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婚姻期間中贈与不動産は特有財産として財産分与対象否認高裁決定紹介

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平成31年 2月 2日(土):初稿
○協議離婚した夫婦間で、元夫が元妻に対し、婚姻期間中に元妻に贈与した不動産は実質的な共有財産であるとして、清算的財産分与として、不動産の評価額の2分の1の金員として1080万円の支払を求め、第一審平成22年8月31日京都家裁審判は、基本的に元夫の主張を認め、贈与した財産も共有財産として、元妻に対し362万円の支払を命じました。

○これに対し元妻が抗告し、本件贈与は、両当事者の元娘婿であったEが有していた部分も含めて抗告人に移転し、本件各不動産の全持分を抗告人の所有としたもので、抗告人が相手方による不貞行為を疑い、現に相手方による不貞行為を疑われてもやむを得ない状況が存在した中で、抗告人の不満を抑える目的でされたものであることからすると、婚姻継続中ではあるものの、確定的にその帰属を決めたもので、清算的要素をもち、そのような場合の当事者の意思は尊重すべきであるから、本件贈与により本件各不動産はすべて抗告人の特有財産になったと認めるべきとして、申立てを一部認容した第一審審判を取り消し、申立てを却下した平成23年2月14日大阪高裁決定(家庭裁判月報64巻1号80頁)全文を紹介します。

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主   文
1 原審判を取り消す。
2 本件申立てを却下する。
3 抗告費用は抗告人の負担とする。

理   由
第1 抗告の趣旨及び理由

1 抗告人は,原審が,平成22年8月31日,抗告人に対し,財産分与として相手方に対し362万円を支払うよう命じる審判をしたのに対して抗告し,原審判を取り消し,本件を京都家庭裁判所に差し戻すとの裁判を求めた。

2 抗告理由の要旨は,次のとおりである。
(1)原審は,原審判別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地1」という。)及び同2の土地(以下「本件土地2」といい、本件土地1と併せて「本件各土地」という。)並びに同目録記載3の建物(以下「本件建物」といい,本件各土地と併せて「本件各不動産」という。)について,当事者間の長女であるCの夫であったEがかつて有していた共有持分を除く持分が実質的な夫婦共有財産であるとして財産分与の対象としたところ,その根拠は,本件各不動産の平成15年×月×日付け贈与(以下「本件贈与」という。)が婚姻期間20年を超える配偶者の贈与税免除の制度を利用する目的のみでなされたものと判断したものと解されるが,実情は,抗告人が相手方と甲との昭和59年以来の不貞関係に苦慮して,そのままでは不動産をどのようにされるか分からないと思い抗告人の名義に変更したものであって,相手方もその趣旨を理解した上で本件贈与をしたことは明らかであるから,本件贈与の時点で本件各不動産は抗告人の特有財産となったから,財産分与の対象とはならない。

(2)原審は,当事者間の公平さを保とうとしたものと解されるが,抗告人は362万円もの大金を調達する資力がないのに対し,相手方は資産家である甲宅で生活し,生活に困窮している様子もない。

第2 当裁判所の判断
1 事実関係は,次のとおり補正するほかは,原審判1項25行目から4頁21行目までに記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原審判2頁10行目の「本件審判」から「申立人は」までを「相手方は,同年×月×日」に改める。
(2)同3頁2行目の「就職」を「就職し」に改める。
(3)同3頁3行目の「×月」を「×月から×月にかけて」に改める。
(4)同3頁26行目の「申立人に移転登記」を「平成14年×月×日,平成13年×月×日付け売買を原因として相手方に対して所有権移転登記」に改める。
(5)同4頁8行目の「付き添った」を「付き添っていた」に改める。
(6)同4頁9行目の「親しくなり,」の次に「平成5年に入院した際には甲が頻繁に病室を訪れ,」を加える。
(7)同4頁11行目末尾「その後,相手方が甲と親しくしていることが抗告人に発覚し,抗告人はそのころから相手方と甲との不貞関係を疑い,ときにこれを理由に相手方を責めたこともあった。なお,相手方名義の××銀行××支店の普通預金口座(口座番号××××××)には,相手方の住所として甲の自宅が届けられ,遅くとも平成10年×月には預金の異動が記録され,その後同口座の出入金が継続し,平成22年×月時点でも出入金がなされている。」を加える。
(8)同4頁12行目の「Cは,」の次に「抗告人と相手方との関係が不穏な状況にあったことから,抗告人の不満を抑える目的で,」を加える。
(9)同4頁21行目末尾を改行の上,次を加える。
「(11)年金支給額は,抗告人が年額104万円程度,相手方が年額175万円程度である。
(12)平成21年度の路線価(1平方メートル当たり15万円)を地積に乗じると,本件土地1は1339万5000円,本件土地2は104万4000円であり,本件建物の平成21年度の固定資産評価額は452万7500円である。」

2 上記1を前提に,相手方の本件申立てについて検討する。
 上記のとおり補正の上引用した事実関係によれば,抗告人は,本件贈与により本件各不動産の所有権を取得したことが認められるところ,本件各不動産についてEがかつて有していた共有持分は,EとCとの離婚に伴い,CがEとの共同事業の取引先から回収した貸付金をEに対して支払い,売買を原因として相手方に所有権移転登記がなされたものであるから,夫婦共有財産とはいえず,また,相手方の特有財産とも認められない。

 他方,Eがかつて有していた共有持分以外の持分は,夫婦で形成してきた共有財産といえるが,本件贈与は,Eが有していた部分も含めて抗告人に移転し,本件各不動産の全持分を抗告人の所有としたもので,抗告人が相手方による不貞行為を疑い,現に相手方による不貞行為を疑われてもやむを得ない状況が存在した中で,Cの提案により,抗告人の不満を抑える目的でされたものであることからすると,婚姻継続中ではあるものの,確定的にその帰属を決めたもので,清算的要素をもち,そのような場合の当事者の意思は尊重すべきであるから,本件贈与により本件各不動産はEの有した部分を含め抗告人の特有財産になったと認めるべきである。

 なお,特有財産であっても特段の事情が認められる場合には,財産分与として清算の対象とすべき場合もあるが,抗告人と相手方との離婚には相手方と甲との親密な関係が影響を及ぼしていることは否定できないこと,本件贈与のうち夫婦共有財産の部分についての相手方の持分相当額は500万円程度(((1339万5000円+104万4000円)×1/2+452万7500円×2/3)÷2)であることに加え,当事者双方の生活水準等を併せ考慮すると,抗告人が本件贈与により取得した特有財産を清算の対象としなければ公平の観点や社会通念上不当であるような特段の事情があるとは認められない。

 したがって,抗告人に対して財産分与を求める相手方の本件申立ては理由がないから却下するのが相当である。

第3 以上によれば,原審判は相当ではないから,家事審判規則19条2項により,原審判を取消し,本件申立てを却下することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 松本哲泓 裁判官 田中義則 永井尚子)

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