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借主従業員の賃借建物内自殺につき責任否定判例紹介1

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平成23年11月23日:初稿
○「賃借建物で自殺があった場合の賃借人の責任」で紹介した賃借人である会社の従業員が賃貸建物内で自殺することが直ちに貸主に対する不法行為を構成するものではないとして不法行為責任を否定するとともに、同様に賃借人会社が本件賃貸借契約に基づく返還義務の付随義務として従業員が本件室内で自殺しないように配慮する義務を負わないとした平成16年11月10日東京地裁判決全文を紹介して欲しいとのリクエストがありました。珍しい事案ですので以下に紹介しますが、長い判例でコンテンツを複数に分けます。

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平成16年11月10日東京地裁判決 平成16年(ワ)第10822号損害賠償請求事件

   主  文

 1 被告は、原告X2に対し、5万円及びうち2万5000円に対する平成16年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 3 訴訟費用は原告らの負担とする。
 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
 
   事実及び理由

第1 請求
1 主位的請求

 被告は原告らそれぞれに対し、327万5000円及びうち325万5000円に対する平成16年4月1日から、うち2万5000円に対する平成16年6月3日(訴状送達の日の翌日)から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 予備的請求
(1)被告は原告X1に対し、325万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被告は原告X2に対し、330万円及びうち325万円に対する平成16年4月1日から、うち2万5000円に対する平成16年6月3日(訴状送達の日の翌日)から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は、原告らが被告に対し、建物の一部を賃貸していたところ、被告の従業員が同建物内で自殺したため、原告らが同建物の敷地を低価格で売却せざるを得なくなったので、その差額等を損害であるとして、債務不履行(賃貸借契約に付随する義務違反)又は不法行為に基づく損害賠償を請求する事案である。

2 当事者の主張
(主位的請求の請求原因その1:債務不履行責任)
(1) 当事者

〈1〉原告らは、別紙物件目録1記載の土地(以下「本件土地」という。)及びその土地上に存する同目録2記載の建物(以下「本件建物」という。)を各持分2分の1ずつ共有している。

〈2〉被告は、タクシー業を営む会社である。

(2) 賃貸借契約
〈1〉原告らは、被告に対し、平成11年9月27日、本件建物の2階202号室(以下「本件貸室」という。)を、賃貸期間同年10月1日から平成13年9月30日まで2年間、賃料月額6万3000円、共益費月額1000円、使用目的被告の従業員の寮、入居者は賃貸借契約時点で入居している被告の従業員に限定という約定で貸し渡した(以下「本件賃貸借契約」という。)。

〈2〉本件賃貸借契約は、平成13年9月30日が経過したことで法定更新された。

〈3〉本件賃貸借契約に際し、原告X2(以下「原告X2」という。))が原告X1(以下「原告X1」という。)を代理して契約締結を行った。

〈4〉本件賃貸借契約書の貸主は、原告X2だけであるが、「相手方が本人のためにすることを知り又は知りうべかりしとき」はその意思表示の効果は本人に帰属するところ(民法100条但書)、本件建物は、原告らが持分各2分の1で共有するものでありその旨登記されていること、原告らが同居していること、原告らが実の親子であること、被告が資本金5000万円を超え、車両104台、運転手250名、事務職を含めた従業員270名を擁する横浜でも有数のタクシー会社でもあることからすれば、被告において、本件賃貸借契約の貸主が、原告X2のみではなく原告X1も表示したことを知り得べきものであるから、その効果は原告X1にも及び、賃貸人は原告らということになる。

(3) 合意解約成立
 原告らの代理人である株式会社a(以下「a」という。)は、被告に対し、平成16年1月、本件賃貸借契約につき、解約の申入れを行い、被告がこれに応じたため、賃貸期間を同年3月31日までとする合意解約が成立した。
 解約申入れは、本件建物を解体して更地にして売却することを告げて行ったものであり、本件建物は原告らの共有であるから、原告らのために行ったものである。

(4) 被告従業員の自殺
 平成16年3月30日、本件貸室に入居していた被告の従業員(A。以下「A」という。)が、同室内で首吊り自殺(以下「本件自殺」という。)を行い、同日その事実が発覚して警察を呼ぶ騒動となった。

(5) 債務不履行責任
 被告は、原告らに対し、本件賃貸借契約の合意解約により、本件貸室を平成16年3月31日までに明け渡す義務を負うことになったものであり、この債務に付随して、本件貸室の明渡しが円滑に行えるようにする債務又は本件貸室の明渡しが終了するまで、その建物に入居させていた従業員が本件貸室内で自殺しないように配慮する義務を負う。
 本件自殺により、同月31日までに本件貸室を明け渡すという債務及び明渡しを円滑に行えるようにするという債務は不履行となった。

 この債務不履行は、被告の従業員が自殺したという行為によりもたらされたものであり、被告は、不注意によりその従業員が本件貸室内で自殺することを予見できず、かつ、その自殺を防止するための結果回避措置を執らなかったという過失があるので、信義則上、被告自身の過失と同視すべきものであり、被告の責めに帰すべき事由によるものである。

(6) 損害
〈1〉株式会社b(以下「b」という。)は、原告ら(その代理人であるa)に対し、同年2月23日、本件土地を2150万円で買い付けたい旨の申入れをしており、原告らとbとの間では、本件貸室の入居者が退去した時点で売買契約を締結することが合意されていた。

〈2〉bは、本件自殺を知り、たとえ売買代金額を減額しても本件土地が自殺者の出た土地であることから、「事故物件」に当たるとして、買付申入れを撤回した。

〈3〉そこで、原告らが新たに本件土地を売却に出したところ、有限会社c(以下「c」という。)及び株式会社dが、1500万円で購入する意思を示し、同年5月15日、原告らは、cに対し、本件土地を更地として1500万円で売却し、cは原告らに対し、同月25日同代金を支払った。

〈4〉原告らは、本件自殺がなければ、本件土地を2150万円で売却することができたのに、本件自殺により、本件土地を1500万円で売却せざるを得なくなったのであるから、その差額650万円(各原告はその2分の1の325万円ずつ)の損害が発生した。

〈5〉土地上の建物内で自殺者が出た場合、土地の売買代金額が低下することは、自殺から通常生ずべきものであり、土地の買付意思を表明していた者が、買付意思を撤回すること及び新たに買付意思を表明した者が提示する買付価格が相当程度低下することは自殺当時に予見可能であるから、本件自殺と上記650万円の損害には相当因果関係がある。

〈6〉また、被告の債務不履行により、原告らは、被告が本件貸室明渡しに伴い収去すべき粗大ゴミ処理費用として5万円(原告らそれぞれ2万5000円)の支出を余儀なくされるという損害を受けた(aが同年5月10日原告らに代わり支払った。)。


以上:3,082文字

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