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自営収入約6000万円の夫に婚姻費用月額85万円の支払を命じた家裁審判紹介

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令和 5年10月 5日(木):初稿
○婚姻費用の基準を示す婚姻費用算定表は、裁判所HPの「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」に掲載されており、婚姻費用についての相談を受けた場合はこの表のコピーを渡して説明をして、婚姻費用請求調停等においても、ほぼこの表に従って婚姻費用を決めています。

○この表の支払義務者の年収は2000万円で、これを大幅に超える年収者の婚姻費用については、「算定表上限2000万円超過年収の義務者婚姻費用を算定した判例紹介」では、合計3562万円の年収がある夫に対し、年収75万円の妻への婚姻費用として月額20万円と定めた平成28年9月14日東京高裁決定(判タ1436号113頁)を紹介していました。

○今回は、医業自営年収約6000万円の夫に対し、無収入の妻への婚姻費用として月額85万円の支払を命じた令和3年6月22日大阪家裁審判(判タ1508号117頁)全文を紹介します。婚姻費用分担金はあくまでも生活費であって,従前の贅沢な生活をそのまま保障しようとするものでないことなども併せ考慮すれば,相手方の申立人に対する婚姻費用の分担額は月額85万円と定めるのが相当であるとしています。これを不服とした妻が抗告し、大阪高裁で増額されており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
1 相手方は,申立人に対し,1395万円を支払え。
2 相手方は,申立人に対し,令和3年6月から月額85万円を,当事者の離婚又は別居解消まで,毎月末日限り支払え。
3 手続費用は各自の負担とする。

理   由
第1 事案の概要

 本件は,妻である申立人が別居中の夫である相手方に対し,婚姻費用の支払を求める事案である。

第2 当裁判所の判断
1 本件記録によれば,次のとおり認定することができる。
(1)申立人(妻 昭和55年*月*日生)と相手方(夫 昭和45年*月*日生)は,平成25年1月6日に婚姻し,双方間に,平成26年*月*日に長男Nが,平成27年*月*日に二男Oが,平成28年*月*日に三男Pがそれぞれ出生した。また,申立人は,相手方との婚姻時,相手方とその前妻との間の長女I(平成18年*月*日生)と養子縁組をしている。

(2)申立人と相手方は,令和2年1月8日ころ別居し,申立人は4人の子と申立人とその母が共有する○○所在のマンション(71.49平方メートル)において同居を開始したが,令和2年3月に賃貸住宅に転居している。現在,長男は小学校に通学しており,二男及び三男は幼稚園に通園している。なお,長女には広汎性発達障害及び知的障害があり,支援学校に通学しており,申立人としても,長女の監護養育には,時間をとられている。

(3)申立人は,相手方との同居中は,相手方の経営するクリニックを手伝い830万円の収入を得ていた(専従者給与)が,現在無職であり,収入はない。

(4)相手方は,医師であり,個人で○○クリニックを自営しているほか,給与等の収入がある。令和元年では,自営収入5717万5657円(5894万6203円-242万0546円+65万円),給与収入349万2070円(自営収入に換算すると約256万円),雑収入6万1883円であり,自営収入合計約5979万7540円であった。
 なお,相手方には,申立人との婚姻前に認知した子が2人おり,月額12万2000円の養育費を支払っている。

(5)同居当時の生活は,相手方が申立人の管理に係る相手方名義の口座に約80万円を振り込み,そこから家賃,水道光熱費,食費,交際費,申立人の生命保険料,子どもの習い事・幼稚園・学校・民間のキッズスクール・デイサービスの費用等を支払っていた。スポーツジムの利用料,靴やカバンを含む衣料品代,嗜好品,化粧品・美容院代,おもちゃ代,DVDやコミック・絵本・学用品の購入に要する費用,スポーツ用品代,サプリメント代,自動車2台分のガソリン代を含む維持費,慶事関係費,遊興費,ふるさと納税費などクレジットカードや百貨店のお得意様カードなどを利用して支払っており,その額は,月に40万円ないし60万円であった。

さらに,そのほか,国民年金,健康保険料,小規模企業共済,国民年金基金,住民税,所得税,生命保険料等は相手方名義の口座から引き落とされるか,申立人が,そこから現金を引出して支払っていた。もっとも,クレジットカードや百貨店のお得意様カードの利用については,上記項目中の更に詳細な使途及び上記項目以外の支出については判然としないところ,クリニック関係の交際費(クリニックの従業員に対する贈答品など),相手方の慶事関係費なども含まれていることが認められる。申立人は,同居時に支出していた生活費のうち,相手方に関連する支出は10万円程度あったとしており,この点,相手方においても異論がない。また,申立人は別居後の家計収支表を提出するが,住居費14万1400円を含め月額約92万円である。

