平成18年 3月20日(月):初稿 |
○しつこく「妻と別れて君と結婚するとの誓約書」の効力の話を続けます。 結婚は、戸籍法の定めに従って婚姻届出をすることで成立し(民法739条)、その結果、夫婦となって同じ姓を名乗り(同750条)、同居してお互いに協力し扶助しなければならない義務を負う(同752条)ものです。 ○婚約は将来結婚するという約束ですが、民法の条文には全く定めが無く、明治時代には、人の自由を奪う約束事で法律上は無効なんて言う判例もありましたが、大正時代になって将来に適法な婚姻をすることを目的とする契約として有効と認められました。 ○しかし婚約が有効だとしてもその効果は婚約を正当な理由無く破棄した者に対し慰謝料等の損害賠償義務を負わせるだけであり、戸籍法の定めに従って婚姻届出をせよと言う結婚の強制まで認めるものではありません。婚姻届出はあくまで本人の自発的自由な意思によって行わなければ有効ではありません。 ○婚姻成立後の同居義務も同様です。中には同居せよと言う裁判(審判)例もありますが、たとえ同居せよと言う審判が出されても同居を強制的に実現する方法はなく、結婚とはあくまで当事者の自発的意思が無ければ実質的な継続は不可能で、この自発的意思は強制によっては実現できません。 ○ですから「君と結婚する」と言う誓約書を書かせてこの誓約書の圧力によって結婚を迫ること自体があくまで自発的意思で行うべき結婚とは相矛盾するものであり、このような誓約書を書かせなければ結婚できるかどうか不安と思う相手は結婚相手として相応しくありません。こんな相手と無理に結婚しても到底幸せな結婚生活が送れるとは思えません。 ○又結婚しても嫌になって出て行かれて別居になった場合、別居後も婚姻費用分担義務がありますので生活費の負担を強制的に実現することは可能ですが、出て行った相手を無理矢理連れ戻し強制的に同居を実現する方法もありません。要するに同居が継続できるかどうかはお互いの腹一つです。 ○このように結婚とは実は脆いものでその継続はお互いの「意思」にかかっており、その意思は誓約書などで実現できるものではありません。 ○「妻と別れて君と結婚するとの誓約書」の効力の話に戻りますが、妻との間の婚姻関係が完全に破綻し事実上の離婚状態にある場合に限って婚約の成立が認められるケースもあるはずです。妻ある男性との重婚的内縁関係の成立を認めたケースは、妻との婚姻関係が破綻していた場合だからです。後日内縁の話しを続けます。 以上:1,019文字
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