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離婚訴訟での婚姻破綻の主張と有責性の問題3

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平成20年 2月 9日(土):初稿
「離婚訴訟での婚姻破綻の主張と有責性の問題」で、婚姻破綻の有無は相手方の有責性とは無関係との裁判例の先例となった最高裁判決は、
上告代理人弁護士青野実雄の上告理由第一点について。
 民法七七〇条五号にいわゆる『その他婚姻を継続し難い重大な事由』とは、同条一、二号のように必ずしも夫婦の一方の責に帰すべき事由であることを要しない。従つて、夫婦いずれの責にも帰すべからざる場合、又は、夫婦双方の責に帰すべき場合もまたこれに包含されること勿論であつて、原判決には所論の違法は認められない。それ故、論旨は採るを得ない。

と述べていることを紹介しました。

○この青野実雄弁護士の上告理由第一点とされる上告理由は次の通りです。ちと長くなりますが全文引用します。
青野実雄の上告理由
第一点  原判決は理由を附せざるか又は理由に齟齬がある。
 原判決はその理由の結論として、「以上の事情は控訴人と被控訴人の婚姻はこれを継続し難い重大な事由があるというべく、しかもその事由は一部は性格の相違や生活困窮というような両者いづれの責にも帰し難いところに原因があると見られると同時に、他の一部は当事者双方の責に帰しうべき事由と見られることは前記認定事実に徴し自明であつて、控訴人が子女の幸福を願う心情は諒とすべきであるけれども、右事情の下では被控訴人の請求を認容せざるをえず、原判決は正当で、本件控訴は棄却すべきである。」と判示するも、

右判示は第一段に於て「以上の事情は控訴人と被控訴人の婚姻はこれを継続し難い重大な事由がある」と認定しながら、

第二段に於て「しかもその事由の一部は性格の相違や生活困窮というような両者いずれの責にも帰し難いところに原因があつたと見られる」と認定し、

第三段に於て「と同時に他の一部は当事者双方の責に帰しうべき事由と見られることは前記認定事実に徴し自明であつて」と認定し、第一段の全部的肯定は第二段及び第三段の認定により全部的否定の判断がなされているのである。

然らば第四段の「控訴人が子女の幸福を願う心情は諒とすべきであるけれども、右事情の下では被控訴人の請求を認容せざるをえず」との全部的肯定が生れる道理がない。

 右判示は判断に自家撞着があり、これに依つては何故に被控訴人の請求を認容せざるをえないか不明にして、納得することができない。いやしくも被控訴人請求の離婚を認容するにおいては、その原因又はその責任が控訴人にありとする、それ相当の理由がなければならず、又はその理由を明かにしなければならない、それなのに原判決はその理由を説明していない。

 右は事実認定に対する何等の理由をも附せずして被控訴人の請求を認容したものに等しく、右判示はそれ自体、民事訴訟法第三九五条第一項第六号にいう、判決に理由を附せないか又は理由に齟齬があるといわざるを得ない。


○この上告理由のポイントは、
いやしくも被控訴人請求の離婚を認容するにおいては、その原因又はその責任が控訴人にありとする、それ相当の理由がなければならず、又はその理由を明かにしなければならない」であり、端的に言えば「婚姻破綻+離婚請求される者の破綻についての有責性」が離婚認容の要件であると主張しています。

○これに対し最高裁は、「『その他婚姻を継続し難い重大な事由』とは、同条一、二号のように必ずしも夫婦の一方の責に帰すべき事由であることを要しない。」として「婚姻破綻」だけで足り「離婚請求される者の破綻についての有責性」は必要ないと端的に答えています。

○ですから例えば夫が長期間の別居を理由に「婚姻破綻」による離婚を請求した場合、妻が長期間の別居に至った理由について、例えば夫の暴力に耐えられなかったからとか、女癖が悪かったからだとか、専ら夫のせいで別居に至ったので自分の責任ではないから「婚姻破綻」にはならないとの答弁は無意味になります。

○但し、夫が他に女を作って別居したもので夫が有責配偶者であるとの主張については、有名な昭和62年9月2日大法廷判決があり、この点については、「有責配偶者の離婚について」に説明しています。有責配偶者の問題は更に詳しく検討したいと思っております。
以上:1,715文字

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