平成22年 6月 1日(火):初稿 |
○平成21年5月28日名古屋高裁判決(判時2069号50頁)の論点の内預貯金についての妻A、夫Bの主張と裁判所の「妻Aは夫Bに対し、471万0643円を支払え。」との注目すべき認定について紹介します。 ○預貯金について、妻Aは控訴審では、以下のように主張しました。 ・夫B名義預貯金残高は、(一審口頭弁論終結時)約138万円であるが、平成19年3月に約373万円、平成20年1月に約61万円が引き出されたもので、別居時の平成16年3月の約572万円を財産分与の対象とすべき ・妻A名義郵便局通常貯金等合計約554万円は妻Aの特有財産である。 ○これに対する夫Bの主張は以下の通りです。 ・夫B名義預貯金は約204万円で、妻A名義の平成16年3月別居時の残高は約554万円 ・夫B名義の保険・株式合計約219万円、妻A名義の保険・共済は61万円 ○これに対する裁判所認定は以下の通りです。 ・夫B名義預貯金は約204万円、妻A名義預貯金は約554万円 妻A名義預貯金は、特有財産と認めるだけの証拠はない ・夫B名義保険・株式約219万円、妻A名義保険・共済約61万円(+妻取得自動車51万円) ・居住マンションについては1000分の117は妻Aの特有財産で残り夫B名義1000分の883が共有財産として財産分与の対象となり、その価額は1766万円、但し、別居時の住宅ローン残額は約2465万円 ・清算的財産分与対象財産の積極財産合計約2855万円、消極財産合計約2465万円差し引き約390万円の2分の1相当約195万円がA・B1人当たりの金額 ・夫B管理積極財産合計額は約2189万円(居住マンション含む)のところ約2465万円の消極財産(住宅ローン残額)があり、その差額はマイナス約276万円で195万円に対し約471万不足する ・妻A管理積極財産合計額は約666万円で、195万円に対し約471万円超過する ・よって清算的財産分与として妻Bは夫Aに対し約471万円を支払え ○妻AはA名義預貯金は約554万円は特有財産と主張しましたが、B自身の給与等の積立ではないため例え夫の家事分担がなくても特有財産とは認められなかったようです。マンションの頭金に充てた金員は婚姻後勤務している間の給与の積立で且つ夫の家事手伝いによる貢献がないため妻の有財産と認められました。 ○財産分与は、預貯金等の積極財産だけでなく消極財産である住宅ローン等の債務も含めて即ち借金を差し引きいた正味財産を算出し、これを2等分した金額について、多く所持している方が少ない方に分け与えるものです。本件では夫が約2465万円もの大きな負債を単独で抱えて,且つ、その債務負担原因のマンションは妻に貸し与えるべしとの認定になったためバランスを取る意味もあり、妻Aに夫Bへの471万円の支払を命じました。夫Bは裁判所のこの配慮を受け止め上告はせず確定したようです。 ○婚姻中の負債で財産分与の対象として積極財産から差し引かれるものはは、住宅ローン等婚姻生活維持のための負債であり、夫婦のいずれかの一方的利益のための負債は財産分与対象にならず積極財産から差し引かれないと考えるべきでしょう。婚姻生活維持のための負債かどうかの判断は難しいところでしょうが。 以上:1,334文字
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