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無断録音行為違法性否認平成21年3月19日東京地裁判決判断理由全文紹介

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平成27年 1月19日:初稿
○話者の同意を得ない無断録音違法性について質問を受け、関係判例を調べています。無断録音した録音テープの証拠能力については、「無断録音テープ反訳書証拠能力肯定平成4年7月27日東京地裁判決要点紹介」等で何件か紹介しています。しかし、無断録音自体が不法行為となって損害賠償義務を負うかどうかの判例は未調査でした。

○無断録音してもそれが話者或いは第三者に開示することなく録音者自身だけしか知らない場合は紛争になり得ません。問題になるのは何らかの方法で第三者に開示した場合です。良く問題になるのは、裁判での証拠に使った場合です。この場合、無断録音テープの証拠能力の有無の問題になっても、無断録音自体に精神的苦痛を受けたとして不法行為に基づく慰謝料請求をした事案は未調査でした。

○平成21年3月19日東京地裁判決は、ガス会社従業員と顧客の会話を従業員が無断録音し、この行為が不法行為になるかどうか争いになり、「このような録音を事前に相手方の断りもなく行うことは好ましいことではないが,当該内容が私事に渡るものではなく,ガス料金負担についての原告と訴外Bとの交渉の内容を明確に残すために行われ,また第三者に公表することを目的として行われたのでないのであれば,かかる録音が行われたからといって特段原告のプライバシーを侵害したことにはならず,訴外Bが原告に対して不法行為責任を負うことにはならないものと思慮する。」と認定しました。

事案概要は、
1 本件は,原告が,被告に対して,第1に,原告が経営するアパートの一室のガス供給契約(お客様番号1204-○○○-△△△△)に基づき,被告によりガス供給が停止される危険性があるとしてその供給停止の禁止を求め,第2に,下記4つの不法行為に基づき,慰謝料合計40万円の支払いを求めている事案である。
(1) 平成10年から平成13年の間に,もしくは,平成16年11月17日に,被告従業員訴外B(以下,「訴外B」という。)が,被告と同従業員との会話を無断で録音したこと。
(2) 被告の担当者が,原告の経営するアパート201号室(ガスメータお客様番号1204-○○○-◇◇◇◇)及び202号室(ガスメータお客様番号1204-○○○-◎◎◎◎)のガス供給契約の申込者は同アパートの各賃借人であったのに,勝手に原告を申込者として申込書を改ざんしたこと。
(3) 被告が,原告の経営するアパート201号室及び202号室のガスの供給を停止したこと。
(4) 原告の経営するアパートのお客様番号1204-○○○-△△△△のガス供給を停止するおそれがあり,賃借人に迷惑をかけること。

というものです。

以下、判決判断理由全文です。

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第3 当裁判所の判断

(1) 前記前提事実及び証拠(乙1ないし11。枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,下記事実が認められる。
ア 1204-○○○-◎◎◎◎(202号室)は,平成16年4月6日に,訴外D名義でガス使用契約が締結されて開栓され,平成17年8月8日に同人の移転により閉栓されて契約が終了した。そして,同日,原告名義でガス使用契約が締結されて開栓された。
 なお,原告は,同日付の開栓作業票(乙3)の「お客さまサイン」欄に「X」と書き判をした。同ガス栓は,ガス料金の未払分があるとして,平成17年12月5日にガス供給が停止された(同年12月5日までのガス料金の滞納分は合計3409円である。)。


(ア) 1204-○○○-◇◇◇◇(201号室)は,訴外E名義でガス使用契約が締結されて開栓されていたが,平成16年11月14日に同人の移転により閉栓されて契約が終了した。
 同日,原告は,「東京ガスカスタマーサービス目黒営業所」を訪れた。

