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面会拒否間接強制金50万円請求に対し5万円のみ認めた家裁決定紹介

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平成31年 1月29日(火):初稿
○「夫の面会拒否に1回100万円の支払を認めた東京家裁決定全文紹介」で、面会拒否に対する間接強制金は1回について、せいぜい5~10万円程度が普通のところ、100万円も認めた平成28年10月4日東京家裁決定(判例時報2323号135頁)全文を紹介していました。

○面会拒否に対する間接強制の申立は、結構、多そうで、面会を拒否する母に対し、拒否1回に付き50万円の間接強制金の支払を求めた事案で、債務者母の総収入は,年額476万7528円(給与収入)と認定されて金5万円の間接強制金支払を認めた平成30年1月10日大阪家裁決定(ウエストロー・ジャパン)全文を紹介します。

○夫は5万円では少なすぎるとして大阪高裁に抗告しました。大阪高裁決定は別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 大阪高等裁判所平成29年(ラ)第○○号子の監護に関する処分(面会交流)審判に対する抗告事件(原審・大阪家庭裁判所平成28年(家)第○○号)の執行力ある決定正本に基づき,債務者は,債権者に対し,別紙面会交流実施要領記載の内容で未成年者Cを債権者に面会させる義務を履行せよ。
2 債務者が,本決定の送達日以降,前項の義務を履行しないときは,債務者は,債権者に対し,不履行1回につき5万円を支払え。

理   由
第1 申立ての趣旨

1 主文1項と同旨
2 債務者が,本決定の告知を受けた日以降,前項の義務を履行しないときは,債務者は,債権者に対し,不履行1回につき50万円を支払え。

第2 認定事実
 本件記録及び当裁判所に顕著な事実によると,次の事実を認めることができる。
1 大阪家庭裁判所は,平成29年○○月○○日,債務者に対し,債権者と債務者との間の長女C(平成25年○○月○○日生,以下「未成年者」という。)を債権者と毎月第2日曜日の午前11時から午後4時まで面会交流させることなどを命じる旨の審判(以下「前件審判」という。)をしたところ,債務者は,これを不服として,即時抗告をした。

 大阪高等裁判所は,平成29年○○月○○日,当初の3回の面会交流については,2か月に1回の頻度とした上で,債務者の債権者に対する不信感の強さ等を考慮し,債務者が指定する債務者の親族又は第三者が立ち会うことを認めるべきである等として前件審判を変更し,債務者に対し,別紙面会交流実施要領記載の内容及び方法等によって,未成年者を債権者と面会交流させることを命じる決定(以下「本件決定」という。)をし,本件決定は同月○○日確定した。

 なお,前件審判手続において,家庭裁判所調査官が債務者の父母(以下「母方祖父母」という。)と面接した際,母方祖父母は,裁判所が債務者に未成年者を債権者と面会交流させることを命じた場合,未成年者の受渡しに積極的に協力するつもりである旨述べている。

2 本件決定後,本件申立てまでの経緯
(1) 債権者は,債務者に対し,平成29年○○月○○日付け「ご連絡」と題する書面を送付し,本件決定が確定した翌月の第2日曜日(同月○○日)以降,本件決定に従って面会交流を実施するよう求めるとともに,面会交流を実施するに当たって留意しなければならない点の有無などを尋ねた。これに対し債務者は,同月○○日付け「連絡書」と題する書面を債権者に送付し,初回の面会交流の実施の延期と実施場所の変更を求めるとともに,その理由として,面会交流の実施に際しては,第三者機関であるEによる支援を受けたいと考えているが,支援を受けるためには同月○○日に予定されているEとの事前面談を経なければならず,また,Eを利用する場合には,第1回目の面会交流の実施場所をEの施設内としなければならない決まりである旨説明した。

 同書面を受けて債権者は,同月○○日付け「面会交流についてのご連絡」と題する書面を送付し,債務者の求める初回の面会交流の実施の延期と実施場所の変更には応じられない旨回答し,別紙面会交流実施要領記載の内容及び方法に基づき面会交流を実施するよう求めた。

(2) 債権者は,平成29年○○月○○日に初回の面会交流が実現されなかったことから,債務者に対し,同月○○日付け「面会交流についてのご連絡」と題する書面を送付し,本件決定において未成年者にやむを得ない事由が発生して予定日に面会交流が実施できない場合の代替日として定められている第3日曜日(同月○○日)に別紙面会交流実施要領記載の内容及び方法に従って面会交流を行うように求めるとともに,Eの関与のもとでは,本件決定で定められた内容に従った面会交流ができない以上,Eの関与を受け入れることはできない旨連絡した。

