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不倫相手に離婚慰謝料請求はできないとした最高裁判例紹介

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平成31年 2月20日(水):初稿
○夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対し,特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないとした平成31年2月19日最高裁判決(裁判所ウエブサイト裁判例情報)全文を紹介します。

○事案は、上告人Y、被上告人X、Xの元妻Aとして以下の通りです。
h6.3XとA婚姻、同年8月長男、h7.10長女誕生
h20.12AがYの会社に入社、この頃にはXA間性交渉ない状態
h20.12AとYが知り合いh21.6以降不貞行為継続
h22.5頃Xは、AとYの不貞関係を知るが、その頃、AはYとの不貞関係解消しXと同居継続
h26.4Aは長女大学進学を機にXと別居、その後半年間Xと連絡取らず
h26.11XはAに対し夫婦関係調整調停申立をし、h27.2X・A間に離婚調停成立


○平成22年頃、Xは、妻AとYの不貞関係を知り、且つ、その頃不貞関係も解消していますので、3年経過した平成25年頃にはXのYに対する不貞行為慰謝料請求権は時効消滅しています。そこでAとの離婚が成立した平成27年2月以降になって、XはYに対し、Yのせいで離婚に至り、精神的苦痛を被ったとして500万円の離婚慰謝料請求を請求し、なんと、一・二審は200万円もの支払を認めたようです。

○Xがどのような論理構成でYに対し慰謝料請求をして、裁判所もどのような理由づけで損害賠償請求を一部認めたかについて知りたく、この事案の一・二審の判決内容を確認したいのですが、現時点では、その判例を見つけることができません。高裁判決は平成29年4月27日東京高裁判決のようです。

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離婚の慰謝料、不倫相手に「原則請求できず」 最高裁
朝日新聞デジタル 岡本玄 2019年2月19日17時33分


離婚の慰謝料を、配偶者が不倫した相手に請求できるかが争われた訴訟の上告審判決が19日あり、最高裁第三小法廷(宮崎裕子裁判長)は、「原則、請求できない」という初判断を示した。そのうえで、「請求できる」として賠償を命じた一、二審判決を破棄し、元妻の不倫相手を訴えた男性を逆転敗訴させた。男性の敗訴が確定した。

不倫を理由とした慰謝料は、配偶者、不倫相手の両方に請求できる。今回は、離婚に伴う慰謝料も不倫相手に請求できるかが争点だった。

第三小法廷は、離婚するかどうかは夫婦の間で決めるものであり、不倫が原因で離婚したとしても、第三者である不倫相手が「ただちに責任を負うことはない」と指摘。不倫相手が離婚についての賠償責任を負うのは、離婚させることを目的に婚姻関係に不当な干渉をするといった「特段の事情」がある場合に限られると判断した。今回の訴訟の場合、不倫関係は発覚した頃に解消されており、約5年後に離婚が成立するまでの間に「特段の事情」はなかった、と結論づけた。

訴えを起こしていたのは、関東地方に住む男性。2010年に妻の不倫を知り、15年に離婚が成立。「不倫が原因だ」として、不倫相手に約500万円の損害賠償を求めて提訴した。一審判決は、不倫が原因で婚姻関係が悪化して離婚に至ったと認め、離婚の慰謝料を含む約200万円の支払いを命じた。二審判決も支持していた。(岡本玄)


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主  文
原判決を破棄し,第1審判決中上告人敗訴部分を取り消す。
前項の部分につき被上告人の請求を棄却する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

理  由
上告代理人○○○の上告受理申立て理由4について
1 本件は,被上告人が,上告人に対し,上告人が被上告人の妻であったAと不貞行為に及び,これにより離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったと主張して,不法行為に基づき,離婚に伴う慰謝料等の支払を求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 被上告人とAは,平成6年3月,婚姻の届出をし,同年8月に長男を,平成7年10月に長女をもうけた。

(2) 被上告人は,婚姻後,Aらと同居していたが,仕事のため帰宅しないことが多く,Aが上告人の勤務先会社に入社した平成20年12月以降は,Aと性交渉がない状態になっていた。

(3) 上告人は,平成20年12月頃,上記勤務先会社において,Aと知り合い,平成21年6月以降,Aと不貞行為に及ぶようになった。

(4) 被上告人は,平成22年5月頃,上告人とAとの不貞関係を知った。Aは,その頃,上告人との不貞関係を解消し,被上告人との同居を続けた。

(5) Aは,平成26年4月頃,長女が大学に進学したのを機に,被上告人と別居し,その後半年間,被上告人のもとに帰ることも,被上告人に連絡を取ることもなかった。

(6) 被上告人は,平成26年11月頃,横浜家庭裁判所川崎支部に対し,Aを相手方として,夫婦関係調整の調停を申し立て,平成27年2月25日,Aとの間で離婚の調停が成立した。

3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,被上告人の請求を一部認容すべきものとした。
上告人とAとの不貞行為により被上告人とAとの婚姻関係が破綻して離婚するに至ったものであるから,上告人は,両者を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負い,被上告人は,上告人に対し,離婚に伴う慰謝料を請求することができる。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 夫婦の一方は,他方に対し,その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ,本件は,夫婦間ではなく,夫婦の一方が,他方と不貞関係にあった第三者に対して,離婚に伴う慰謝料を請求するものである。夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが,協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。

したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。

第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。


以上によれば,夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。

(2) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,上告人は,被上告人の妻であったAと不貞行為に及んだものであるが,これが発覚した頃にAとの不貞関係は解消されており,離婚成立までの間に上記特段の事情があったことはうかがわれない。したがって,被上告人は,上告人に対し,離婚に伴う慰謝料を請求することができないというべきである。

5 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,被上告人の請求は理由がないから,第1審判決中上告人敗訴部分を取り消し,同部分につき被上告人の請求を棄却すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 宮崎裕子 裁判官 岡部喜代子 裁判官 山崎敏充 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林 景一)

以上:3,243文字

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