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有責配偶者の離婚請求を認めた大阪高裁判例紹介1

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平成23年11月11日(金):初稿
○平成23年11月現在、有責配偶者からの離婚請求について調べているとの法学部の学生さんから「有責配偶者の離婚認容要件-裁判例概観」を読まれた上で、3要件が緩和されていながらも平成16年以降に有責配偶者による離婚請求が認容されたケースは見当たらないので、あれば紹介下さいとのメール頂きました。

○そこで久しぶりに有責配偶者の離婚事案判決データベースを調べましたが、確かに平成16年以降は、有責配偶者からの離婚請求が認められた事案は、余りありません。一審では認められても控訴審では逆転したケースもありますが、一審で棄却されながら、控訴審で認容された事案もありましたので紹介します。但し、裁判所の和解勧告に従い一部和解が成立した上での判決です。
大阪高裁平成19年5月15日判決(判タ1251号312頁)です。

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主文
1 原判決を取り消す。
2 控訴人と被控訴人とを離婚する。
3 控訴人と被控訴人との間の長男A(判決当時18歳)及び二男B(判決当時16歳)の親権者をいずれも被控訴人と定める。
4 控訴人は,被控訴人に対し,前項記載の子らの養育費として,本判決が確定した日から子らがそれぞれ満20歳に達する月まで1人当たり毎月5万円を支払え。
5 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 
 
事実及び理由

第1 当事者の求める裁判
1 控訴人
 主文と同旨
2 被控訴人
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は控訴人の負担とする。

第2 事案の概要
1 前提たる事実

 控訴人(判決当時46歳)と被控訴人(判決当時46歳)は,昭和61年2月に婚姻届出をした夫婦である。
 夫婦の間には,長男A(18歳),二男B二郎(16歳)がいる。
 控訴人は,平成2年9月から,C子(以下「C」という。)と男女の関係を持ち,平成6年5月から,自宅を出て,被控訴人や子らと別居した。
 その後,控訴人は,平成11年7月から,控訴人所有の広島市内のマンションでCと同居するようになり,現在もCと同居している。

 控訴人は,被控訴人に対し,平成5年12月,平成12年6月及び平成13年7月に離婚調停を3回申し立て,平成14年1月には,離婚訴訟(以下「前件離婚訴訟」という。)を提起した。
 前件離婚訴訟においては,平成14年10月24日,有責配偶者からの離婚請求であることを理由に,控訴人の請求を棄却する旨の判決がされた(広島地方裁判所平成14年(タ)第7号事件)。控訴人が控訴したが,平成15年3月20日,控訴人の控訴を棄却する旨の判決がされ(広島高等裁判所平成14年(ネ)第441号事件),控訴人の離婚請求を棄却する旨の判決が確定した。

2 本件の請求
 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,平成17年3月に申し立てた4回目の離婚調停が不調となり,平成17年11月9日,再度提起した離婚請求の訴えである。控訴人は,本件訴訟において,控訴人と被控訴人との婚姻関係は,完全に破綻しており,民法770条1項5号に基づき,控訴人の離婚請求は,少なくとも現時点においては,認容されるべきであると主張した。

3 原審の判断及びその理由の骨子
 原審は,控訴人と被控訴人との婚姻関係は,控訴人の不貞行為により,もはや修復不可能な程度に破綻してはいるものの,控訴人からの離婚請求を認めることは,今なお社会正義に反し許されないとして,控訴人の請求を棄却した。

 原審の判断の理由の骨子は,次のとおりである。
(1)別居期間は相当長期に及んでいるものの,他方で,未成熟子2人がおり,子らはいずれも病弱で,その養育費の他に高額の医療費負担が必要になる可能性もある。被控訴人は,現在パート収入があるものの,雇用をとりまく情勢が厳しく,失職のおそれもある。

(2)控訴人は被控訴人に対し,現時点では審判で決まった婚姻費用を毎月支払ってはいるものの,過去に長期間滞納したこともあり,仮に離婚請求が認められるならば,今後,判決で決められた養育費の支払を確実に履行していくとは限らない。

(3)控訴人から被控訴人に対して提示する慰謝料額は,150万円であるが,控訴人の不貞行為等による被控訴人の精神的苦痛に対する慰謝料として,150万円は低額である。さらに,離婚に伴う財産分与についても,控訴人は分与すべき財産がないと主張している。

(4)以上の事情等から,現時点でも,有責配偶者である控訴人からの離婚請求を認めることは,被告を精神的,社会的,経済的に極めて苛酷な状況に陥れることになり,到底容認することができない。

4 不服申立て並びに当審における一部和解及び申立ての一部取下げ

 控訴人は,原判決を不服として,本件控訴を提起した。
 当審においては,親権者指定に関する子らの意向及び子らの監護についての離婚した場合の影響の有無につき,家庭裁判所調査官による事実の調査を行った。

 その上で,当裁判所は当審審理の結果を踏まえて和解を勧告し,平成19年3月20日,次の内容の一部和解が成立した。同和解については和解調書が作成され,支払条項に関しては債務名義としての形式が整えられた。

(1)本件離婚請求,親権者の指定及び毎月払いの養育料の各申立てについては判決手続による判断を受けるものとする。
(2)離婚が確定したときは,控訴人は,被控訴人に対し,離婚慰謝料として150万円を直ちに支払う。
(3)離婚が確定し,被控訴人が二男二郎の親権者に指定されたときは,控訴人は,被控訴人に対し,毎月払いの養育費のほかに,二男が大学に入学する場合には,養育費として別に150万円を二男の大学入学が確定した時点で直ちに支払う。
(4)本件の合意は,被控訴人の控訴人に対する訴訟,審判手続におけるその余の請求及び申立てを制限するものではない。
 上記の一部和解の成立に伴い,控訴人は,被控訴人に対し分与すべき財産が存しないことの確認を求める旨の原審以来の申立てを取り下げた。

5 争点及び争点に関する当事者の主張
 争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の3(ただし④を除く)ないし6記載

裁判所の判断は別コンテンツで紹介します。
以上:2,572文字

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