻を継続する意思がないとして,離婚が認められてよいと考えられています(島津一郎=阿部徹編『新版注釈民法(22)親族(2)』〔有斐閣,2008〕378頁など)。

・別居の有無及びその長短については,客観的に婚姻が破綻しているか否かを比較的容易に認めることができるので,これをもって「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無の判断する際の重要な事情の一つであり,長期の別居を離婚原因として認めるべきという考えは有力です(島津=阿部編・前掲381頁)。別居が長期化していればいるほど婚姻は破綻していると認めやすいことになります。

・但し、別居期間をもって破綻と認める場合には,婚姻関係修復の試みが客観的に不可能であると思わせる別居期間であること、すなわち,相手方に別居状態を解消する機会が与えられていることが必要とする学説もあります。手段を尽くしても婚姻関係が修復できない状態にある場合に初めて、相手方の意思に反してでも婚姻を解消することができるとすべきだからとのことです(渡邉泰彦「婚姻破綻の判断要素」判タ1298号90頁)。


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