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マンション敷地一部専用使用者に対する使用料支払をみとめた裁判例紹介2

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平成28年 7月26日:初稿
○「マンション敷地一部専用使用者に対する使用料支払をみとめた裁判例紹介」の続きで,平成21年8月26日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)の判断部分です。
事案概要及び内容の私なりの説明は別コンテンツで行います。


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第3 判断
1 新規約14条2項及び使用料決議の効力について
(1) 総会招集手続の瑕疵

 証拠(甲1,20ないし23,27ないし29,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,
①旧規約の附則には,昭和60年6月23日から旧規約を適用すると規定されていること,
②平成元年7月30日開催の臨時総会,平成3年1月27日開催の通常総会,平成4年3月22日開催の通常総会,平成5年4月25日開催の臨時総会等において,旧規約45条に基づいて定足数を満たしているかどうかについて判断していること(なお,被告Y1は,平成3年1月27日開催の通常総会において第15期の会計担当理事に,平成5年4月25日開催の臨時総会において第17期の理事にそれぞれ選任されている。),
③平成5年4月25日開催の臨時総会において,組合員が管理費等を3か月以上滞納した場合は,未払金額に年10%の遅延損害金を加算して請求することができる旨の旧規約57条2項を適用する旨の決議をしていること,
④本件訴訟提起後,昭和60年前後に本件マンションの管理を引き受けていた会社から,旧規約を冊子にして区分所有者に配布したとの情報が入り,原告において確認したところ,1003号室の区分所有者であるDが旧規約の冊子を所持していたこと(その20頁ないし22頁が別表及び配置図である。),
⑤平成8年ころに原告が管理費未納者に対してその支払を求めて訴訟を提起したとき,当時の理事長であったEは,Dが所持していたものと同一の冊子の26頁の末尾に「本管理規約はXマンション管理組合の管理規約に相違ありません。」と手書きしたうえ署名押印し,これを弁護士に交付していること
が認められる。

 以上によれば,原告は,昭和60年ころから本件総会が開催された平成19年6月3日まで,22年近くも旧規約に基づいて管理組合の運営及び本件マンションの管理等を行ってきたこと,これに対して区分所有者らが異を唱えることはなかったことが認められ,これを併せ考えると,旧規約が集会の決議により設定されたことを推認することができる。

 なお,被告らが主張するとおり,旧規約の本文とその別紙である別表及び配置図に若干の不整合は認められるが,本件原始規約の別表及び配置図をそのまま旧規約の別紙として使用したことに起因するものであり(弁論の全趣旨),旧規約の効力を左右するものではない。

 以上によれば,旧規約に代えて新規約を設定することを会議の主たる目的とする本件総会の招集通知に現行規約として旧規約が添付されていたことをもって,招集手続に瑕疵があったということはできず,したがって,招集手続に瑕疵があるから新規約14条2項及び使用料決議が無効であるとの被告らの主張は理由がない。

(2) 本件原始規約7条3項の同意の欠如
 本件原始規約が有効に設定された本件マンションの原始規約であったことは認められるが(乙イ1,乙ロ5,証人F,同G),昭和58年改正後の法(昭和59年1月1日施行)31条1項前段には「規約の設定,変更又は廃止は,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によってする。」と定められているところ,同条は強行規定であり,附則9条2項により,同法施行後はその強行規定に抵触する規約は効力を失うものとされているから,青色敷地及び黄色敷地の専用使用権の変更について「専用使用を認められた者の同意」を要求する本件原始規約7条3項は,昭和59年1月1日にその効力を失ったものと解される。

 したがって,新規約の設定及び使用料決議に被告らの同意は不要であり,本件原始規約7条3項の同意がないから新規約14条2項及び使用料決議が無効であるとの被告らの主張は理由がない。