(イ) 被告においては,ガスの開閉栓,安全点検,検針,収納等の業務を外部の会社に業務委託し,業務を受けた会社は「エネスタ」又は「東京ガスカスタマーサービス」の名称で上記業務を行っている。
 本件においても,被告は,上記業務を訴外丸八商会株式会社(以下,「訴外丸八商会」という。)に委託し,同社ないしはその関連会社である訴外株式会社ライフサポートマルハチ(平成16年1月9日設立。以下,「訴外マルハチ」という。なお,同社は,平成20年4月に訴外丸人商会から分割されて設立された「東京ガスライフバル目黒株式会社」に業務を移転して,清算した。)が,東京都目黒区〈以下省略〉に所在する被告所有の「東京ガス株式会社TG目黒ビル」において,「東京ガスカスタマーサービス目黒営業所」の名称で,上記委託業務を行っていた。
 訴外Bは,平成9年に訴外丸八商会に就職し,その後,訴外マルハチの従業員となり,平成20年4月からは,東京ガスライフバル目黒株式会社の従業員となった。

(ウ) 平成16年11月14日に「東京ガスカスタマーサービス目黒営業所」を訪れた原告は,訴外マルハチの従業員であった訴外Bに対して,1204-○○○-◇◇◇◇のガスメータの開栓を要求した。
 これを受けて,訴外Bは,同年11月17日に201号室を訪問して原告名義でガスメータを開栓した。
 原告は,被告の開栓作業の際,開栓作業票(乙2)に,住所を「タイ国バンコックヤワラストリート222番」と記載し,「お客さまサイン欄」に「X」と書き判をした。
 同ガス栓は,ガス料金の未払分があるとして,平成17年8月8日にガス供給が停止された(同年8月8日までのガス料金の滞納分は合計4万4798円である。)。

(2) 原告は,前掲開栓作業票(乙2,乙3)の「お客様サイン欄」の書き判や手書きの住所部分が偽造であるかの主張をするようである。しかしながら,乙4号証(原告が自らガス供給契約を締結したことを特に争っていない本件ガス栓に関する開栓作業票)と上記乙3号証の「お客さまサイン欄」の書き判は酷似していることや,乙2号証の同「お客さまサイン欄」の書き判は乙4号証の同欄の書き判と似ているとはいえないものの,乙2号証の住所欄に手書きされている書体は,原告が自書した本件原告の各準備書面の書体と酷似していることに照らすと,前掲開栓作業票(乙2,乙3)の「お客様サイン欄」の書き判や手書きの住所部分は原告が自書したものであると認めるのが相当であるので,原告の上記主張は採用できない。
 なお,弁論の全趣旨によれば,本件アパートは,本来は2階建ての居宅を間仕切りして5室程度のアパートにして原告自身も居住しているが,ガスメータは,前掲の3つしかなく,これらのガス栓からガス管をゴムホースで繋いで2階等に延長したり,壁をくりぬいてゴムホースに通すなどして複数の部屋でガスを使用していることがうかがわれるところ,このような場合,被告とのガス供給契約を,各部屋の賃借人ではなく賃貸人自身が締結することはあり得ることであり,かかる事情からしても,1204-○○○-◇◇◇◇及び1204-○○○-◎◎◎◎のガス供給契約を締結したのが原告であった可能性は十分に窺われる。

2 争点1(被告は,本件ガス栓につき,ガス供給を停止することが許されるかどうか)について
(1) 原告の主張は,要するに,① 原告は平成19年12月22日に,本件ガス栓につき,被告との間でガス供給契約を締結したこと,② 原告は,同供給契約申込みに当たり,1204-○○○-◇◇◇◇及び1204-○○○-◎◎◎◎のガス料金の未払分を支払う旨の文言を記載した文書を提出したこと,③ しかしながら,201号室及び202号室のガス使用者は原告ではなく同各部屋の各賃借人であるから,原告にガス料金を支払う義務はないこと,④ 本件ガス栓への被告によるガス供給は本件口頭弁論終結時現在(平成21年2月5日)停止されていないが,今後停止される可能性があるので,被告とのガス供給契約に基づく契約者の権利に基づき,ガス供給停止の禁止を求める,ということにあると思われるので検討する。

