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第6章意匠権侵害訴訟1 井上順子

平成17年 8月 6日:初稿
第1節 意匠法の概要

1 意匠法制度の必要性と意匠法の目的
意匠法第1条「この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする」
・「意匠」の意義・・・「物品(物品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」
いわゆる「デザイン」よりも狭い。
・意匠権者 → 業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する(意23)

・意匠制度の趣旨
①意匠を模倣盗用されないようにして創作意欲の減退を防止
②競業秩序維持→様々な意匠が登場
→需要者の購買意欲喚起→産業の発達

2 意匠の意義と成立要件
(1)意匠の意義(既述)
(2)意匠の成立要件

(a)「物品」の意味と意匠との関係
・意匠は「物品」を離れては考えられない。願書の必要的記載事項。
・「物品」の範囲は意匠法上保護に値するかという見地から決まる。
・従来,「有体動産であって経済的に一個のものとして独立して取引対象となるもの」とされていたが,平成10年改正で「部分意匠制度」が導入された。

<物品>
・形あるもの(「形状」の意味づけと重なる)
×ネオンサイン,花火,光線,液状物,粉状物,粒状物(器によって形状変わる)
・動産
○組立家屋,電話ボックス(工場によって大量生産,現場への取付のために移動可能)

・物品の部分(平成10年改正)
○スプーンの柄,ハンドバッグの取っ手,チェアの肘部分
*「物品の区分」(意7条→経産省令)
登録出願書の「意匠に係る物品」の欄に意匠法施行規則7条別表第一に掲げる「物品の区分」にしたがって具体的な名称を書く。
各区分に属さない場合には,物品の使用目的,使用状態など物品の理解を助ける説明を「意匠に係る物品の説明」欄に記載。
物品の区分に従って意匠毎に登録出願しなければならない(一意匠一出願原則)

《論点》意匠と物品の理論上の関係
(ア)創作説 → 可分説
意匠の本質はデザイン。物品は素材にすぎない。意匠と物品は可分

(イ)混同説 → 不可分説
物品それ自体が意匠。

(ウ)需要説 → 結合説
需要の対象は物品。デザインは物品の付加価値を高める役割。物品とデザインは分離可能。
しかし,需要増大価値はデザインと物品との結合によって決定されるので,意匠と物品は結合関係。

(b)「形状」の意味
・外部から観察できる物品の外形。平面的,立体的問わず。一定の形を具備し,かつ,形状が特定できる必要がある。気体や液体は不定形であって×。
・質的な面と量的な面
質:ざらつき,丸み,角張った
印象が大切。質は,場合によっては「模様」となることもある。
量:大きさ,面積,体積(数量表示)

Q 技術的効果を得るための技術的形状は実用新案か意匠か
:問題の所在(かつて) 
意匠登録出願には登録請求の範囲の記載が不要で出願しやすいことから実用新案の代用として用いられがち

技術的効果のみを目的とし,その必然的結果として生じた形状にかかわる考案は実用新案として保護すべき。
形状に「美感」をおこさせるものがなければ意匠による保護は不可。

平成10年改正で「機能のみに基づく意匠」の不保護明定(意5条3号)。物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠(衛星放送受信アンテナ用反射鏡,規格化されたソケット形状やコネクター)。拒絶理由,無効理由(意48条1項1号)

(c)「模様」の意味
・形状の表面に表れる線図(線書きの図形),色分け(線によって仕切らず塗り分けたもの)またはぼかし(色の境目をぼんやりさせて自然に色が移るよう見せたもの)。
・意匠登録出願には物品の存在が不可欠であるから,模様はそれ自体では権利化されない(例外 織物地,レース地の素材(いわゆる「地もの」))。
・《論点》装飾文字は保護対象か

カップヌードル事件(最判昭55.10.16判時986.46)
意匠登録無効審判請求事件(意匠に係る物品は「包装用容器)」
~争点~
容器表面に図案化されたカップ及びヌードルのローマ文字を左右に重ね合うように構成した図形は「模様」にあたるか
□登録無効審決請求(特許庁)
容器形状自体は公知であるとしても,文字の構成態様に創作性があるなどどして「模様」性を認める。審判請求不成立。
□審決取消訴訟(東京高裁)
文字本来の言語伝達手段としての機能を喪失しているような場合には「模様」としての創作性を認める余地があるが,「CUP」「NOODLE」は文字として読み取りが十分可能であり,文字本来の機能をいまだ喪失していないので「模様」認められない。
→可読かどうかという文字機能の消失の有無を基準として「模様」該当性を判断。
□最高裁 東京高裁を正当とし上告棄却。

(d)「色彩」の意味
受けた光の反射光によって人間の目に映る明るさやいろどり,あざやかさのこと
・色の3属性 
「明度」明るさの度合い ex.明色 暗色
「色相」色味 ex.赤みがかっている,黄色みがかっている
「彩度」色の鮮やかさ ex.清色 濁色
・3属性を持つ色=有彩色
・明度のみを有する=無彩色 ~白灰黒の系統に属する色
・以上に加え,意匠法上は透明色と金属色も含む。これも美感を左右するため。

・意匠には,①形状単一,②形状+模様,③形状+色彩,④形状+模様+色彩の4種類がある。

Q 形状同一で模様が異なる場合
→登録意匠が形状だけからなっている場合,類似性が認められよう。

Q 形状同一で色彩が異なる場合
→類似性が認められよう。

(e)「視覚を通じて美感を起こさせる」の意味
・「視覚を通じて」→目で捉えられるもの。視覚以外の感覚でしか把握できないものは×。肉眼で識別できないほど微視的な物品の形状も×(ex.砂糖一粒)。
・「美感を起こさせる」感性にかかわるので画一的尺度を持つことが難しいが,大きく分けて次の3説がある

(ア)積極的意味付け説(通説)
審美的な価値がなければならない。ex.趣味感を与えるもの,快感を与えるもの,美的処理の施されたもの,1つの秩序あるまとまりを感じさせるもの

(イ)消極的意味付け説
注意喚起力があれば足りる。ex.技術的又は機能的なものでないもの

(ウ)不要説
「美感」の字句は法文上の蛇足にすぎない。

以上:2,540文字

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