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マンション敷地一部専用使用者に対する使用料支払をみとめた裁判例紹介

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平成28年 7月25日:初稿
○マンションと駐車場の問題の相談を受け,参考判例を探しています。
マンションの管理組合である原告が、マンションの敷地の一部について専用使用権を有する被告らに対して、専用使用料の支払を求めた事案において、マンションの規約について決議した総会の招集手続等に瑕疵はなく、建物の区分所有等に関する法律31条後段の「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす」場合にも当たらないことから被告らの承諾がなくても使用料を定めた決議は有効であるとした平成21年8月26日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)を2回に分けて紹介します。


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主  文
1 被告Y1は,原告に対し,37万円及びうち6万円に対する平成19年8月1日から,うち6万円に対する同年9月1日から,うち6万円に対する同年10月1日から,うち6万円に対する同年11月1日から,うち6万円に対する同年12月1日から各支払済みまで年10%の割合による金員を支払え。
2 被告A株式会社は,原告に対し,18万5000円及びうち3万円に対する平成19年8月1日から,うち3万円に対する同年9月1日から,うち3万円に対する同年10月1日から,うち3万円に対する同年11月1日から,うち3万円に対する同年12月1日から各支払済みまで年10%の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 この判決は,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 主文同旨

第2 事案の概要
 本件は,別紙物件目録記載の建物(以下「本件マンション」という。)の区分所有者全員により構成される管理組合である原告が,本件マンションの敷地の一部について専用使用権を有する被告らにおいて専用使用料を支払わないとして,被告甲山Y1(以下「被告Y1」という。)に対して37万円(未払専用使用料30万円,弁護士費用7万円)及び未払専用使用料に対する遅延損害金の,被告A株式会社(以下「被告会社」という。)に対して18万5000円(未払専用使用料15万円,弁護士費用3万5000円)及び未払専用使用料に対する遅延損害金の支払を求めている事案である。

1 前提となる事実(末尾に証拠の記載がないものは当事者間に争いがない)
(1) 原告は,本件マンションの区分所有者全員により構成される管理組合である。

(2) 本件マンションは,昭和52年にセブンスターマンション株式会社が等価交換方式により建築した建物であり,その敷地は,被告会社及び被告Y1の所有であった(以下,被告会社が所有していた土地を「本件土地1」,被告Y1が所有していた土地を「本件土地2」という。)。

(3)
ア 本件マンションの敷地は,区分所有者全員がその所有する専有部分の床面積の割合に応じて共有しているが,規約により,102,104及び106号室を所有する区分所有者には敷地の一部である別紙配置図の青色部分(以下「青色敷地」という。)の無償の専用使用権が,105号室を所有する区分所有者には同図の黄色部分(以下「黄色敷地」という。)の無償の専用使用権がそれぞれ付与されていた。

イ 被告Y1は,昭和52年8月24日,セブンスターマンション株式会社との間の等価交換契約により,本件マンションの102,104及び106号室の区分所有権を取得するとともに,青色敷地の専用使用権を取得し,以後,株式会社菅原工業所(以下「菅原工業所」という。)が無償で同所を駐車場等として使用してきた。なお,菅原工業所は,家が経営する会社である[乙イ5]。

ウ 被告会社は,昭和52年8月24日,セブンスターマンション株式会社との間の等価交換契約により,本件マンションの105号室の区分所有権を取得するとともに,黄色敷地の専用使用権を取得し,以後,無償で同所を駐車場として使用してきた。

(4) 原告は,平成19年6月3日,臨時総会(以下「本件総会」という。)を開催し,区分所有者及び議決権の各4分の3を超える賛成決議により,昭和60年6月23日に発効したとする「Xマンション管理組合規約」(以下「旧規約」という。)に代えて「Xマンション管理組合法人規約」(以下「新規約」という。)を設定したうえ,「別紙配置図面の斜線部分(青色敷地及び黄色敷地を指す。)の土地について専用使用権を有している者は,別に定めるところにより,管理組合法人に専用使用料を納入しなければならない。」と規定する新規約の14条2項に基づき,平成19年7月1日以降の青色敷地の専用使用料を月額6万円,黄色敷地のそれを月額3万円とする旨の決議(以下「使用料決議」という。)をした。なお,上記金額は,駐車可能な自動車台数を青色敷地につき6台,黄色敷地につき3台とし,1台当たり月額1万円としたものである。

