平成20年 6月19日(木):初稿 |
○「HP作成代金請求事件判例紹介1、2、3」で紹介したHP作成代金200万円の支払請求訴えを出し最終的には、200万円の支払を命じる判決を受けた事件は、当初相談を受けた時点では、以下の理由で、訴えを出しても請求を認められるのは大変難しいと判断した事案でした。 ○HP作成契約は、請負契約に該当し、民法第632条(請負)で「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と規定され、請負者による仕事の完成とそれ対する注文者による一定の対価の支払約束の成立が必要で ○請負契約の典型例は、建物建築請負工事契約ですが、私の経験では、建築請負で一番争いが多いのは追加工事についての代金額で、例えば当初2000万円で契約した建築請負工事が、工事途中で注文者から色々注文が出されて、最終的な工事代金が500万円増えて2500万円になった場合、請負人が2500万円請求しても注文者が2000万円しか支払義務を認めず、追加工事分500万円ば争いになります。 ○この場合、請負人としては、500万円分の追加工事についての仕事の完成とそれ対する注文者による一定の対価の支払約束を主張・立証しなければなりません。具体的には注文者の追加注文があったことを立証するため追加工事についての見積書の提出とそれに対し注文者が了解して、追加注文書を交付したことを立証する必要があります。更に、仕事の完成の立証のために追加部分についての注文者の納品受領書が必要です。 ○ところが、工事が始まってしまうと、細かな追加注文については、いちいち見積書を作り新たに発注書を取ることをせず、注文者は追加注文とは意識せず即ち当初契約の範囲内との意識で注文し、請負者は当初の契約の範囲外即ち追加工事の発注と意識して工事を行い、最終的工事代金が注文者2000万円、請負者2500万円と500万円のずれが生じます。 ○請負者が裁判所にこの500万円の追加工事分代金の支払を命じて貰うためには原則として追加工事の発注書が必要ですが、争いになるのは、それが無いことが原因です。このような場合、弁護士に相談しても、500万円の追加工事の存在とそれに対する対価支払約束をどうやって証明するかが問題になり、その証明手段がないときは、訴えを出しても弁護士費用が無駄になる可能性が高いことを指摘すると諦める例が多くなります。 ○HP作成という請負契約の事案は、先ず当初原告側で作成した見積書について被告側では見たこともないと主張し、契約書は、原告が原告側の記名押印したものを持参しましたが、被告の記名押印はありません。更に作成したHPも既にネット上にはありません。請求書についても被告側は見たこともないと主張し、見積書、契約書、請求書いずれも被告側に到達したとの証拠はありません。正に訴えを出しても弁護士費用が無駄になる可能性の高い事案でした。 以上:1,224文字
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