平成30年10月24日(水):初稿 |
○「ローン付不動産財産分与申立に相当額金員支払を命じた家裁審判紹介」の続きで、その抗告審である平成29年6月30日東京高裁決定(判時2372号20頁、判タ1451号140頁)全文を紹介します。 ○原審申立人(元夫)が、原審相手方(元妻)に対し、財産分与を求め、原審平成28年3月30日東京家裁審判は、原審相手方に対し金員2769万円の支払を命ずる旨の審判をしていました。原審申立人と原審相手方それぞれが即時抗告をし、原審申立人は、本件不動産の原審相手方持分2分の1の取得を希望しました。 ○これに対し東京高裁決定は、本件不動産には抵当権が設定されているが、原審申立人と原審相手方は被担保債権について連帯債務を負い、原審相手方名義の預金が担保とされており、抵当権が実行される可能性は相当程度に低いので本件不動産の原審相手方共有持分を原審申立人に分与することが相当して、原審判を変更し、原審申立人へ土地建物の2分の1を分与し、原審相手方に持分移転登記手続を命じて原審相手方に原審が命じた金額を2769万円から710万円に減額して支払を命じました。 ********************************************* 主 文 一 原審判を次のとおり変更する。 (1)原審申立人に対し、別紙物件目録《略》記載の土地建物の原審相手方持分2分の1を分与する。 (2)原審相手方は、原審申立人に対し、別紙物件目録《略》記載の土地建物の原審相手方持分2分の1につき、前項の財産分与を原因とする持分移転登記手続をせよ。 (3)原審相手方は、原審申立人に対し、710万円を支払え。 二 手続費用は、第1、2審を通じ、各自の負担とする。 理 由 (前注)略称は原審判の例による。 第一 抗告の趣旨及び理由 一 原審申立人 抗告の趣旨及びその理由は、即時抗告申立書、平成28年××月××日付け「追加説明」と題する書面に記載のとおりである。 二 原審相手方 抗告の趣旨及びその理由は即時抗告申立書、平成28年××月××日付け「主張書面」と題する書面に記載のとおりである。 第二 事案の概要 本件は、原審申立人が原審相手方に対し、財産分与を求めた事案である。 原審は、原審相手方に対し2769万円の支払を命ずる旨の審判をした。 原審申立人と原審相手方は、それぞれ即時抗告をした。 第三 当裁判所の判断 一 当裁判所は、原審申立人に対し別紙物件目録《略》記載の土地建物(以下「本件不動産」という。)の原審相手方持分2分の1を分与し、原審相手方に対しその本件不動産の持分2分の1につき財産分与を原因として原審申立人に持分移転登記手続をするように命じ、原審相手方は原審申立人に対し財産分与として710万円を支払うように命ずるのが相当であると判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原審判の理由の第一の二(2)、3、第二の一ないし三に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1)原審判9頁1行目の「上記番号の各資産」を「上記番号のうち2-1から2-10までの各資産」に改め、3行目末尾に次のとおり加える。 「上記番号2-11は、●●《省略》●●の原審相手方名義の普通預金口座(口座番号××××)の預金であるところ、これは、原審申立人と原審相手方が本件不動産(●●《省略》●●の物件)を各持分2分の1として購入した際に、その資金として●●《省略》●●から連帯債務として借入れた住宅ローン(原審別紙相手方名義の資産・負債表番号4-2の債務5630万8895円)の預金担保となっている(原審相手方の即時抗告申立書)。 そうすると、上記預金は担保とされ、その預金額と住宅ローン債務額はほぼ同じであるから、離婚時の財産分与の対象となる資産としては、これらを併せて評価し、預金、債務とも0とする。したがって、本件不動産については、登記上担保が付されているけれども、その評価額から被担保債務額を控除しないこととする。」 (2)原審判九頁16行目冒頭から10頁1行目末尾までを次のとおり改める。 「オ 原審別紙相手方名義の資産・負債表番号4-2(債務) 前示のとおり、同債務は、ほぼ同額の預金担保が付されていることから、評価として0とする。 カ 相手方名義の共有財産額のまとめ 原審相手方名義の共有財産額は次のとおりとなる。 1-1 2036万5000円 2-1~10 1692万4488円 2-11 0円 4-1 5650万0000円 債務 0円 控除後 9378万9488円」 (3)原審判10頁18行目冒頭から24行目末尾までを次のとおり改める。 「(2)そうすると,以下の計算式のとおり、原審相手方から原審申立人への分与額は2754万1641円となる。 ア 原審相手方名義の共有財産額 9378万9488円 イ 原審申立人名義の共有財産額 3870万6205円 ウ 原審相手方から原審申立人への分与額(上記アとイの合計額の2分の1相当額からイを控除した額) 2754万1641円」 (4)原審判11頁一行目冒頭から17行目末尾までを次のとおり改める。 「原審申立人は、本件不動産の原審相手方持分2分の1の取得を希望している(原審申立人の平成29年4月13日付け準備書面一等)。本件不動産には抵当権が設定されているが、原審申立人と原審相手方は被担保債権について連帯債務を負い、原審相手方名義の預金が担保とされていることは前示のとおりであるから、抵当権が実行される可能性は相当程度に低いといえる。そうすると、本件不動産の原審相手方共有持分を原審申立人に分与することが相当である。」 二 以上によれば、本件不動産の原審相手方持分2分の1を原審申立人に分与し、原審相手方に対し本件不動産の持分2分の1につき財産分与を原因とする持分移転登記手続を命ずることが相当である。また、原審相手方に対し分与すべき2754万1641円から上記持分の評価額2036万5000円を控除した額が717万6641円となるから、財産分与として710万円の支払を命ずることが相当である。 よって、原審判を変更することとして、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官 畠山稔 裁判官 齋藤清文 池下朗) 別紙 物件目録《略》 以上:2,582文字
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