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別居期間8年での有責配偶者離婚請求認容最高裁判例感想等

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平成25年 7月 9日(火):初稿
○「別居期間8年での有責配偶者離婚請求認容最高裁判例全文紹介」の続きで私なりの感想・解説です。
この判決は、平成2年11月8日最高裁判決(判時1370号55頁)で、有名な昭和62年9月2日大法廷判決での有責配偶者離婚要件を緩和する方向を示したものです。

本件は一審昭和63年6月20日東京地裁判決は婚姻関係破綻を認め離婚を認容していましたが、二審平成元年4月26日東京高裁判決は婚姻関係の破綻を認め、経済的には現在よりも被告が不利となることのない財産的給付に関する提案が原告からされたことをも認めつつ、別居期間が相当長期間に及んでいないとして、離婚請求を棄却していました。
昭和62年9月2日大法廷判決での有責配偶者離婚請求認容要件①長期の別居期間、②未成熟子の不存在、③苛酷状況の不存在の内①が8年ではダメだと言うものでした。

○本件の事案は次の通りです。年齢は平成2年11月判決時
・昭和33年5月7日、X男(53歳)とY女(56歳)婚姻
・昭和36年6月2日に長男(30歳)を、昭和39年4月3日に二男(25歳)出生
・結婚当初XはY父方商売を手伝い、その後独立して共稼ぎをするも昭和44年Yは専業主婦となる
・昭和47年Xの住居建替計画をYに反対されて断念
・昭和56年夏XはYと同居していた家を出て別居し現在に至る
・Xは別居前から訴外人と情交関係、別居後同棲するもまもなく同人とは別れるもYには住所明かさず
・Xは、昭和61年2月頃までは月額60万円、その後は月額35万円を送金
・Xは、昭和61年2月から昭和63年4月まで送金停止、同年5月から月額20万円送金、Yは月額6万円の内職収入あり
・XはX所有名義でY居住不動産を処分し、代金から税金、手数料等の経費を控除した残金を折半し、抵当権の被担保債務はX取得分の中から弁済するとの譲歩案提案
・長男は国費でフランス留学中、二男は千葉大工学部在学中で両親の離婚についてはYの意思に任せる意向


○二審東京高裁判決は、別居期間8年について、「当事者の年齢、同居期間と対比して考えた場合、いまだ有責配偶者としての上告人の責任と被上告人の婚姻関係継続の希望とを考慮の外に置くに足りる相当の長期間ということはできない。かえって、現段階において被上告人の意に反して上告人からの離婚請求を認めることは、自ら婚姻関係破綻の原因を作出した上告人がこれを理由として離婚の請求をすることを安易に承認する結果」となると断じました。

○これに対し、Xは「別居開始前に家庭内別居の状態となっていたことを考慮すべきであり、別居期間が長期間に及んだかどうかは、婚姻関係の実体および有責配偶者の誠意ある態度をも総合考慮すべきものである」として上告しました。

○最高裁は、「有責配偶者からの離婚請求を許容する場合の、相当の長期間に及ぶ別居期間の趣旨について、別居後の時の経過に伴う諸事情の変容、有責行為に対する社会的意味ないし社会的評価の変化に着目して、信義則適用に当たっての考慮事項とされたものであるとし、本件については、時の経過に伴う諸事情の変容、有責行為に対する社会的意味ないし社会的評価の変化が窺われ、格別の事情のない限り、相当の長期間といえるとして、原判決を破棄」して、原審に差し戻しました。

○本件は、婚姻後の生活における仕事や建物建築等を巡る意見の対立の結果、Xが家を出る形で別居となるも、その後も婚姻費用を負担し、家族を遺棄したとは評価出来ず、さらにXの不貞も別居の前後における一時的なもので、これが破綻の原因かどうか明確ではない事案です。これらの事情を総合考慮した上で、別居期間の長短を柔軟に判断すべきと言うこの最高裁の姿勢は、適正と評価出来ます。
以上:1,523文字

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