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仮差押手続懈怠等を理由に弁護士が着手金等返還を求められた判決全文紹介2

平成27年 9月15日:初稿
○「仮差押手続懈怠等を理由に弁護士が着手金等返還を求められた判決全文紹介1」の続きです。


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(2) 原告の損害
(原告の主張)
 原告は,被告の債務不履行により,Aに対する5798万円の債権のうち5498万円の回収が不能となった。同種事件の被害金の回収の困難性を考慮しても,上記回収不能額の少なくとも約5パーセントに当たる300万円は,被告の債務不履行と相当因果関係を有する損害である。

(被告の主張)
 原告のAに対する5798万円の金銭債権のうち5498万円の回収が事実上不能となったことは認め,その余は否認ないし争う。

(3) 本件委任契約解除の成否及び着手金に係る不当利得返還請求権の有無
(原告の主張)
ア 原告は,被告に対し,平成22年10月27日ころ,被告の責めに帰すべき事由による債務不履行を理由に本件委任契約を解除する旨の意思表示をした。

イ 弁護士への着手金は,弁護士の委任事務処理に対する報酬の一部前払いの性格を有するものであるから,委任契約が受任者の債務不履行により解除された場合には,受任者は着手金を法律上の原因なく受領したことになり,不当利得返還請求権に基づき,既払いの着手金を委任者に返還すべき義務を負う。

ウ 本件において,被告が本件委任契約に基づき行った業務は,示談交渉,内容証明作成及び不完全な本件債務承認書の作成程度であり,債権回収も5パーセント程度しかされなかったから,着手金105万円の95パーセントである99万7500円は不当利得であり,被告は,原告に対し,同額を返還すべき義務を負う。

(被告の主張)
ア 原告作成に係る平成22年10月28日付けファクシミリ書面が,本件委任契約に係る解除の意思表示であることは否認ないし争う。
 被告は,原告に対し,Aとの連絡手段を失ったと判断した直後の同月20日,Aに対する次なる債権回収手段として仮差押命令申立手続及びその後の本案についてファクシミリ書面により説明を行い,原告本人の意思確認を行ったが,これは,被告が原告に対し,仮差押命令申立手続及び本案提起段階に関する新たな委任契約に関して原告の申込みの意思表示を誘引する行為であった。これに対して,原告は,被告に対し,同月28日付けファクシミリ書面を送付して,仮差押命令申立手続及び本案提起については被告に委任しない旨の回答をしたのであり,これは,原告が,被告からの新たな委任契約の申込みの誘引行為に対して,これを拒絶したものと解すべきである。したがって,これを本件委任契約の解除の意思表示と解することはできない。

イ 本件委任契約は債務不履行解除により終了したものではないから,原告の主張はその前提事実を欠く。
 本件委任契約の範囲がAとの示談折衝及び内容証明郵便の作成に限定されていることに照らせば,平成22年9月末日,被告が,Aへ300万円の弁済を請求したが,これをAに無視され,以後,ファクシミリ書面又は電話の方法によりAとの連絡を試みたものの結果的に連絡の方途が閉ざされ,次の手段としてはAの資産に対する仮差押命令申立手続及び本案提起が考えられるという段階になっているが,その時点で,被告が本件委任契約の委任事務を履行したことにより本件委任契約は終了したと解すべきである。
 仮に,本件委任契約が被告による委任事務の履行により終了したとは評価できないとしても,原告の同年10月28日付けファクシミリ書面は,本件委任契約の中途解約の申入れと解すべきであり,これに対して被告が承諾し,本件委任契約の中途解約合意が成立したと解すべきである。

(4) 委任事務処理費用の精算金の支払義務の有無
(原告の主張)
 本件委任契約に基づく委任事務処理費用は,内容証明の発送費として2000円が使用されたのみであるから,被告は,原告に対し,本件委任契約に基づき,原告が予納した5万円から2000円を控除した4万8000円を返還すべき義務を負う。

(被告の主張)
 本件委任契約に基づく委任事務処理費用の合計額は2万5130円であるから,被告は,原告に対し,本件委任契約に基づき,原告が予納した5万円から2万5130円を控除した2万4870円を返還すべき義務を負うという限りにおいて争わず,その余の部分は否認ないし争う。

第3 争点に対する判断
1 証拠(甲4ないし6,乙3ないし9,証人B,原告本人)によれば,以下の事実が認められる。
(1) 原告は,Aに対し,平成21年2月23日から平成22年2月10日まで元金を保証するとの約束の下投資を行ったが,Aから約定の配当の支払も元金の返済もされないという投資被害にあった。