2 以上の事情を前提に,相手方が申立人に対し負担すべき婚姻費用について検討する。
(1)婚姻費用分担義務(民法760条)は,婚姻関係にある夫婦間において,自分の生活を保持するのと同程度の生活を互いに保持させる生活保持義務であると解されているところ,本件においては,相手方の収入が申立人の収入よりも高額であることから,相手方には申立人に対する婚姻費用分担義務があるというべきである。

(2)そして,婚姻費用分担額の算定については,一般に,改定標準算定方式(令和元年版)(以下「標準算定方式」という。)によるのが相当であるが,本件において,義務者である相手方は,自営収入約6000万円の高額所得者であり,年収1567万円を上限とする標準算定方式を利用することができないだけでなく,相手方の収入は,標準算定方式の上限額の4倍近くと大幅に上回っていることから,職業費,特別経費及び貯蓄率に関する標準的な資料も見当たらず,本件記録上もその実額が明らかではないから,標準算定方式の考え方を用いて算定することも困難である。

(3)そこで,本件では,申立人と相手方との同居時の生活水準,生活費支出状況及び別居後の申立人の家計収支及び生活状況等,本件記録上に顕れた諸般の事情を踏まえ,婚姻費用の分担額を検討することとする。

(4)
ア 前記1(5)によれば,申立人の管理に係る相手方名義の口座に毎月振り込まれていた80万円程度については,家賃,水道光熱費を含み概ね生活費に充てられているが,クレジットカードや百貨店のお得意様カードなどを利用したものについては,自動車のガソリン代その他維持費,スポーツジム利用料,交際費,慶事関係費及び遊興費などの中に申立人と子らのみの生活であれば,必要ではない支出が相当程度含まれていること(相手方のための費用,相手方の経営するクリニック関係の交際費や高額な外食費等,相手方の納税分も含まれていると解されるふるさと納税など)が窺えること,相手方の生活費も10万円程度は含まれていること,また,前記1(5)のとおり,別居後の申立人の生活費として約92万円が計上されていることなどからすると,申立人と子らの生活に要する費用は,おおよそ90万円程度であるものと推測することができる。

イ ところで,相手方は,現在無職であるが,前記1(3)によれば,同居当時は相手方の経営するクリニックを手伝っていたこと,前記1(2)によれば,現在,長女は支援学校,長男は小学校,二男及び三男は幼稚園に通園している状況であることからすると,相当程度の制約があるにしろ,就労不能とはいえない。

また,申立人は,その母と共有とはいえ,マンションを所有しており,居住は可能であり,あるいは居住しないにしても,場所柄賃貸も可能である。これらのことから申立人に収入がないことを前提として,相手方の婚姻費用の分担額を定めるのは相当でなく,少なくとも50万円ないし60万円程度の稼働能力を有しているものとみるのが相当である。

ウ これらの事情に加え,更に婚姻費用分担金はあくまでも生活費であって,従前の贅沢な生活をそのまま保障しようとするものでないことなども併せ考慮すれば,相手方の申立人に対する婚姻費用の分担額は月額85万円と定めるのが相当である。

 なお、相手方は,申立人の有責性を考慮すべきである旨主張するが,申立人の有責性を認めるに足りる資料はない。
 また,相手方は,婚姻費用について,生活費であって,従前の贅沢な生活をそのまま保障するものではないことを根拠に,標準算定方式の上限を参考に月額60万円を主張する。しかし,高額所得者の場合,毎月の支出が標準算定方式の額を超えるからといって直ちに贅沢な生活ということはできないし,標準算定方式を参考にすることができないことは既に述べたとおりである上,本件では,長女に発達障害等があり,通常よりも監護養育に費用がかかるものと推測されることなどから,相手方の主張は採用することができない。 

(5)したがって,相手方の申立人に対する令和2年1月から令和3年5月までの分担すべき婚姻費用の額は1445万円(85万円×17月)となるところ,相手方は,50万円を支払ったから,未払額は1395万円となり,相手方は,申立人に対し,その分は直ちに,令和3年6月以降は毎月末日限り,月額85万円を離婚又は別居解消まで支払わなければならない。

3 よって,主文のとおり審判する。裁判官 松井千鶴子
以上:3,912文字

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