平成19年 8月23日(木):初稿 平成25年11月25日(月):更新 |
○「離婚の際の財産分与-離婚後扶養・慰謝料も含むか」で離婚給付には、①夫婦共同財産の清算、②離婚後の扶養、③離婚慰謝料の3つあると説明しましたが、具体的給付金額の算定は、この3つを包括して検討するのではなく、個別に検討するのが妥当とされています。 ○②の離婚後扶養金額は、原則は無しであるところ、要扶養者が高齢・病気・子の監護等の類型に応じて離婚後生計維持のための必要額を算定します。③の慰謝料は、離婚原因、有責性の程度、婚姻期間、年齢等を総合考慮して離婚による精神的苦痛を慰謝するに足る金額を算定します。 ○問題は①夫婦共同財産の清算で財産分与の中核をなすものですが、その割合については実務上は原則2分の1とされています。裁判例における抽象的基準は、共同財産形成に対する夫婦双方の協力の度合い(寄与度)に応じて清算割合を決めるとされていますが、実務では原則2分の1から始まります。 ○これについて通常財産分与を主張される夫側では妻側に対し、妻としての勤めを十分果たさず内助の功が2分の1もあったとは評価出来ないから妻の取得割合は2分の1には達せず、せいぜい4分の1だというような主張がよくなされます。 ○しかし妻としての勤めを十分果たさなかったと言う主張に対し妻側は当然猛反発して、双方の言い分は真っ向から対立しますが、婚姻期間が長ければ長いほど、妻としての勤めを十分果たさなかったという事実を立証することは不可能に近く困難であり、結局は原則の2分の1にならざるを得ません。 ○よく疑問が出されるのが、夫が事業家で大変な遣り手で20年間の婚姻期間中に10億円もの財産を取得した場合でも専業主婦の妻には2分の1の5億円の財産分与請求権があるのかというものです。仮に婚姻期間20年間の平均的な共同財産が2000万円とすると平均では1000万円にしかならないのにたまたま遣り手の夫で財産を多く形成すればその半分が財産分与の対象になるのは不公平ではないかとの疑問です。 ○夫が高額所得者でも原則は2分の1と考えざるを得ないと思われます。財産を生み出すという意味で価値ある夫への家事労働による内助の功の価値も高くなると考えるべきでしょう。この点に関する学説は ①婚姻中の役割分担によって得られた経済的利益の不均等を是正するために平等の割合で清算する。 ②婚姻共同生活の所得活動・家族のための経済的活動・家族のための肉体的・精神的活動は法的には平等であり、内部分担のいかんにかかわらず、離婚時には平等に分かち合うべき ③婚姻費用共有説により原則平等 などがあるとのことです。尚、私が所属するMLで聞いたもので、その出典は現時点では不明です。 ○しかし、裁判例では、「高額所得者夫への財産分与請求で妻の寄与割合3割とした判例」、「超高額所得者夫への財産分与請求で妻の寄与割合を5%とした判例」もあり、夫の財産の程度によっては必ずしも、原則2分の1ではないようです。ケースバイケースで考える必要があります。 以上:1,227文字
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