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面会を拒否した母に対する慰謝料請求を認めた控訴審東京高裁判決全文紹介

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平成29年 1月28日(土):初稿
○「面会を拒否した母に対する慰謝料請求を認めた横浜地裁判決全文紹介3」の続きで、その控訴審の平成22年3月3日東京高裁判決(家月63巻3号116頁)全文を紹介します。
控訴審判決も「控訴人は原審において長女と二人だけで会わせることに納得がいかなかったと供述しており,そのために被控訴人と長女だけの面接交渉が実現しなかったものと認められるのであって,面接交渉の態様に関する被控訴人の要求等が控訴人において面接交渉を拒絶することを正当化する理由とはならないとした原判決の判断に誤りはない。」として、面会を拒否した母への慰謝料70万円支払義務をアッサリ認めています。

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主   文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。

第2 事案の概要
1 控訴人と被控訴人とは,もと夫婦であり,その間に長女が生まれた。控訴人は,被控訴人と別居し,長女を監護養育していたところ,被控訴人との間で長女との面接交渉に係る調停が成立した。その後,控訴人は離婚の訴えを提起し,離婚請求を認容し,控訴人を長女の親権者と指定する判決が確定した。
 本件は,被控訴人が,控訴人に対し,控訴人が上記調停による合意を遵守せず,被控訴人の長女との面接交渉権を侵害したと主張して,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として慰謝料300万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原審は,慰謝料70万円の限度で債務不履行に基づく請求を認容し,その余の請求をいずれも棄却したところ,控訴人が控訴した。

2 本件の前提となる事実,争点及び争点に係る当事者の主張は,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2項及び3項に記載されたとおりであるから,これを引用する。

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,被控訴人の本件請求は,債務不履行に基づく損害賠償金70万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容すベきものと判断する。その理由は,以下のとおり原判決に付加訂正を加え,当審における控訴人の主張に対し次項のとおり補足説明をするほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決10頁9行目の「その後,」の次に「本件合意に基づく」を加える。
(2) 原判決12頁4行目の「上告したが」を「更に上訴したが」に,13頁1行目の「×月終わりころ」を「×月」に,それぞれ改める。
(3) 原判決16頁20行目の「平成17年×月以降」の次に「,本件合意に基づく」を,17頁2行目の「遅くとも,」の次に「平成20年×月に」を,それぞれ加える。
(4) 原判決17頁9行目の「同時点からから」を「同時点から」に改める。

2 当審における控訴人の主張に対する補足説明
(1) 控訴人は,面接交渉の際,被控訴人と長女が二人だけで会うことについて繰り返し長女に問い,促すこともしていたが,長女自身が拒み,実現しなかったと主張する。
 しかし,平成17年×月以前に長女自身が被控訴人と二人だけで会う面接交渉を拒んでいたと認めるに足りる証拠はなく,控訴人は原審において長女と二人だけで会わせることに納得がいかなかったと供述しており,そのために被控訴人と長女だけの面接交渉が実現しなかったものと認められるのであって,面接交渉の態様に関する被控訴人の要求等が控訴人において面接交渉を拒絶することを正当化する理由とはならないとした原判決の判断に誤りはない。

(2) 控訴人は,本件合意は,月1回以上の面接を認めるという第1項と学校行事への参加等について協議するという第2項から成っており,被控訴人が第2項の協議を無視しているのに,第1項の面接を強制される関係にないと主張する。
 しかし,上記第2項は,被控訴人の学校行事への参加等について,その円満・円滑な実現のために話合いをすることを定めたものであって,父親である被控訴人による長女の学校行事への参加等について,その権利を原則的に否定したものと解することはできないところ,被控訴人が控訴人に対し学校行事への参加について協議を求めても控訴人はこれに応じなかったのであり,被控訴人は事前に事情を述べて学校側の承諾を得た上,学校行事に参加しているのである。そして,参観時に被控訴人が長女の近くに長く佇立していたなどのことが9歳の小学生であった長女には恥ずかしく感じられたことは推認に難くないが,それは被控訴人の態度,対応のぎこちなさであるにすぎず,学校行事が年のうちでも限られた回数であることからすれば,控訴人との協議が整わないのに被控訴人が長女の学校行事に参加したからといって,本件合意に基づく面接交渉を拒絶する理由とはならないというベきである。

(3) 控訴人は,そもそも本件合意の内容が公平でなく,不当であると主張する。
 しかし,一般的に見て本件合意が公平を欠く内容のものであるということはできないし,本件合意当時,長女が7歳(小学2年生)であったことや,平成14年×月×日,控訴人が長女を連れて別居し,同年×月×日,被控訴人が面接交渉を求める審判を申し立て,その調停において本件合意が成立したという本件合意成立の経緯(乙3)に照らしてみても,本件合意の内容が公平を欠き,それ故に控訴人の不履行もやむを得なかったということはできない。

第4 結論
 以上によれば,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとする。
 よって,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 鈴木健太 裁判官 高野 伸 後藤 健)
以上:2,386文字

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