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過失相殺と損益相殺等の前後関係-過失相殺対象損害範囲3

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平成23年 7月 2日:初稿
○「過失相殺と損益相殺等の前後関係-過失相殺対象損害範囲2」で「そんなバカな!」と思った平成元年4月11日の最高裁判決全文を紹介します。
ポイントは、労災保険法第12条の4は、「受給権者に対する第三者の損害賠償義務と政府の保険給付義務とが相互補完の関係にあり、同一の事由による損害の二重填補を認めるものではない趣旨を明らかにしている」との点で、簡単に言えば、被害者は、本来請求出来る金額以上の金額は取れないと言ってるだけで、それでは、本来加害者の支払うべき金額を、労災給付金で立替支払し、加害者の支払債務を免除する結果となっても良いのか、との疑問には何ら答えていません。

過失相殺と損益相殺等の前後関係-過失相殺対象損害範囲2」の例で言えば、被害者Aはあくまで本来の賠償請求権である1200万円以上の支払は受けることが出来ず、加害者Bが、本来支払わなければならない1200万円が、労災給付のお陰で1000万円に減じられても構わないと言うことで、労災給付金500万円の内200万円は,加害者のための支払になることを認め、結果として加害者に200万円の利益を与える「とんでもない」判決です。

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主文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。 
 
理由
 上告代理人○、同○、同○、同○の上告理由第一について
 労働者災害補償保険法(以下「法」という。)に基づく保険給付の原因となった事故が第三者の行為により惹起され、第三者が右行為によって生じた損害につき賠償責任を負う場合において、右事故により被害を受けた労働者に過失があるため損害賠償額を定めるにつきこれを一定の割合で斟酌すべきときは、保険給付の原因となった事由と同一の事由による損害の賠償額を算定するには、右損害の額から過失割合による減額をし、その残額から右保険給付の価額を控除する方法によるのが相当である(最高裁昭和51年(オ)第1089号同55年12月18日第一小法廷判決・民集34巻7号888頁参照)。

けだし、法12条の4は、事故が第三者の行為によって生じた場合において、受給権者に対し、政府が先に保険給付をしたときは、受給権者の第三者に対する損害賠償請求権は右給付の価額の限度で当然国に移転し(1項)、第三者が先に損害賠償をしたときは、政府はその価額の限度で保険給付をしないことができると定め(2項)、受給権者に対する第三者の損害賠償義務と政府の保険給付義務とが相互補完の関係にあり、同一の事由による損害の二重填補を認めるものではない趣旨を明らかにしているのであって、

政府が保険給付をしたときは、右保険給付の原因となった事由と同一の事由については、受給権者が第三者に対して取得した損害賠償請求権は、右給付の価額の限度において国に移転する結果減縮すると解されるところ(最高裁昭和50年(オ)第431号同52年5月27日第三小法廷判決・民集31巻3号427頁、同50年(オ)第621号同52年10月25日第三小法廷判決・民集31巻6号836頁参照)、

損害賠償額を定めるにつき労働者の過失を斟酌すべき場合には、受給権者は第三者に対し右過失を斟酌して定められた額の損害賠償請求権を有するにすぎないので、同条1項により国に移転するとされる損害賠償請求権も過失を斟酌した後のそれを意味すると解するのが、文理上自然であり、右規定の趣旨にそうものといえるからである。

右と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 同第二について
 原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひっきょう、原審の裁量に属する過失相殺の割合の不当をいうものにすぎず、採用することができない。

 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官伊藤正己の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


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労災保険法
第12条の4
 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

2 前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。

以上:1,919文字

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