平成29年 4月14日(金):初稿 |
○「別居期間2年2年3ヶ月で婚姻破綻を認めた裁判例紹介(一審仙台地裁)」の続きで、その控訴審の平成11年4月20日仙台高裁裁判所判決全文を紹介します。 ○「裁判の行方」に記載したとおり、「夫婦間には修復し難い溝があり回復の可能性は殆どないが、明確な離婚理由がなく、別居期間3年にも満たない本件の離婚を認めると、嫌になって出ていけば離婚が成立する結論を認めることになり法的安定性を害することになる。」離婚請求は棄却されてしまい、上告受理申立も不受理決定で終了しました。 ○平成8年に出された法制審の「民法の一部を改正する法律案要綱」では、「別居が5年以上継続している場合」が離婚原因に追加されています。この民法改正案はお蔵入りになったのか、その後、余り話題にならなくなりました。私の感覚では、離婚に必要な別居期間が5年なんて長すぎ、2年程度で良いと思っているのですが。 ********************************************* 主 文 原判決を取消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審とも披控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一 申立 控訴人は主文同旨の判決を求め、被控訴人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。 第二 事案の概要 次のとおり当審における主張を付加し、原判決4頁4行目の「各本人」の次に「、弁論の全趣旨」を挿入するほかは、原判決当該欄の記載と同じである。 一 控訴人の当審における主張 被控訴人の家庭生活における不満は、基本的には、通常の共稼ぎ家庭にみられるような、仕事と育児・家事の間の両立、調和の問題に起因するものであって、いずれかの当事者の性格が偏っているなどの問題から生じているものではない。したがって、本来的に夫婦問の話合いで解決可能なものである。 また、夫婦問の意思の疎通についても、平成8年8月13日に被控訴人が家を出ていく直前まで、夫婦で海外旅行の予定を楽しみにしていたほどであり、客観的にみて夫婦間の意思の疎通が困難であったとはいえないはずである。 したがって、被控訴人が抱いていたという不満に対する控訴人の側の理解・対応が、婚姻関係を破綻させるほどに不誠実なものであったということはできず、本件のように、別居状態を惹起した配偶者からの離婚請求において、別居状態の継続を根拠として婚姻関係を継続しがたい重大な事由ありと認めることは、家庭を捨てた者勝ちの風潮を助長しかねず、家族関係に混乱がもたらされるし、本件のように幼い子供がいる場合には、子の福祉も著しく損なわれることになるのであって、被控訴人の本件離婚請求は到底認められるべきものではない。 二 被控訴人の答弁 控訴人の主張は争う。夫婦関係は夫婦間の愛情が基本であるところ、控訴人には被控訴人に対する愛情が認められず、婚姻関係が完全に破綻していることは明らかである。 第三 当裁判所の判断 一 本件の事実関係についての当裁判所の認定内容は、以下に補正するほかは、原判決のそれと同一である。 原判決6頁2行目の「甲3、」の次に「4、」を、「乙1、こ の次に「2、」を、同3行目の「昭和58年」の次に「頃」を各挿入し、同6行目の「協力」を「非協力的な態度等」と、7頁5行目の「聞かなく」を「利かなく」と、8頁1行目の「負われる」を「追われる」と、同4行目の「聞かない」を「利かない」と、9頁初行の「口論となり」から次行の「事態となったため」を「争いとなり、これを契機に」と各訂正し、12頁6行日の「被告は、」の次に「その本人尋問において、」を、13頁2行目の冒頭に「以上のような状況のほか、」を各挿入し、同9行目の「原告方」を「原告のもと」と訂正する。 二 被控訴人がいう控訴人の「非」なるものは、被控訴人の認識として、これまでの両者の生活が夫婦間の協力や日頃の話合いを初めとする暖かな家庭的雰囲 気とは大きく隔たっており、このような事態に至らせたのは、被控訴人の心情に対する思いやりの足りない控訴人の日頃の言動や態度であるということであり、控訴人に不貞、頻繁な暴力、外泊、過度の飲酒、遊興等があったとか、控訴人が生活費を入れないというわけではない。右認定事実程度のことは多かれ少なかれ一般の家庭でも生じうる現象であると言って差支えないであろう。 しかし、被控訴人の気持が控訴人から離れてしまっているのは事実であり、夫婦共同生活の再開が当面望むべくもないことは明らかであるが、さればとて、別居に至ったのが右の如き事由からである上に、その期間が3年にも満たない現段階において、被控訴人からの離婚請求を認容することは、夫婦の一方の意思だけに基づく裁判離婚を認めるに等しく、現在の法制上は恐らく困難であり、社会一般の意識の上でも容易に受入れられないところであると考える。したがって、被控訴人からの離婚請求を認容することはできないというべきである。 三 よって、原判決を取消し、被控訴人の離婚請求を棄却する。 仙台高等裁判所第2民事部 裁判長裁判宮 小林啓二、裁判官 吉田徹、裁判官 比佐和枝 以上:2,112文字
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