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不倫の法律-約束違反説

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平成12年 6月 1日(木):初稿 平成17年 1月 8日(土):更新
■初めに
前回は、不倫の法律構成として、日本の伝統的独占使用権侵害説を紹介しました。今回は、アメリカやイギリスでの主要な考え方である、約束違反説を紹介します。

■不倫の法律構成その二-約束違反説
 結婚によって夫婦となった男女は、お互いに不貞行為はしないという貞操義務を負うことは独占使用権侵害説と同じです。しかし、約束違反説では、結婚によって貞操義務を負うのは、あくまで当事者同士の約束の結果に過ぎず、当事者以外の第三者までは拘束しないと考えます。従って、間男、間女は約束はしていないので約束違反はなく、原則として損害賠償請求は出来ません。
 私は、この考え方の基本には、人が人を独占して使用するなんて、人間を物と同じように扱うものであり、人の尊厳をないがしろにするものでおかしいという考え方が横たわっている思っております。

 日本においては、妻の不倫は、江戸時代においては不義密通として不倫相手と共に打ち首にされ、明治以降も戦前までは姦通罪として処罰されていました。ところが戦後、妻のみ不倫を姦通罪として処罰するのは平等違反との議論が出て妻の姦通罪は廃止されました。この時、夫にも姦通罪を適用すべきと言う議論もあったそうですが、それでは国会が空になるとのことで見送られたそうです。

 このように日本では独占使用権侵害説の立場で、間男、間女に対し、当然損害賠償請求できると考えられてきました。
 しかし、英国ではとっくに間男・間女に対して訴える権利は廃止され、アメリカ連邦最高裁判所でも一九六九年に、配偶者が第三者と性的交渉を持つことは「自由意思」である限り憲法で保障するプライバシー権であると判示し、半分以上の州は間男・間女に対する損害賠償請求を認めておりません。

 日本においても夫が第三者の女性に無理矢理迫って性的関係を結んだ場合にその夫の妻から第三者の女性に対する請求を棄却され、又夫が妻の不貞を許した場合、妻の不倫相手に対する夫の請求が大幅に制限された裁判例があったところ、平成八年三月二六日、最高裁は、夫婦関係破綻後に、夫婦の一方と男女関係を持った第三者には不法行為責任が生じないと判示し、間男・間女に対する請求は制限されつつあります。(以下、次号に続きます)。(平成14年 4月 1日記)
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