(2) 被告の定める一般ガス供給約款36の①及び②には,被告と他のガス使用契約(すでに消滅しているものを含む。)の料金について支払義務発生日の翌日から起算して50日経過してもなお未払いの事実があり,期日を定めて支払を求めたにもかかわらず,なお期日までに支払いがない場合には,ガスの供給を停止することがある旨規定されている(前提事実3(2))。
 そうすると,原告が,上記1項(1)のア,イの未払分を完済しない限り,被告は,本件ガス栓へのガスの供給を停止する権限を有するものと認められるので,かかる支払をしない現段階において,原告が被告に対して,本件ガス栓へのガス供給停止の禁止を求めることはできないといわざるを得ない。

3 争点2(平成10年から平成13年の間もしくは,平成16年11月17日の,訴外Bによる原告と同人との会話の無断録音に関する,被告の不法行為責任の成否)について
 原告は,訴外Bが被告の従業員であることを前提に,同人による原告と同人の会話の無断録音が,原告のプライバシーを侵害し不法行為に当たるとして,民法715条により,被告に対して使用者責任による損害賠償を請求しているものと思われるが,上記1項(1)イに認定のとおり,訴外Bは,被告の従業員とは認められないので,その余については判断するまでもなく,原告の請求には理由がない。

 なお,付言するに,訴外Bが,平成16年11月17日に,同人と原告との会話をICレコーダーに,原告に承諾を得ることなく録音したことは被告の自認するところであり,同人が録音した内容は,ガス料金を原告が支払うかどうかに関する当日のBと原告の遣り取りであることが窺われるところ,このような録音を事前に相手方の断りもなく行うことは好ましいことではないが,当該内容が私事に渡るものではなく,ガス料金負担についての原告と訴外Bとの交渉の内容を明確に残すために行われ,また第三者に公表することを目的として行われたのでないのであれば,かかる録音が行われたからといって特段原告のプライバシーを侵害したことにはならず,訴外Bが原告に対して不法行為責任を負うことにはならないものと思慮する。

4 争点3(被告の担当者が,1204-○○○-◇◇◇◇及び1204-○○○-◎◎◎◎のガス供給契約の申込者は同アパートの各賃借人であったのに,勝手に原告を申込者として申込書を改ざんしたことがあったかどうか。)について
 原告の主張は,平成16年11月17日に締結された1204-○○○-◇◇◇◇及び平成17年8月8日に締結された1204-○○○-◎◎◎◎の各ガス供給契約の各開栓作業票(乙2,3)の原告作成部分を偽造したとの主張をしているものと思われるが,前記1項に認定のとおり,上記各開栓作業票の「お客さまサイン欄」及び住所欄へ記載したのは原告であったと認めるのが相当であるので,原告の主張は採用できない。

5 争点4(被告が,原告の経営するアパート201号室及び202号室のガスの供給を停止したことが不法行為となるかどうか。)について
 原告の主張は,1204-○○○-◇◇◇◇(201号室)については平成17年8月8日に,1204-○○○-◎◎◎◎(202号室)については平成17年12月5日に,被告がガス供給を停止したことが不法行為であると主張しているものと思われるが,上記各お客様番号のガス供給契約につきガス料金の滞納があったことは,前記前提事実(3)及び前記1項の(1)ア,イ記載のとおりであるところ,被告は,一般ガス供給約款36の①号によりガスの供給を停止したと認めることができるので,被告のかかるガス供給停止が不法行為を構成することはない。

6 争点5(被告が,本件ガス栓のガス供給を今後停止する可能性のある状態におくことが,原告に対する不法行為となるかどうか。)について
 本件ガス栓につき,原告は被告との間で,平成19年12月22日にガス供給契約を締結したこと,原告には,1204-○○○-◇◇◇◇及び1204-○○○-◎◎◎◎のガス供給契約につき,ガス料金の未払分があること,被告は,一般ガス供給約款36の①及び②により,上記未払ガス料金のある場合には,本件ガス栓のガス供給を停止することができることは前2項(争点1)に述べたとおりであるので,被告の行為が不法行為を構成することはない。

第4 結論
 以上によれば,その余については判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担については民訴法61条を適用し,よって主文のとおり判決する。
 (裁判官 遠藤真澄)
以上:5,152文字

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