平成20年 4月28日(月):初稿 |
○「セクハラを受けたと上司を退職に追い込んだ重~いツケ」の話しを続けます。この裁判の判決文は、約4万7000字に及び400字詰め原稿用紙であれば120枚以上の男女問題中編小説のボリュームになっています。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、400字詰め原稿用紙で短編小説が約数枚~80枚程度、中編小説が100枚程度、長編小説が300枚以上とされています。 ○この判決は、事案整理だけで約1万4000字、事実認定に約2万7000字、判断・結論に約6000字をかけていますので、当事者が主張した準備書面及び報告書等の証拠書類は、更に膨大な数になったものと思われます。AB間のメールの遣り取りや、医師の診断書等だけの証拠だけでも膨大な量で、裁判官は判決を書くまで相当のご苦労をされたと推測出来ます。 ○争点骨子は次の5点でした。 1 Aは,Bに対して,h10.8.1(事件日)に性的暴行を加えたか。Bは,外傷性癒着によって,h10.8.14から同年10月下旬までAと交際していたか。 2 Bが外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患したというのは詐病か。 3 本件和解は,公序良俗違反で無効か,あるいは取り消し得べき瑕疵が存在するか。 4 Aの退職と被告の懲戒処分申入れとの間に因果関係が存在するか。 5 Aの損害 ○この争点に対し、判決の結論骨子は以下の通りでした。 争点1 Aは,Bに対して,h10.8.1(事件日)に性的暴行を加えたか。Bは,外傷性癒着によって,h10.8.14から同年10月下旬までAと交際していたか。 結論1 AがBに対しセクシャルハラスメントを加えたことは認められるが、Bの外傷性癒着は存在せず、B自らの意思で,B宅でAと同月14日性的行為、同月29日に性交渉に至り、その後深い交際が2か月近く続いたことから、BはAのセクシャルハラスメント行為については事後的に追認し、損害賠償請求権を黙示的に放棄した。 争点2 Bが外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患したというのは詐病か。 結論2 被告Y1が,PTSDに罹患したかどうかについては,法的観点から評価する限り,疑問が残る。 争点3 本件和解は,公序良俗違反で無効か,あるいは取り消し得べき瑕疵が存在するか。 結論3 Bの行為は権利行使として許される限度を超えた社会的相当性を欠くもので, Bの違法な強迫行為によって本件和解は成立した。 争点4 Aの退職とBの懲戒処分申入れとの間に因果関係が存在するか。 結論4 Bの懲戒処分申立とAの退職との間には,相当因果関係が認められる 争点5 Aの損害 結論5 BはAに対し、不当利得として1006万2500円の返還と支払日から民法所定年5分の割合による損害金の支払と不法行為に基づく損害賠償として6545万3574円の支払義務がある。 以上:1,175文字
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