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映画”フライト”を観て-刑事犯罪者としての刑期に疑問

平成25年 3月25日:初稿
○「映画”フライト”を観て-アル中ダメ男の物語でも秀逸」を続けます。
名優デンゼン・ワシントン氏演じるウィップ・ウィトカー機長の行為は、犯罪としてみた場合、日本法では、航空法第70条(酒精飲料等)違反で「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に該当し、起訴されたとしても、初犯とすれば執行猶予がついて実刑になることはないはずです。

○但し、私は平成20年度終了と共に刑事事件引退宣言をして、原則として刑事事件は扱わなくなり、ここ4年間は殆ど刑事事件を扱わず、刑事法廷に入ったことがありません。ですから刑事事件の勘が鈍っており、思わぬ勘違い或いは大きな見落としががあるかも知れませんので、私の見解は当てにならないことを宣言した上で、以下、検討します。

○ウィトカー機長は確かに酩酊状態で航空機を操縦しましたが、その操縦自体には過失はなく、むしろ神の操縦術と評価される驚異的操縦法で、平均的・標準的操縦士であれば乗員全員が死亡する事態を回避し、全乗員102名中、犠牲者は旅客4名、乗員2名の6名に止めたのは奇跡と評価されています。

○日本の刑法では第208条の2危険運転致死罪は1年以上の有期懲役の重罪ですが、アルコールの影響で正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、その正常な運転ができなかったことが原因で人を死亡させた場合です。また第211条業務上過失致死罪は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金ですが、あくまで過失が必要で、その過失が原因で人の死亡した場合です。同条2項の自動車運転過失致死罪は、7年以下の懲役又は100万円以下の罰金ですが、これも自動車運転に過失があり、その過失が原因で人が死亡した場合です。

○1年以上の有期懲役という重罪である危険運転致死罪は、あくまで、自動車の運転であり、且つ、アルコールのせいで正常運転ができず、そのために人を死亡させた場合です。ウィトカー機長が、日本の航空機で酔っ払い操縦し、結果として全乗員102名中6名が死亡したとしても、奇跡の操縦で操縦自体に過失がない限り、この死亡との関係では責任がありません。

○責任があるのは、航空法第70条(酒精飲料等)「航空機乗組員は、酒精飲料又は麻酔剤その他の薬品の影響により航空機の正常な運航ができないおそれがある間は、その航空業務を行つてはならない。」との規定に違反したことだけです。ただし、ウィトカー機長の場合は、酒を飲んでも奇跡の操縦ができたのだから「酒精飲料又は麻酔剤その他の薬品の影響により航空機の正常な運航ができないおそれ」がなかったのでこの構成要件にも該当しないとの完全無罪主張もできない訳ではありません。

○ウィトカー機長の行為が、この航空法第70条違反に該当したとしても「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」で、比較的軽い犯罪であり、起訴されたのが初めて即ち初犯ですから、いきなり実刑になることはなく、執行猶予がつきます。しかも、運輸安全委員会公聴会での最終的な証言態度は、情状酌量を訴える大きな材料になります。日本国内法であればどうみても実刑で且つ長期間収用される事態にならないと言うのが私の見解です。

○映画”フライト”説明パンフレット4頁に「事故後、乗務員全員に行われた検査の結果、ウィップの血液中からアルコールが検出されたのだ。それが事故の原因と特定されれば、ウィップは過失致死で終身刑となる。」との記載があります。これも「それが」即ちアルコールによる酩酊操縦が「事故の原因と特定」された場合で、本件はアルコール酩酊操縦と事故は因果関係がないとの設定ですから、終身刑にはならないはずです。

○日本の航空法第70条はアルコール酩酊操縦は「1年以下の懲役」と比較的軽罪ですが、日本とは比較にならない飛行機大国であるアメリカの航空法は「5年以下」或いは「10年以下」位にしているのかも知れません。物語の展開上は、ウィトカー機長には刑務所に入って貰わないと困りますが。
以上:1,619文字

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