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2023年05月01日発行第340号”弁護士の定年退職”

令和 5年 5月 1日(月):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和5年5月1日発行第340号”弁護士の定年退職」をお届けします。

○「高齢者は集団自決すべき」との提案があり、論争になっていることはネットで見ていましたが、中身をよく見ることもなく、提案者の言いたことは「自決」=「割腹自殺」ではなく、「自決」=「引退」・「撤退」的な意味なんだろうと勝手に解釈していました。

○アメリカでは定年制がないとのことです。しかし、定年制度は、日本の終身雇用制度が前提にありますので、この前提のないアメリカでは、定年という概念自体がないと思われます。日本では、小泉総理時代に、議員定年制を敷いて、中曽根元総理を無理矢理政界を引退させて話題になったことがありました。この小泉総理時代の自民党議員定年制は、総理が変わって事実上無くなったのでしょうか。麻生元総理も、80歳過ぎても、まだ現役で頑張っていますから。

○アメリカでは、バイデン大統領が80歳で2024年大統領選挙に立候補しています。アメリカでは政界でも定年の概念が無いようです。若いうちは年寄りは早く引退すべきと思っていても、自分が年をとってくると、年寄りも頑張るべきと身勝手に考えが変わるのが普通です。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

”弁護士の定年退職


イェール大学の日本人経済学者が、「高齢者は集団自決すべきだ」なんて主張して、論争になっていました。年を取って、能力的に問題がある人が高い地位に居続けることが、日本をダメにする原因だそうです。還暦を迎えた私なんか、こういう意見を聞くとドキッとしてしまいます。「集団自決」という言葉だけに反応して、意見の中身は見ないで、ただただ批判しているような人がいたのは残念です。

しかし考えてみますと、日本では既にこういう「高齢者の集団自決」の制度があるんですね。それが定年退職制度です。一定の年になると、みんな揃って引退するという、ある意味凄い制度です。これがアメリカになると話が違ってきます。米国には、年齢による差別を禁止する法律まであります。能力の有無に関わらず、単に年を取ったからというだけで無理やり引退させるなどという定年制度は、アメリカでは違法とされるわけです。実際、能力さえあるとされたら、40代のオバマさんでも、80近いバイデンさんでも、大統領になれます。こんなすごい人の話でなくても、普通の会社員でも、基本的に能力に応じて仕事をし、それに見合う給与を貰うというのがアメリカ式ですね。

仕事が出来なければ首になる。自分ができることをして、それにふさわしい対価を貰うという方式なら、別に老人になったからといって、特別に「自決」させる必要は無いわけです。実際日本でも、こういう「完全能力主義」仕事はあります。プロ野球選手や、棋士なんかそうです。藤井総太なんて、二十歳で大活躍です。かつての名人の加藤一二三だって、勝てないとなると強制的に退場となりました。これは、年を取ったから「自決」させられたのではなく、弱くなったから排除されたんです。

こういう世界では、別に定年制度なんて作る必要は無いということになります。一方日本では、普通の会社員の場合、能力が無いからといって、首にすることはできません。弁護士をしていると、経営者の方から「あんなに仕事ができないのに何故首に出来ないのか」と、よく相談を受けます。でも、「仕事ができない」という理由での解雇は、99%認められません。さらに、だからといって給与を下げることもできない。その人の能力に見合った部署に異動させたとしても、給与は下げられないということです。

これって、かなり問題がある制度だと思いますけど、法律は労働者の味方ですからしようが無いんです。その代わりと言いますか、日本で認められているのが「集団自決」たる「定年退職」です。一定の年齢にさえなれば、有無を言わさず首を切ります。ところが、日本において、「能力主義」も「定年制度」も、いずれも適用されていない分野があります。アカデミーの世界や政財界のトップの世界ですね。こういう分野に「定年制度」を入れようというのが、「集団自決」の主張のポイントのはずです。「能力主義」の導入を主張するのではないところが、日本的で面白いなと感じたのです。

一方、今回の論争の中で高齢者の社会からの強制退場を強く非難していた人たちですが、だからといって定年制度廃止を主張しているわけでもないようです。この辺は、「平和憲法改悪反対」と力説する人たちが、自衛隊廃止を主張していないのと同じで、少し変な気もしちゃいます。と、他人事みたいに書いていますが、実は弁護士も定年制度の無い世界なんです。それでも、一人でやっている弁護士の場合、年を取るとだんだん仕事ができなくなりますから、事実上引退することになります。また、大手の法律事務所の場合は、一定のルールがありますから、いつまでも居座るという訳にも行かないでしょう。そうしますと、能力が無くなっても、定年退職無しでいつまでも続けられるというのは、数人の優秀な若手がいる中規模事務所のボス弁護士なんです。そ、それって私じゃないですか。情けないと言われそうですが、なるべく自決したくないのです。

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◇ 弁護士より一言

先日妻と、芭蕉布の展示を見に行きました。技術が途絶える寸前に、人間国宝の平良敏子が復活させた沖縄の織物です。平良さんは昨年101歳で亡くなったのですが、死の直前まで芭蕉布の普及に尽力していました。私も見習って、死ぬまで仕事をしていたいなと思ったのです。あまりに感動したので、妻が素敵だという芭蕉布の帯を購入しちゃいました。 た、たかっ。。。
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