平成18年12月20日(水):初稿 |
○「離婚後親権者母が子供との面会拒否した責任」に記載したとおり、父母の離婚に当たって子供との面接交渉について取り決めをしたにも拘わらず、親権者の母の父に対する感情的わだかまりのために取り決めた面接交渉を拒むことが例がよくあり、この場合、母の首に縄を付けて子供を連行して強制的に面接交渉を実現する方法はありません。 ○別居した妻に対し同居せよとの審判が下されることがありますが、この審判も強制的に実現する方法はなく、妻に対し別居一日に付き金1万円支払えと言う形で間接的に強制する執行方法もありません。私はこの夫婦の場合と同様に子供との面接交渉の取り決めについての間接強制も許されないと考えていました。 ○ところが今般判例をよく調べたら実務の大勢は夫婦の同居と違って、面接交渉については間接強制が認められていました。例えばある事案で原審の神戸家裁龍野支部は「面接交渉においては、子の意向を出来る限り尊重する必要があり、また現に未成年者を監護している親の反対を押し切って面接交渉を強制的に実現することはこの福祉に反する可能性が高いので、面接交渉の義務については、その方法の如何を問わず、強制執行をすることは許されない」としており、私もこの考えを支持していました。 ○ところがこれに対する抗告審の大阪高裁平成14年1月15日決定は、「家庭裁判所の調停又は審判によって、面接交渉権の行使方法が具体的に定められたのに、面接交渉義務を負う者が、正当の理由がないのに義務の履行をしない場合には、面接交渉権を行使できる者は、特別の事情がない限り、間接強制により権利の実現を図ることができるというべきであるとした上、間接強制の申立てに対する決定をするために相手方(債務者)の審尋が必要である」として、原決定を取り消し、差し戻しました。 ○差し戻し後神戸家裁では「正当の理由」、「特別事情」を審理し、何れもこれらを否定した上で、決定告知日以降に期日が到来する面接交渉義務につき、不履行1回につき金20万円の支払を命じる決定を出し、これに不服の母側は高裁、最高裁に不服申立をしましたが、何れも棄却されました。 ○実務の大勢は面接交渉実現のための間接強制を認めているようですが、その論拠は、夫婦の同居を強制することは間接強制であっても債務者の人格や自由を著しく侵害するおそれがあるが、面接交渉においてはそのようなおそれはなく子供の福祉にとって非監護親との交流も重要なので間接強制を認めて然るべきとします。 ○私自身は、上記の通り間接強制否認説を支持しており、その理由は①面接を拒否する母は精神的に未熟で父に対するわだかまりが強く残っている例が多いこと、②このように嫌がる母に対しお金のプレッシャーで無理矢理面接交渉を実現することは母の父に対する反感を強めるばかりでさらなる精神不安定を招くこと、③この母の精神的不安定は一緒に暮らす子供に反映し母と子の精神的安定を害し子の福祉に反する結果となる可能性が強いこと、④子は母と圧倒的に長く一緒に生活するもので父との面接はごく一部に過ぎず小学生位になれば手紙や電話での父子の交流も可能であること、⑤離婚後最も重要なことは一緒に生活する母子の精神的安定であることなどです。 以上:1,330文字
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