(5) 新規約の61条には,管理費等の徴収につき,「管理組合法人は,第25条に定める管理費等及び第30条に定める使用料について,組合員が各自開設する預金口座から自動振替の方法により第63条に定める口座に受け入れることとし,当月分は当月の末日までに一括して徴収する。」(1項本文),「組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には,管理組合法人は,その未払金額について,年利10%の遅延損害金と,違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して,その組合員に対して請求することができる。」(2項)と規定されている。

2 争点
(1) 新規約14条2項及び使用料決議の効力
(被告らの主張)

ア 総会招集手続の瑕疵
(ア) 本件マンションの原始規約の7条3項には,青色敷地及び黄色敷地の専用使用権につき,「1階に面する敷地の一部を別添のとおり当該区分所有者及び占有者が無償にて専用使用すること。この場合,専用使用を認められた者の同意による場合のほかは変更されないものとする。但し維持その他の費用は当該区分所有者が負担する。」と規定されているところ(以下,この条項を含む規約を「本件原始規約」という。),旧規約は,上記条項を集会の決議を経ることなく改ざんしたものであり,無効である。また,旧規約の別紙とされる「共用部分並びに敷地の専用使用部分の表示」,「共用部分並びに敷地の専用使用部分明細表」及び配置図(以下「別表及び配置図」という。)は,旧規約の本文と整合しないことからも明らかなとおり,本件原始規約の別紙であったものであり,旧規約なるものは,その本文と本件原始規約の別紙であった別表及び配置図を恣意的に合体したものである。

(イ) 旧規約に代えて新規約を設定することを会議の主たる目的とする本件総会の招集通知には現行規約として旧規約が添付されていたが,旧規約が無効である以上,議案の要領の通知に重大な誤りがあり,招集手続に重大な瑕疵があった。
 したがって,本件総会における決議は無効であり,新規約14条2項も使用料決議も無効である。

イ 本件原始規約7条3項の同意の欠如
 本件原始規約7条3項は,被告らの青色敷地,黄色敷地の専用使用権について変更を加えることが建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という。)31条1項後段の「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす」場合に該当することを確認する意味を有するだけの規定であり,同条に抵触するものではないから,なお有効である。
 したがって,新規約14条2項及び使用料決議は,被告らの同意がない以上,本件原始規約7条3項により,無効である。

ウ 法31条1項後段の承諾の欠如
(ア) タクシー事業を営む被告会社は,セブンスターマンション株式会社から,業務用車両の駐車場として使用していた本社社屋脇の所有土地(これが本件土地1である。)と被告Y1所有の本件土地2とを敷地とする本件マンションの建設計画を持ち掛けられたが,道路運送法に基づく許可を受けなければタクシー事業を営むことができないところ,同法6条の許可基準を具体化した公示(一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシー事業を除く。)の許可申請の審査基準について)において,自動車車庫は,原則として営業所に併設するもので,建築基準法等関係法令に抵触しないものでなければならないと規定され,建築基準法を受けて定められた東京都建築安全条例において,タクシーの営業所の敷地は,幅員12メートル以上の道路に接していなければならないと規定されているため,山手通りに面する本件土地1を駐車場として使用することができなくなれば,条例違反となり,事業許可を取り消されかねないことが判明した。

 そこで,被告会社とセブンスターマンション株式会社は,協議の末,被告会社において,本件マンションの105号室を取得して駐車場として使用するとともに,敷地の一部(これが黄色敷地である。)に無償の専用使用権の設定を受けて駐車場として使用することを取り決めた。

 以上のとおり,被告会社は,タクシー事業を継続できる手当てを尽くしたうえ等価交換に応じたものであり,黄色敷地の永久かつ無償の専用使用権は,被告会社にとって,タクシー事業を営むために必要不可欠な権利であり,専有部分の区分所有権と同等の価値を有し,特別の意味ないし重要性がある。

(イ) 被告Y1は,本件土地2が菅原工業所の業務に必要不可欠であったため,本件マンションの敷地の一部(これが青色敷地である。)を恒久的に使用できることを条件に等価交換に応じたものであり,被告Y1にとって,青色敷地の無償の専用使用権には特別の意味ないし重要性がある。

