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短期間に2回の不貞行為に慰謝料130万円を認めた地裁判決紹介

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令和 5年12月29日(金):初稿
○原告の夫Cと被告が、短期間に2回不貞行為に及び、且つ、被告の夫Dが原告自宅に押しかけ原告自宅玄関前写真を撮影し、DのCに対する慰謝料請求訴訟の証拠提出するなどして原告に多大な恐怖心を与えたとして、被告に330万円の慰謝料請求をしました。

○これに対し慰謝料として130万円の支払を認めた令和4年6月10日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。原告は夫Cと被告の不貞行為を原因として離婚の合意書を作成していますが、口頭弁論終結時までには離婚をしていません。完全に離婚に至っておらず、且つ、短期間に僅か2回の不貞行為で130万円もの慰謝料を認めたのには驚きました。裁判官の間では、不貞行為慰謝料相場が上がっているのでしょうか。

○本件では、被告の夫Dも原告の夫Cに対し、不貞行為慰謝料請求が出来、実際、訴えを提起しているようです。このような場合、双方とも離婚に至らない場合は、原告が慰謝料を取っても、原告の夫が被告の夫に慰謝料を支払う関係になるため、双方痛み分けで慰謝料請求に至らないのが普通と思っていました。

○被告の夫が、自分の妻に訴えを提起した原告に対し、自宅に押しかけたり、手紙を書いたりして多大な恐怖心を与えたことを被告に対する慰謝料増額事由にしているようですが、被告が夫にけしかけた場合でない限り、その慰謝料請求は被告の夫Dにすべきであり、被告への慰謝料請求の増額事由にするのは筋違いと思いますが、判決も同様の認定でした。

○不貞行為慰謝料請求を認めるのは、先進諸国では日本くらいなものと聞いていますが、2回の不貞行為に130万円も慰謝料支払を命じる裁判例があることには注意すべきです。被告としては、このような事例では、共同不法行為者である原告の夫に対し、負担部分の求償請求をするとの訴訟告知をしておくべきでしょう。

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主   文
1 被告は、原告に対し、145万円及びこれに対する令和3年2月21日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その2を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和3年2月21日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 当事者の主張
1 請求原因

(1)原告とC(以下「C」という。)は、平成11年1月11日に婚姻し、その間には、長女及び二女が生まれた。

(2)被告は、平成29年夏又は秋頃、地域のバドミントンサークルで知り合ったCと親密になり、不貞行為に及んだ。

(3)原告は、Cと20年以上にわたって円満な家庭を築いていたにもかかわらず、被告とCとの不貞行為を原因として原告とCの婚姻関係が悪化するに至り、離婚の危機に瀕した。原告とCは、子のことを考えて一応は同居したまま婚姻関係を継続することとしたが,本件訴訟が終了次第、離婚届を提出する予定であり、原告は、被告とCとの不貞行為により甚大な精神的苦痛を受けた。

しかも、被告の夫であるD(以下「D」という。)は、被告とCの不貞関係が発覚した後、原告の自宅に押しかけて玄関に居座ったり、原告の自宅前を徘徊して玄関前の写真を撮影し、DのCに対する損害賠償請求訴訟において証拠として提出したり、トイレットペーパー等に記載した手紙や、死を連想させるような内容を含むCに対する罵詈雑言を記載した手紙を郵便受けに投函したりするなどの行為に及び、原告に多大な恐怖心を与えているのであって、これらの事情も慰謝料の算定に当たって考慮すべき事情である。したがって、被告の不法行為によって原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては300万円を下らない。
 また、弁護士費用相当額30万円も被告の不法行為による損害として認められるべきである。 

(4)よって、原告は、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料等合計330万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和3年2月21日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2 請求原因に対する認否等
(1)請求原因(1)について
 争わない。

(2)請求原因(2)について
 被告が、平成29年秋頃、Cと不貞行為に及んだことは認める。ただし、その回数は2回にとどまる。

(3)請求原因(3)について
 Dの言動については不知であり、その余は否認ないし争う。
 被告とCの不貞行為が2回にとどまること、原告はCと離婚するに至っていないこと、夫婦関係が破壊されたとまではいえないことからすると、原告の主張する慰謝料は過当請求である。

第3 当裁判所の判断
1 請求原因(1)、(2)について

 証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば、請求原因(1)、(2)の事実を認めることができる。

2 請求原因(3)について
(1)慰謝料 130万円
 弁論の全趣旨によれば、被告とCは、平成29年秋頃に2回程度性交渉をして不貞行為に及び、令和2年9月頃に原告がこれを知ったものと認められるところ、証拠(甲1、6)及び弁論の全趣旨によれば、原告とCは、20年以上にわたって婚姻関係にあり、長女(平成11年8月11日生)及び二女(平成14年1月21日生)と同居して生活していたこと、原告とCは、Cと被告の関係が発覚した後、令和4年2月23日に、本件訴訟終了後に離婚届を提出して協議離婚する旨の協議書を作成したことが認められ、また、本件証拠上、Cと被告の関係が発覚するより前に原告とCとの間の夫婦仲に大きな問題が生じていたことを窺わせる事情は認められない一方、被告がCと不貞行為に及んだ期間は短期間であり、性交渉をした回数も2回程度であること、本件口頭弁論終結時点で原告とCは離婚しておらず、同居して生活していることなど諸般の事情を考慮すると、被告の不貞行為によって原告に生じた精神的苦痛に対する慰謝料は、130万円と認めるのが相当である。

 この点、原告は、被告の夫であるDが原告の自宅を訪問し、あるいは、原告に宛てて手紙等を送付したことによって恐怖心を抱いたため、これらの事情を慰謝料の算定に当たって考慮すべきである旨主張するが、原告の主張する事情は、Cと被告の不貞行為がなされた後のDの言動であり、本件証拠上、被告がDの言動に加担したことを窺わせる事情は認められないのであるから、仮に、Dが原告の自宅を訪問し、あるいは、原告に手紙を送付したとしても、かかる事情を被告の不法行為と相当因果関係ある慰謝料を算定するに当たって斟酌するのは相当ではない。

(2)弁護士費用 15万円
 被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用としての損害は15万円と認めるのが相当である。

(3)合計 145万円

3 結論
 以上の次第で、原告の請求は、不法行為による損害賠償として、145万円及びこれに対する令和3年2月21日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第49部 裁判官 谷池政洋

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