平成25年 7月 3日(水):初稿 |
○「前訴確定後8ヶ月後提起二回目有責配偶者離婚請求認容例感想等1」を続けます。 平成15年1月31日那覇地裁沖縄支部判決(判タ1124号244頁)判決の結論とその理由部分は、「前件はもともと原告が一方的に被告に対し愛情喪失を理由に離婚を迫ったものであって身勝手も甚だしく、相手方配偶者の意思に反してでも離婚を許容し得るものとする裁判離婚制度の存在意義ないし機能に照らしてもなお本件離婚請求を認容することに対して生じうる強い抵抗感を拭い去ることはできない。」と悩める裁判官の心情吐露から始まっています。 ○しかし、「しかしながら」と悩みながら以下の事情から最終的には、「前訴判決が信義則に照らして離婚を許容し得ないとした事情については、その口頭弁論終結後の事情によれば、いずれもその意味合いに変動があるものというべきであるから、本件については、信義則に照らしてなお容認され得ない特段の事情は存在せず、したがって、原告の本件請求は認容することが許されるというべきである。 」と離婚認容を結論付けています。 ○その「信義則に照らしてなお容認され得ない特段の事情は存在せず」の中身は、概要、以下の通りです。 ・X男とY女の関係は前件当時以上におよそ回復の見込みの全くない状態に形骸化が進行 ・離婚請求を棄却しても、法により夫婦間の愛情の生成ないし受容を強制できない以上、何らの解決をみないまま形骸化した法律上の婚姻関係を放置して事態が推移していくだけで、両者間の葛藤ないし緊張が継続し増大する ・この両者の葛藤ないし緊張の継続増大が未成熟子に与える影響の重大さを考慮しないわけにはいかない ・離婚を是認しないと父と未成熟子の接点を持つこと自体困難になるので、子らとの間で新たな関係を形成する機会を早期に与える必要がある ・XがY女らが居住するマンション費用負担を継続指定折り離婚してもY女を著しく過酷な状況に陥れる恐れは乏しくその安定した履行確保するためにも離婚は不可欠 ・Xが丙市で形成した内縁関係とその女性との間の子の出生という新たな生活関係への配慮が必要 ・これが被告と未成熟子二名の精神的、社会的、経済的生活に対する配慮の必要性に対して当然に劣後すべきものとは即断し難い ・前訴判決後におけるY女の行動は、いずれもX男を困惑ないし翻弄させるものであり、このことは子らから父親であるXをかえって遠ざける結果を招来している ○有名な昭和62年9月2日大法廷判決での有責配偶者離婚認容要件は、①長期の別居期間、②未成熟子の不存在、③苛酷状況の不存在の3つでしたが、特に高校生以下の未成熟子がいる場合、有責配偶者からの離婚請求はなかなか認められないと思われていました。 ○しかし、平成6年2月8日最高裁判決(判タ858号123頁)は、「有責配偶者離婚請求で、未成熟の子がいる場合でも、ただそのことだけで請求を排斥すべきものではなく、有責配偶者の責任の態様・程度、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況等を考慮して、請求が信義誠実の原則に反するとはいえないときには、請求を認容してもよい」と柔軟になっています。 ○本件はこの平成6年2月8日最高裁判決の趣旨に沿うもので、この判決も精査する必要が生じました。別コンテンツで紹介します。 以上:1,469文字
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