 また,被告Y1は,マンション分譲業者であるセブンスターマンション株式会社との等価交換契約により専有部分の区分所有権及び青色敷地の無償の専用使用権を取得したものであり,専用使用権の分譲を受けたものでも,マンション分譲業者として専用使用権を自己に留保したものでもないから,区分所有者相互間の団体的規制に服することを容認して専用使用権を取得したものではなかった。加えて,青色敷地を使用しているのは菅原工業所であるところ,同社は,本件マンションの区分所有者ではなく,原告や本件マンションの区分所有者と法的関係を有するものではない。したがって,最高裁平成8年(オ)第258号同10年10月30日第二小法廷判決及び最高裁平成8年(オ)第1362号同10年11月20日第二小法廷判決の各事案は本件とは異なり,被告Y1の承諾なくして青色敷地の専用使用権を有償化することは許されない。

(ウ) 以上によれば,青色敷地及び黄色敷地の専用使用権を有償化することが被告らの権利に「特別の影響」を及ぼすことは明らかであり,法31条1項後段により,被告らの承諾がない限り有償化は効力を生じないところ,被告らが有償化を承諾した事実はないから,新規約14条2項及び使用料決議は無効である。

(原告の主張)
ア 総会招集手続の瑕疵
 旧規約は,管理組合が活動を開始した昭和60年4月7日ころに集会の決議により設定されたもので,有効な規約であった。
 旧規約が無効であったとしても,本件総会の招集手続に重大な瑕疵があったとはいえない。

イ 本件原始規約7条3項の同意の欠如
 本件原始規約が有効に成立した原始規約であったとしても,昭和58年改正後の法(昭和59年1月1日施行)には,「規約の設定,変更又は廃止は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によってする。」(31条1項前段)と定められているところ,同条は強行規定であり,附則9条2項により,同法施行後はその強行規定に抵触する規約は効力を失うものとされているから,青色敷地及び黄色敷地の専用使用権の変更について「専用使用を認められた者の同意」を要求する本件原始規約7条3項は,昭和59年1月1日にその効力を失った。
 したがって,新規約の設定及び使用料決議に被告らの同意は不要である。

ウ 法31条1項後段の承諾の欠如
(ア) 原告は,築30年を超える本件マンションの老朽化に対処するため,各種の修繕・改修工事を計画してその準備を進めているが,工事費用は概算で1億5000万円を要すると見込まれている。ところが,原告の修繕積立金と特別修繕積立金の合計額は,平成19年11月時点で約6551万円,平成21年3月時点で約6900万円にすぎず,上記工事費用の4割強にとどまり,住宅金融公庫からの融資を視野に入れても,借入限度額の関係でなお不足するため,修繕積立金の増額と,これにより組合員の負担が過大になることを回避すべく管理費の減額を検討しているが,管理費減額後は管理費会計が赤字に陥る可能性が高く,その手当てとして青色敷地及び黄色敷地の専用使用権の有償化を検討せざるを得なくなった。

(イ) 原告が近隣の賃貸駐車場を調査したところ,平均相場は月額3万5000円であり,本件マンションの区分所有者が近隣の駐車場を借りて月額3万5000円前後の賃料を負担していることに比べ,被告らは,30年にわたって青色敷地,黄色敷地を無償で使用し,経済的利益を享受してきたもので,区分所有者間に著しい不公平が生じていた。

 タクシー事業を営む被告会社にとって,接道規制の関係で,黄色敷地を駐車場として利用することに特別の意味ないし重要性があるかもしれないが,これが無償でなければならないものではなく,被告Y1においても,この点は同様である。

(ウ) 以上によれば,青色敷地及び黄色敷地の専用使用権を有償化する必要性及び合理性が認められ,かつ,自動車1台当たり1万円という使用料決議により設定された使用料も本件マンションの区分所有関係において社会通念上相当な額であるから,被告らは専用使用権の有償化を受忍すべきであり,有償化は被告らの権利に「特別の影響」を及ぼすものではない。

(エ) よって,新規約14条2項及びこれに基づく使用料決議は有効である。

(2) 未払使用料等
(原告の主張)
ア 平成19年7月1日以降,原告に対し,被告会社は月額3万円,被告Y1は月額6万円の使用料を支払わなければならず,同年11月分までの未払使用料は,被告会社につき15万円,被告Y1につき30万円である。

イ 原告は,原告訴訟代理人に対し,上記未払使用料を徴収するための弁護士費用として10万5000円を支払ったが,これを被告らの未払使用料額で按分すると,被告Y1が7万円,被告会社が3万5000円となる。

(被告らの主張)
 原告の主張は否認ないし争う。


以上:5,947文字

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