(3) 法31条1項後段の承諾の欠如
ア 法31条1項後段の「規約の設定,変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは,規約の設定,変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し,当該区分所有関係の実態に照らして,その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解され,これまで無償とされてきた専用使用権を有償化することは,一般的に専用使用権者に不利益を及ぼすものであるが,有償化の必要性及び合理性が認められ,かつ,設定された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には,専用使用権者は専用使用権の有償化を受忍すべきであり,そのような有償化は専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものではないというべきであり,また,直接に規約の設定,変更等による場合だけでなく,規約の定めに基づき,集会決議をもって専用使用権を有償化した場合においても,法31条1項後段の規定を類推適用して区分所有者間の利害の調整を図るのが相当である(最高裁平成8年(オ)第258号同10年10月30日第二小法廷判決・民集52巻7号1604頁,最高裁平成8年(オ)第1362号同10年11月20日第二小法廷判決参照)。

 本件においては,新規約14条2項を設定することで被告らの青色敷地及び黄色敷地の専用使用権を有償化したうえ,同項に基づき,集会決議をもって被告らの専用使用料を具体的に定めたものであるから,「特別の影響」の有無は,新規約14条2項及び使用料決議の両者について検討すべきであり,そして,設定された使用料が社会通念上相当なものか否かは,青色敷地及び黄色敷地の専用使用権取得における対価の有無及びその額,専用使用権取得当時の近隣における駐車場の使用料及びその現在までの推移,被告らが青色敷地及び黄色敷地を使用してきた期間,青色敷地及び黄色敷地の維持・管理に要する費用等の区分所有関係における諸事情を総合的に考慮して判断すべきである(前掲平成10年10月30日第二小法廷判決参照)。

イ 証拠(甲13の1ないし3,24,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,
①原告は,築30年を超える本件マンションの老朽化に対処するため,各種の修繕・改修工事を計画してその準備を進めているが,工事費用は概算で1億5000万円を要すると見込まれていること,
②ところが,原告の修繕積立金と特別修繕積立金の合計額は,平成19年10月時点で約6550万円,平成21年3月時点でも約6900万円にすぎず,上記工事費用の4割強にとどまり,住宅金融公庫からの融資を視野に入れても,借入限度額の関係でなお不足すること,
③そのため,原告は,修繕積立金の増額と,これにより組合員の負担が過大になることを回避すべく管理費の減額を検討しているが,平成19年10月時点の管理費会計の剰余金が約500万円であり,管理費を減額すれば管理費会計が赤字に陥る可能性が高く,その手当てとして青色敷地及び黄色敷地の専用使用権の有償化を検討せざるを得なくなり,新規約の設定及び使用料決議に至ったこと
が認められる。

 以上によれば,青色敷地及び黄色敷地の専用使用権の有償化については,その必要性及び合理性が認められるというべきである。

ウ 次に,新規約14条2項に基づく使用料決議により設定された自動車1台分につき1万円という青色敷地及び黄色敷地の使用料が社会通念上相当なものか否かについて検討するに,被告らがセブンスターマンション株式会社との間の等価交換契約により建物専有部分の区分所有権とともに青色敷地,黄色敷地の専用使用権をそれぞれ取得したことは認められるが(乙イ2,3,5,乙ロ5,証人F,同G),専用使用権を取得するための対価的負担がいかほどのものであったかは本件全証拠によっても判然としない。

