令和 2年 6月14日(日):初稿 |
○共同親権が認められていない日本では、離婚の際、先ず第一に決めなければならないのは父母のいずれかを親権者とするかです。当事者間の協議で決められない場合は、民法第819条の規定により家庭裁判所が決めます。 第819条(離婚又は認知の場合の親権者) 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。 2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。 3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。 4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。 5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。 6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。 ○離婚の際、協議で父母の一方を親権者と決めても、その後の事情変更により、親権者を他方に変えたい場合は、上記第6項で「子の親族の請求」により家庭裁判所が変更を決めます。当事者間で親権者を変更を決めて、届出によって変更することはできません。親権者の変更は、必ず家庭裁判所での調停または審判手続によって行わなければなりません。親の都合で簡単に親権者変更が認められたのではこの福祉に反するとの理由です。 ○親権者変更申立が出来るのは「子の親族」です。「親族」とは、民法第725条で「一 六親等内の血族、二 配偶者、三 三親等内の姻族」と定められていますので、血族は再従兄弟姉妹(またいとこ、祖父母が兄弟姉妹)、姻族は叔父叔母・甥姪まで含む結構広い範囲になります。しかし、親権変更申立が実際に必要な範囲は、祖父母・叔父叔母当たりと思われます。 ○親権者の変更について、例えば小学校入学までは母、小学校入学後は父などと期限や条件は付けることができません。子の地位を不安定にし子の福祉に反するからです。同様に、親権者変更申立をしないとの約束も無効とされています。要するに親権者変更について、当事者間で将来の制約をつけてはダメだと言うことです。子の福祉の重視から、親権者変更には全て家庭裁判所の関与が必要と言うことです。 ○親権者変更に伴い、監護権者を例えば祖父母等の親以外の第三者に指定されることが認められています。離婚時に親権者となった父の死亡後、母から親権者変更の、また、父方祖父から子の監護に関する処分の各申立てがなされた事案で、未成年者らは祖父の下で安定した生活を継続し、母と別居後約5年間経過し親近感に欠けるところがあることから、直ちに母と生活させるより祖父との生活を継続させ、母と円滑に同居することができる機会を待つのが未成年者らの福祉に合致するとして、未成年者らの親権者を母に変更し、監護者を祖父と定めた昭和57年4月12日大阪家裁審判(家月35巻8号118頁)があり、別コンテンツで紹介します。 以上:1,283文字
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