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遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は5

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平成24年12月19日:初稿 平成25年 2月25日:更新
○「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は4」を続けます。
被相続人Aの財産は合計1億円あったところ、長男Bに3000万円を生前贈与し(特別受益)、残7000万円の預貯金のみを遺産として残して死去し、Bは7000万円の2分の1相当3500万円をZ銀行から払い戻し、Cも同様に3500万円を払い戻したが、特別受益持戻によってB、Cは各5000万円ずつ取得することになるべきところ、Cは3500万円しか所得出来ず1500万円不足しています。預貯金等可分債権は遺産分割の対象にならないとされており、この場合、分割対象遺産がないので遺産分割調停・審判ができないのかと言う問題です。

○今回は、平成2年7月20日名古屋家裁審判例を紹介します。
事案は、亡Aの相続財産としては預貯金のみで、相続人5名が各5分の1ずつ当然に相続承継していたところ、この預貯金を金融機関から払戻を受けるためには、実務手続上相続人5名全員の印鑑証明書付き署名押印のある払戻請求書提出が必要であるところ、相続人の1名だけが協力しないために家裁での審判を求めたものです。

○これに対し、名古屋家裁審判では、
 以上の認定事実によれば本件遺産は金銭債権であるところ、金銭債権は可分債権であるから相続開始と同時に各相続人の法定相続分に従い法律上当然に分割されることになるものである。
 したがって、本件のように遺産が預金等の金銭債権である場合には、遺産分割の手続は不要であるはずである。
 また、被相続人の遺言がなかったこと、特別受益及び寄与分がいずれもなかったことが記録上明らかである。

と述べて法定相続分に従った預貯金の取得を認めています。

○ここで注意すべきは、
被相続人の遺言がなかったこと、特別受益及び寄与分がいずれもなかったことが記録上明らかである。
と述べているところで、これは、特別受益や寄与分があれば、預貯金の具体的取得割合が違ってくる可能性があることを認めていることです。法定相続分が特別受益や寄与分によって修正されたものを具体的相続分と呼びますが、たとえ可分債権であっても家事審判においては具体的相続分を修正して認定することは可能であり、その修正の結果、相続人間の実際取得分に過不足が出て来た場合、生前贈与によって具体的相続分より多く預貯金債権を取得した相続人には不足する相続人に対して清算義務を生じることは当然の前提と思われます。

○先の事案では、家事審判においては、CがBに対し清算金として1500万円を返還せよとの命令を下すことが出来ると思われます。もし、出来ないとすれば、預貯金債権に関して民法903条特別受益の制度が適用されないとの不合理な結果になるからです。平成7年3月7日最高裁判決(民集49巻3号893頁、判タ905号124頁、判時1562号50頁)や平成12年2月24日最高裁判決(判時1703号137頁、判タ1025号125頁、民集54巻2号523頁)で最高裁は、具体的相続分に関して遺産分割の基準にすぎないとみる遺産分割分説(審判事項説)を取ることを明らかにしています。従って、家裁審判で具体的相続分について審理できることは当然です。
※と希望的観測で記載していましたが、このように単純には割り切れない様です。別コンテンツで説明します

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主 文
 亡Aの別紙遺産目録記載の遺産(預金債権)の、それぞれの元利金について申立人ら及び相手方は各5分の1宛を取得する。
 
理 由
1 申立の趣旨及び実情

(1)被相続人Aの遺産について分割を求める。
(2)被相続人Aは昭和63年12月16日死亡した。そして同人の共同相続人は申立人ら4名と相手方の5名であり、その法定相続分は各5分の1宛であって、同人の遺産は別紙遺産目録(編略)記載の預金債権(元利金を含む。以下「本件遺産」または「本件預金債権」という。)である。
 申立人らは本件遺産について法定相続分である各5分の1宛を取得することに異議はないが、相手方が分割に応じない。
 よって、本件遺産の分割を求める。

2 当裁判所の判断
 本件記録によれば、被相続人は昭和63年12月16日に死亡したこと、同人の共同相続人は同人の兄弟姉妹である申立人ら4名と相手方の5名であり、その法定相続分は各5分の1宛であること、被相続人の遺産は別紙遺産目録の遺産であること、以上の事実が認められる。

 以上の認定事実によれば本件遺産は金銭債権であるところ、金銭債権は可分債権であるから相続開始と同時に各相続人の法定相続分に従い法律上当然に分割されることになるものである。
 したがって、本件のように遺産が預金等の金銭債権である場合には、遺産分割の手続は不要であるはずである。
 また、被相続人の遺言がなかったこと、特別受益及び寄与分がいずれもなかったことが記録上明らかである。


 しかして本件において、本件預金債権の払戻手続を共同でしようとの申立人らの申入れに相手方は応じようとしなかったと、相手方は本件調停手続に出頭しなかったことが記録上明らかであるが、相手方は本件預金債権が被相続人の遺産であることを積極的に争っていないものと認められる。

 ところで、遺産である預金債権等の債務者である銀行等は、共同相続人全員の署名押印のある払戻請求書(そのほかに共同相続人全員の印鑑証明書等の提出も要求される。)の提出がないかぎり、その払戻請求に応じない取扱をしていることは当裁判所に明らかなところである。

 したがって一部の共同相続人のこの払戻手続に対する協力が得られない場合には、その他の共同相続人らが銀行等に対して遺産である預金債権の支払いを請求する場合には、当該銀行等に対して、当該預金等の支払いを求める訴訟をすることを強いられる結果となり、預金等を共同相続した一部の相続人がその預金債権を行使しようとする場合には、その相続人に余計な負担をかけることになることが明らかである。

 したがってこのような場合には、共同相続人は預金債権が遺産として家庭裁判所に対してその分割手続を求めることができるものと解するのが相当である。

 以上の次第で、本件においては、本件遺産(各預金債権について元利合計金額)を各相続人の法定相続分にしたがって、各相続人に取得させる旨の分割の審判をするのが相当である。
 よって、主文のとおり審判する。
 (家事審判官 高橋爽一郎)

以上:2,655文字

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