 これに,本件マンションの自動車を所有する区分所有者らは,本件マンションには青色敷地及び黄色敷地を除けば駐車場がないため,近隣に駐車場を求め,その賃料を負担しているところ,昭和50年代には月額賃料は1万5000円程度であったが,バブル経済時には月額5万円程度まで上昇し,その崩壊により下落し,近時の相場は月額3万5000円程度であること(甲13の1及び2,18),被告らは,昭和52年から青色敷地,黄色敷地をそれぞれ無償で使用してきたものであり,使用期間を30年,近隣における駐車場の賃料のその間の平均値を月額2万円とみれば,被告Y1の享受した経済的利益は自動車6台分で4320万円,被告会社のそれは自動車3台分で2160万円となること,本件マンションの敷地の平成18年度固定資産税・都市計画税の合計額は年額1万3734円であり,青色敷地の面積を79.37m2とすると同所に対応する金額は年額1643円(円未満切捨),黄色敷地の面積を70.96m2とすると同所に対応する金額は年額1469円(円未満切捨)であるが,従前から原告がその全額を納付していること(甲13の7及び8),被告らが青色敷地及び黄色敷地の維持・管理に要する費用を支出したことについて被告らの主張立証がないことを併せ考えると,新規約14条2項に基づく使用料決議により設定された自動車1台分につき1万円という使用料は,近隣における駐車場の近時の賃料相場である月額3万5000円の3割弱にとどまり,社会通念上相当なものであるというべきである。そして,駐車可能な自動車台数は,青色敷地につき6台,黄色敷地につき3台と認められるから(甲19),青色敷地の合計月額6万円,黄色敷地の合計月額3万円も社会通念上相当なものである。

 したがって,被告らは,新規約14条2項及びこれに基づく使用料決議による有償化を受忍すべきであり,新規約14条2項及び使用料決議は,被告らの権利に「特別の影響」を及ぼすものではないから,被告らの承諾がなくとも有効である。

 なお,被告会社は,黄色敷地を駐車場として使用することができなければ,接道規制の関係で,営んでいるタクシー事業の事業許可を取り消されかねず,黄色敷地の永久かつ無償の専用使用権は,被告会社にとって,タクシー事業を営むために必要不可欠な権利であり,専有部分の区分所有権と同等の価値を有し,特別の意味ないし重要性があると主張するが,その主張するところを前提としても,これが無償でなければならないとは認め難い。被告Y1も,本件土地2が家が経営する菅原工業所の業務に必要不可欠であり,被告Y1にとって,青色敷地の無償の専用使用権には特別の意味ないし重要性があると主張するが,これが無償でなければならないと認め難いことは被告会社の場合と同様である。

 さらに,被告Y1は,マンション分譲業者であるセブンスターマンション株式会社との等価交換契約により専有部分の区分所有権及び青色敷地の無償の専用使用権を取得したものであり,専用使用権の分譲を受けたものでも,マンション分譲業者として専用使用権を自己に留保したものでもないから,区分所有者相互間の団体的規制に服することを容認して専用使用権を取得したものではなく,しかも,青色敷地を使用しているのは菅原工業所であるところ,同社は,本件マンションの区分所有者ではなく,原告や本件マンションの区分所有者と法的関係を有するものではなく,したがって,前掲平成10年10月30日第二小法廷判決及び同年11月20日第二小法廷判決の各事案は本件とは異なり,被告Y1の承諾なくして青色敷地の専用使用権を有償化することは許されないと主張するが,採用の限りでない。

(4) 以上のとおりであるから,新規約14条2項及びこれに基づく使用料決議は有効であり,平成19年7月1日以降,原告に対し,被告会社は月額3万円,被告Y1は月額6万円の使用料を支払わなければならない。

2 未払使用料等について
 平成19年7月分から同年11月分までの使用料は,被告Y1が使用する青色敷地が30万円,被告会社が使用する黄色敷地が15万円であるから,被告らは,原告に対し,それぞれこれを支払わなければならない。

 また,新規約61条1項本文及び2項により,被告らは,原告に対し,未払使用料について支払期限(当月分を当月末日までに支払う。)の翌日から支払済みまで年10%の割合による遅延損害金を支払うとともに,原告が専用使用料を徴収するために支出した弁護士費用を違約金として支払わなければならないところ,原告において,原告訴訟代理人に対し,専用使用料を徴収するために10万5000円を支払ったことが認められ(弁論の全趣旨),これを被告らの未払使用料額で按分すると,被告Y1が7万円,被告会社が3万5000円となる。

3 以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるから認容し,主文のとおり判決する(口頭弁論終結日・平成21年6月15日)。
 (裁判官 大島淳司)

〈以下省略〉

以上:5,379文字

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