平成18年 9月16日(土):初稿 |
○「遺贈は遺留分に負けても寄与分には勝つ」で「『寄与分は遺留分に勝つも遺留分より弱い遺贈には負ける』という複雑な定めになっていることに要注意です」と説明しましたが、この寄与分とは、「寄与分の優先性-寄与分は遺留分に勝つ」で説明したとおり、「民法相続法では昭和55年改正で新設されましたが、相続実務ではそれ以前から採用されていた考え方で、簡単に言えば被相続人の財産形成に貢献した相続人が居る場合、公平相続の観点からその貢献分について法定相続分とは別に特別の取り分を認めるものです。」 ○民法第904条の2は寄与分として、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」と定めています。 ○今回はこの寄与分が認められる要件のポイントを私なりに整理します。 ①寄与分の主体 先ず寄与分が認められる主体は共同相続人に限られます。被相続人Aの長男Bの妻CがAと同居して長年に渡り如何に貢献しても寄与分は認められません。内縁の妻も包括受遺者も寄与分主体にはなれません。相続放棄者は勿論、相続欠格者、被廃除者もなれませんが、結核や廃除による代襲相続人は被代襲者の寄与も代襲者本人の寄与も主張できることに注意が必要です。 ②寄与の態様-法は、「労務の提供、財産上の給付、療養看護、その他の方法」を規定 Ⅰ労務の提供 農林漁業、製造業、加工業等だけでなく医師・弁護士業務等あらゆる業務上の労力ですが、良く問題になるのは農業後継者です。 Ⅱ財産の給付 これは文字通り資金等資産の提供で無償が原則です。 Ⅲ療養看護 これによって付添婦が不要になるなどして財産の減少が防止される程度の療養看護が必要です。前述の長男の妻Cの療養看護は長男Bの療養看護と同視されます。 Ⅳその他の方法 被相続人の財産を維持・増加させるものであれば何でも対象になります。 具体的には家事労働、扶養等がありますが、これらの場合はその程度が良く問題になります。扶養については法に定められた当然の義務履行であり原則として寄与分とは認められないという考えと財産増加・維持に貢献があれば認めるべきとの考えが対立していますが、私は後者の考えでよいのではと思っております。 以上:1,064文字
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