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民法第903条特別受益制度の基礎の基礎-具体例考察

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平成23年 1月15日(土):初稿
○久しぶりに相続の話題で、民法第903条特別受益制度についての記憶整理と備忘録です。
先ず条文の規定です。
第903条(特別受益者の相続分)
 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。


○この特別受益制度は、相続の実質的公平性を担保するための制度です。シンプルな例で説明すると、例えば被相続人Aが、生前合計1億2000円の預貯金を有し、相続人としてB、C、Dの3人の子供が居た場合、Bだけに、甲銀行の定期預金4500万円を生前贈与して、A死去時の遺産は、乙銀行に対する7500万円の普通預金だけになっていたとします。この場合、残り7500万円だけが遺産分割の対象として、相続人B、C,Dが法定相続分に従って各2500万円ずつ取得出来るとしたのでは、Aが残した財産1億2000円について、C、Dが2500万円のところ、Bが7000万円を取得する不公平な結果になります。

○そこで、Aが生前贈与を受けた金4500万円もみなし相続財産として、相続財産に加え、合計1億2000円の遺産があるものとして、遺産分割の対象とすると言う制度が特別受益制度です。このケースでは、1億2000円に対するAの法定相続分3分の1の価額は4000万円です。そこで、民法第903条2項「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。」との規定によって、生前贈与で既に4500万円を受領したBは、自分の相続分の価額4000万円以上の財産を得ていますので、残り7500万円については相続分がなくなり、C、Dが7500円を等分した各3750万円を取得することになります。

○但し、民法第903条3項「被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。」の規定により、被相続人Aが、Bに対する生前贈与4500万円は、特別の貢献に対する対価などとして、相続財産に加えてはならないとの意思表示をしていた場合、これを持戻免除の意思表示と言いますが、Bが生前贈与で得た4500万円は相続財産に加えなくても良くなり、残り7500万円は、A、B、C3人で等分することになります。この場合、Aが残した合計1億2000万円の財産は、A7000万円、B、C各2500万円に分配されます。

○なお、持戻免除の意思表示はあくまで遺留分に関する規程に違反しない範囲で有効です。この場合、C、Dの遺留分は法定相続分3分の1の半分即ち6分の1ですから、遺留分基礎財産1億2000万円に対する遺留分相当額は2000万円であり、C、Dが2500万円を取得する以上は,遺留分の規定に反しませんので、Bの7000万円取得について、C、Dは文句を言えません。

○以上は,ごくシンプルな例ですが,実務では一筋縄ではいかない種々様々な論点が生じます。先の4500万円の生前贈与が、BではなくBの子Eの場合、このEが代襲相続人となった場合、Bが養子で、養子縁組前に贈与を受けた場合等どのように評価すべきか問題になるケースが色々あり、以降、徐々に検討していきます。
以上:1,575文字

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