(2) 原告は,上記投資被害の回復に関して,知人のBからC弁護士の紹介を受け,同年6月1日,同弁護士と面談したが,同弁護士が債権回収に強い弁護士を紹介すると言って被告を紹介したことから,同日中に,被告事務所を訪れ被告と面談した。被告は,原告に対し,着手金は200万円以上となると告げたが,その提示額を一旦150万円に下げ,さらに,105万円(消費税込み)に下げた。その際,被告は,原告に対し,「6000万円取れるか,3000万円取れるか,900万円取れるか分からないけど,直ぐに回収できれば安いものでしょう。」と告げた。原告は,これを了承した。また,原告と被告は,原告が委任事務処理費用として5万円を予納することを合意した。原告及び被告は,本件委任契約書を作成した。

(3) 被告は,同月13日,大阪に居住するAを東京の被告事務所に呼び出し,同人と債務弁済交渉を行った。原告は,上記交渉に際し,被告事務所の隣室で待機していた。
 被告は,原告に対し,本件債務承認書の原案を示し,原告の了解を求めた。その際,被告は,原告に対し,今Aから書面にサインをもらわなければ債権を回収できなくなるかも知れないがどうするかなどと言って原告に決断を迫った。原告は,本件債務承認書の内容のうち分割弁済額が少額であることについて納得がいかなかったが,その内容で本件債務承認書を作成させることを被告に依頼した。

(4) Aは,同月29日,本件債務承認書の約定に基づき,本件指定口座に100万円を振り込んで支払い,被告は,同年7月6日,原告の口座に上記100万円から成功報酬10万円を控除した90万円を振込送金した。

(5) 原告は,Bと共に,同月7日,被告を都内のホテルに呼び出し面談した。その席上,Bは,被告に対し,仮差押申立てを行うこと,マスコミを使って圧力をかけること,刑事告訴をすることなど,より積極的な債権回収手続を採るよう申し向けた。これに対して,被告は,原告及びBに対し,勉強になった,いい話を聞いた,ありがとうございますなどと肯定的な回答をし,特段,上記各手続を採ることができないことやその理由を告げることもなかった。原告及びBは,被告が上記各手続を採るものと理解したが,それ以後も被告は,上記各手続を採らなかった。
(以上に対し,甲第6号証中被告の答弁書には,上記面談に際し,被告は,原告に対し,仮差押命令申立てをすることでかえってAの支払意思を削ぐ結果となり得ることなどの仮差押命令申立手続によることのリスクを丁寧に説明した旨の記載があるが,採用できない。)

(6) 原告は,本件債務承認書の内容では債権回収の実現に不安があると感じ,同月24日,電話で,被告に対し,公正証書を作成してほしいこと,Aの財産調査をしてほしいことなどを申し入れた。

(7) Aは,同月29日,本件債務承認書の約定に基づき(ただし,本件債務承認書上,同月末日に支払うべき金額は特定されてはいなかった。),本件指定口座に100万円を振り込んで支払い,被告は,同日,原告の口座に上記100万円から成功報酬10万円を控除した90万円を振込送金した。

(8) また,Aは,同年8月31日,本件債務承認書の約定に基づき(ただし,本件債務承認書上,同月末日に支払うべき金額は特定されてはいなかった。),本件指定口座に100万円を振り込んで支払い,被告は,同日,原告の口座に上記100万円から成功報酬10万円を控除した90万円を振込送金した。

(9) 被告は,同年9月29日,Aに対し,ファクシミリ書面により,本件債務承認書の約定に基づき,同月30日限り300万円を本件指定口座に振り込んで支払うことを督促した。これに対し,Aは,同月30日,被告に対し,ファクシミリ書面により,資金の工面ができないことを理由に本件債務承認書に基づく同日の支払ができないとして,支払猶予を求めた。
 被告は,同日,Aに対し,ファクシミリ書面により,改めて300万円全額を本件指定口座に振り込んで支払うこと,仮に300万円全額を支払えないとしてもAが有する金員全額を支払うことを求め,支払猶予の申出については,300万円全額について具体的に支払期限を示して弁済予定を提示するよう求めた。しかるに,Aは,被告の上記ファクシミリ書面に対して回答をしなかった。

 被告は,同年10月5日,Aに対し,上記同年9月30日付けファクシミリ書面と同様のファクシミリ書面を送付した。しかるに,Aは,被告の上記ファクシミリ書面に対して回答をしなかった。
 被告は,同年10月8日,Aに対し,内容証明郵便を送付したが,Aはこれを受け取らず,同内容証明郵便は保管期間満了により被告に返送された。

(10) 被告は,同月20日,原告に対し,今後の方針を協議するためファクシミリ書面を送付し,仮差押命令申立手続に係る説明(Aの保有財産の調査方法とそれに要する費用,債権仮差押命令申立手続を被告に委任する場合の弁護士報酬及び費用,債権仮差押命令を得るために必要となる担保金の額等の説明)と原告の意向確認を行った。
 これに対し,原告は,被告に対し,同月28日,ファクシミリ書面を送付し,「被告の判断ミスと信頼性に欠けると判断いたしました」との回答を行い,本件債務承認書の原本と着手金を返還するよう求めた。


 
以上:4,141文字

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