 これに対し,債務者は,同月○○日付け「連絡書」と題する書面を送付し,債権者に対し,債務者としてEの利用に固執しているものではないものの現状ではE以外に適切な支援機関を見つけることができていないため,Eの事前面談が予定されている同月○○日までの間に面会交流を実施することには応じられない旨回答した。

(3) 債務者は,債権者に対し,同年○○月○○日付け「連絡書」と題する書面を送付し,Eの利用に関する合意書に署名押印の上,債務者に返送するよう求めたが,債権者はこれに応じなかった。

3 債権者は,本件決定が定めた初回の面会交流が実現されなかったことから,平成29年○○月○○日,本件申立てをした。本決定の時点で,債権者と未成年者との面会交流は行われていない。

4 債務者の経済状況
 大阪高等裁判所は,平成28年○○月○○日に,債権者に対し,婚姻費用分担金として,債務者に月額21万円を支払うことを命じる旨の決定をし(同裁判所平成28年(ラ)第○○号婚姻費用分担審判に対する抗告事件,以下「別件決定」という。),別件決定は確定した。別件決定において,債務者の総収入は,年額476万7528円(給与収入)と認定されている。本件記録上,債務者の収入が別件決定後に大きく変動したことは窺われない。

第3 判断
1 本件決定は,面会交流の日時,各回の面会交流の長さ,子の引渡しの方法等を具体的に定めており,債務者がすべき給付の特定に欠けることはないから,債務者に対し,間接強制決定をすることが可能である。

2 債務者は,本件決定により,本件決定が確定した翌月の第2日曜日の午前11時の面会交流開始時に,D駅改札口において未成年者を債権者に引き渡す義務を負っていたところ,債務者は,初回の面会交流が予定されていた平成29年○○月○○日に未成年者を同改札口に連れて行かず,同義務を履行しなかった。本件決定は,未成年者に病気その他やむを得ない事由が発生して,予定された面会交流の実施ができないときは,その1週間後の第3日曜日に,1週間後にも代替の面会交流を設定できないときは,その次の面会交流の日までの間のいずれかの日に当月の面会交流の代替日を設定し,実施することを定めているが,本決定の時点において初回の面会交流は行われていない。

 また,債務者は,本件決定により,平成29年○○月の翌々月の第2日曜日の午前11時の面会交流開始時に,同駅において未成年者を債権者に引き渡す義務を負っていたところ,債務者は,第2回の面会交流が予定されていた同年○○月○○日に未成年者を同改札口に連れて行かず,同義務を履行しなかった。

 これに対し,債務者は,前記第2の2で認定した経緯のとおり,債権者と未成年者との円滑な面会交流の実施のために,第三者である専門機関の立会いのもとで面会交流を行えるようこれまで求めてきたものであって,面会交流を実施すること自体を拒んでいるわけではなく,いたずらに面会交流を延期させる意図をもっているものではない旨主張する。

 しかしながら,本件決定は,債務者の債権者に対する不信感の強さ等を考慮し,初回から第3回までの面会交流においては,債務者が指定する債務者の親族又は第三者が立ち会うことができると定めているが,債務者が指定する第三者の都合に応じて面会交流の実施日や実施場所を債権者の同意なく変更することまでを許容しているものではないことは明らかである。

 また,前記認定のとおり,前件審判手続において,母方祖父母が未成年者の受渡しに積極的に協力するつもりである旨述べていることに鑑みると,母方祖父母に面会交流の立会いを依頼する方法に拠ることも十分に考えられる。これらの事情に照らすと,債務者が,本件決定の内容に従った面会交流を実施しなかったことに正当な理由があると認めることはできない。

 以上によると,債務者は,本件決定で定められた内容で債権者と未成年者を面会交流させる義務の履行を怠っているから,本決定の告知を受けた日以後に期日が到来する面会交流義務につき,債務者に対し,その履行を確保するために相当な金額の支払を命じるのが相当である。

3 間接強制金の金額
 債務の不履行に際して債務者が支払うべき額について検討するに,前記のとおり債務者は正当な理由なく義務の履行を怠っていること,債務者は,別件決定において,総収入が年額476万7528円(給与収入)と認定されていること,債権者は債務者に対し婚姻費用分担金として月額21万円を支払うべき義務があることなどの事情を総合すると,債務の不履行に際して債務者が支払うべき金額は,不履行1回につき5万円と定めるのが相当である。

4 よって,主文のとおり審判する。
 大阪家庭裁判所家事第1部 (裁判官 ○○)

 〈以下省略〉
以上:3,845文字

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